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仲間を思う気持ち

 完敗だ、何も出来なかった。

 手も足も出なかった。


 まあ、今は文字通り手足がないのだけど。


「プッ」


「何がおかしいのです?」


「ああ、気にしないで、ちょっと親父ギャグを思い付いただけだから」


「……そうですか」

 

 少しでもイラつかせることが出来たならもう私の勝ちね。

 もう、それでいいや。

 

 ただ死ぬ前に聞きたいことが二つある、それを聞いてから死にたい。


「二つ聞きたいことがあるんだけど」


「何でしょうか?」


 勝者の余裕なのか、私の質問にこたえてくれるようだ。


「何であなた殺気がないの?」


「あなたは食事をするとき、殺してやると思って食事をするのですか?」


 そうか、精霊鬼(フィリィア)にとって私はテーブルの上に並べられた料理って訳か。


(ちな)みに、あなたは前菜の前のアミューズと言ったところでしょうか」


 馬鹿にしてくれる、でも彼女は勝者だ、何を言っても許される。


「もう一つの質問は何ですか?」


 次の質問をするように精霊鬼(フィリィア)は私を促す。


「ガリウス様は、ガリウス様はあなたに本当に私を殺せって命令したの?」

 私は人の顔色でその人の考えていることがわかる、この質問で見極めてやる。


「ええ、ガリウス様はあなたとミリアス、マリアを殺せと私に命令しました」

 精霊鬼(フィリィア)はニコニコ笑いながら答える、その表情には何の曇りもない。

 全く読めない、この表情では本当に言ったか可能性しかない。

 それか、相当すごいポーカーフェイスなのかだ。


 まあ、良いわガリウス様にもらった命だし。

 ガリウス様が私を邪魔だというなら、この命お返しします。


「さあ、殺しなさいあなたの勝ちよ」


 私は目を閉じ死を待った。


「なに諦めてんだよマイラ姐!」


「そうですお姉様、戦いはこれからですよ」


 私は戦いを諦め死を覚悟していた。

 だけど、二人はこんな私に諦めるなと励ます。



「馬鹿! 逃げなさい、あなた達の叶う相手じゃないわ」


「バカ言うなよ仲間を見捨てて逃げるなんて出来るわけないだろ!」


「そうですよ、お姉様を見捨てて逃げるくらいなら一緒に戦って死にます」


「二人とも……」


「感動しているところ申し訳ありませんが、あなた達の順番は後ですよ?」


 精霊鬼(フィリィア)が呆れ顔で二人を見る。


「うるせえな、マイラ姐を殺させる訳ないだろ」


「そうよ! お姉様は殺させない」


「そうですか、死に急ぎますか」


 その冷たい言葉に一瞬二人が震えた。

 怒気でも殺気でもない、首筋によく切れるナイフを突きつけられた感覚だ。


「絶体絶命だな、こんな時にメルウスの兄貴がいてくれれば」


「無い物ねだりしてるんじゃないわよ馬鹿ミリアス」


「メルウスですか?」


 黒髪の少女が二人の話に出てくるメルウスに関心をもった。


 やめて言わないで。


「なんだよお前、兄貴の命も狙ってるのか? 兄貴は強いからお前なんか一捻りだぜ」


「そうよ、メルウスならあんたなんか一瞬で倒してくれるわ」


「そうでしょうね、ガリウス様なら私など一瞬で倒されますね」


 彼女には、慈悲の心はないのだろうか。

 死に逝く者に、夢を持たせても良いだろうに。


「……ガリウスなんて今は関係ないでしょ」


 マリアが唐突に出てきたガリウス様の名前に動揺する。


「何をいってるんですか? あなた方が言うメルウスはガリウス様ですよ?」


「「は?」」


「勇者マイラから、なにも聞いていないんですか?」


「嘘でしょ、姉様を殺したガリウスがメルウス?」


 マリアが私を覗き込み尋ねる。


「本当よ、メルウスはガリウス様よ」


 出来れば嘘と言ってあげたい、だけど私は嘘が下手だ。

 彼女にはすぐばれる、嘘を付く事でで彼女を傷付けたくない。


「そんな……。」


 マリアが崩れ落ち、戦闘の意思を失う。


「マリア、立て! 兄貴がガリウスだとして、お前の愛は変わるのか!」


 彼女は黙って首を振る。


「なら今は戦え! 生き残らないと兄貴に会って真実を聞き出すことも出来ないぞ」


 その短いことばで勇気づけられ、マリアは再び立ち上がる。


「そうだよね、折れてなんていられない。今は生きて、生き残ってちゃんと聞くんだから」


「遺言はそれだけですか?」


 精霊鬼(フィリィア)は二人のやり取りを 、まるで茶番劇だとも言いたげな表情で見る。


「やめて二人を殺さないで!」


 私は声を出すしか出来ない。


 弱い、弱い、最弱の勇者。



「ダメです、マスターの命令ですから」


「何でも言うこと聞くから、ガリウス様の為に働くから。だから二人を助けて」


「働く? 偽勇者のミスティアより弱いあなたがですか?」


 私がミスティアより弱い?

 そんな馬鹿なことが。


「ミスティアは単体では私に及びませんが、チームで動いた時の力は私を越えますよ」


 ミスティアがこいつと同等の強さ ?


 嘘だ、私は見た。ステータスは到底私に及ばなかった、あれで私より強いはずがない、ブラフだ。

 私の心を折るための作戦だ。


 騙されない、騙されない!

 

「だからなんだ!マイラ姐は俺の大事な人だ弱いとか強いとか関係ねぇ!」


「そうです、私たちは今は弱いかもしれません。でもこれから強くなるんです邪魔しないで!」


 二人の言葉に私は涙を流した。


「茶番劇は終わりです」


 精霊鬼(フィリィア)が刀の柄に手をかける。


「お願いします、二人は大事な仲間なの、殺さないで」


 そんな私の懇願もむなしく、斬撃が二人を襲う。


「やめてぇ!!」


 だが斬撃は二人を切り裂くことはなかった、守護星霊(プラネット)が守ったからだ。


「おや? これは……。なるほど魔法ですか」


 そう言うと守護星霊(プラネット)が消滅した。

 剣技による剣厚がここまで届く。

 剣で守護星霊(プラネット)を切り裂いたのだ。


 しかし、おかしい。

 精霊には魔法は効かないはずなのになぜ、守護星霊(プラネット)は発動したの?

現に私の魔法は彼女には発動すらしないのに。


 彼女には……。


 そうか、分かったわ。


 彼女への魔法が使えないだけで、私たちへの魔法が使えなくなるわけではないのね。


 そうだ、私は落ちた腕を魔法でつけ治したじゃないか。


 神代魔法 水と光の合成十文字。


 ヴォサ ヴァン イシカ ドゥル アグワ ウルベ ヴォダ ジュル ツカリ ワッカ(水の十文字)

 リヒト ルスト ルチェ ポノス フォス ダウル オベル グアン レイラ ヴィガ(光の十文字)


(同時発音)


 全ての状態異常や傷を完全回復する魔法。


 私は再び立ち上がった。


 二人のお陰で立ち上がることができた。



また寝落ちしてしまいました、すみません。

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インフィニティ・プリズン~双星の牢獄~ シリーズ
『おさじょ』に出てくるアディリアスとウルティアの二人の神たちの物語 『聖剣のネクロマンサー』
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