婚約者
盗賊のアジトは簡易的なキャンプのような物だった。
多分ここは、本拠地ではなく全線基地的な物なのだろう。
男が二人周りを警戒している。
「どうしますか?」
見張りは二人、LVは50代だし強行突破でいいかな?
私は二人の男に向かって石を投げた、一人の男は頭を吹き飛ばされて後ろに倒れた。
頭があったら大ケガする倒れかただ。
良かったね頭がなくて。
もう一人は手加減して鳩尾に当てた。
呻き声をあげてうずくまる。
私はうずくまる男の首を叩く、男はそのまま崩れ落ちた。
この技はロシアの武術システマと言うものらしい。
勇者の記憶にあったので使わせてもらった。
「殺さないんですか」
マリアが一人だけ生かしてる事に疑問を投げ掛ける。
「後で情報を聞くから生かしておいた方がいいでしょ」
「さすがお姉様です、抜かり無しですね」
テントの中に入ると少女が縄で縛られて横たわっていた。
少女の名前はサラスティ12歳ベルナルド国の伯爵令嬢だ、特にイタズラされた形跡はない、あいつらは商品には手を出さない主義らしい。
先ほどミリアスは商品じゃないから好きにして良いと言っていた。
つまり、女性だけを狙っていたと言うことかな?
「あなた達も捕らえられたの?」
私達に気がついた彼女は、年若い私達を盗賊に襲われた仲間だと思ったのだろうか。
「大丈夫です、あなた達には手を出させませんから」
気高い血のなせる技だろうか。
自分が囚われの身だと言うのに人の心配をするほど気高い精神の持ち主だ。
「私達は盗賊退治に来たものです」
「あなた達のような幼い者達がですか?」
「私達はA級冒険者です、盗賊は全て退治しました」
「A級冒険者、すごい……」
禿鷹盗賊団ね、マップを拡大して確認すると世界中に構成員がいる大規模盗賊団だった。
「ところで、お怪我はありませんか?」
「はい、大丈夫です。助けていただいてありがとうございます、私はベルナルド国ナラツ伯爵の子弟でサラスティ・ナラツと申します」
「私はA級冒険者のマイラです」
「私はアキトゥー神国第二王女アキトゥー=クロウォリ=マリアです」
マリアが珍しくちゃんとした礼儀作法に則った挨拶をする。
マリアがアキトゥー神国の姫だと言うことを聞いたサラスティは一瞬驚いたようだが直ぐに気持ちを持ち直し返礼をする。
「後は外にミリアスと言う男の冒険者がいます、後程紹介いたします」
サラスティはコクりと頷くと話を続けた。
「マリア様、助けていただいた上でお願いするのは恐縮なのですが、町まで護衛していただけないでしょうか?」
「このパーティーのリーダーマイラなので私の一存では決めかねるわ」
そう言うとサラスティは私がリーダーだと言うことに驚いているようだが、間違えた非礼を詫びて再度私に護衛の申し出をしてきた。
「了解したわ、あなたの身の安全は私が保証します」
その言葉に安堵したのか彼女はその場にへたりこむ。
最初からこんな所に置いていくつもりはない、最後まで面倒を見るつもりだ。
そういえばこの子は、なぜ襲われたのだろうか?
内通者が居たと言うことは、この子をピンポイントで狙っていたと言うことだろうし、私達が襲われたのは行き掛けの駄賃と言うことだったのだろう。
「サラスティ様は襲われた理由に心当たりはおありですか?」
「……いいえ」(嘘)
嘘判定か、つまり心当たりはあるが言えないと言うことかな。
守る上でねらわれる理由がわからないと守りにくいんだけど。
今はパワーアップのお陰で色々魔法使えるし、勇者系の魔法も進化しているので問題ないかな。
私は衛星の進化魔法である守護星霊円形の守護獣ではなく、天使形の守護神が付く、これは透明にもなれるので護衛にもってこいだ。
MPは100使うがカンストの今となってはたいした問題じゃない。
私は彼女とマリアに守護星霊をつけた、後でミリアスにもつけよう。
サラスティに身支度を整えさせるとテントの外に出た。
外ではミリアスが気絶した盗賊の男の側に立ち、辺りを警戒していた。
「マイラ姐、異常はなかったよ」
ミリアスがこちらを向いたとき、ミリアスの顔が驚きの表情になる。
「サラスティ!」
「ミリアス様、生きて、生きてらしたんですね!」
そう言うと、サラスティはミリアスの胸に飛び込んでいった。
彼女は泣きじゃなくりミリアスにしがみつき離さない。
ミリアスが彼女をなだめ落ち着かせた後、二人の関係を聞くことができた。
どうやらこの子がミリアスの婚約者だったらしい。
こんな可愛い娘が居たのに私に求婚したのか。
私はミリアスを睨むと脂汗を長しそっぽを向いて知らん顔をしている。
後でサラスティにこの話を話して、ご飯3杯ですな。
ふはは。