決着
「メルウス!」
何て速さなの、まるで感知できなかった。
それに腕の付け根まで覆う黒の籠手
と言うか 手鎧。
「マイラ怪我はない?」
「メルウスこそ、その手大丈夫なの?」
「大丈夫だ。それよりも今は魔人だ」
「そうね」
だけど魔人は、腕を切ったメルウスを見ないで私だけを睨み付けてくる。
なんなの、この憎悪。
「おい! 誰に攻撃してるんだ、お前の相手は俺だ」
メルウスの声にハッとして前を見る。
彼は魔人の腕を鷲掴みして、私への攻撃を止めていた。
その腕は先程メルウスが切り落とした腕だった。
まるで真奈美並みの回復力。
それに、既に魔人の攻撃は私では感知出来ないほど早い。
「ジャマダ」
魔人はメルウスを見ようともせず私だけを狙う。
「やらせるわけ無いだろ″黒ノ神剣|神気解放」
その言葉と共に、左腕から黒色の炎が燃え上がる。
「駄目! その力は使っちゃ駄目! お姉様、メルウスを止めて」
マリアがメルウスを止めようと叫ぶ。
私にまでお願いするのだから、かなり不味い力なのだろう。
けど、メルウスと魔人の戦いに私が割り込めば彼の戦いの邪魔になる。
それどころか、ここに居ることさえ彼の邪魔になるだろう。
私は急いでマリア達の側に移動した。
「お姉様! なんでメルウスを助けてくれないんですか!」
マリアはメルウスを助けないで逃げ出した私を責める。
「……あの戦いに入り込めば私じゃ足手まといだし、彼を危険に陥れてしまうわ」
「でも、あの力は黒ノ神剣の力を完全に引き出してしまっているの。死んじゃう、メルウスが死んじゃう」
メルウスが死ぬ?
「どう言うことなの」
「黒ノ神剣は使徒と戦う為の決戦兵器、その力を使うためには命を対価に支払わなければならないんです」
嘘でしょ……。
でも、私の力じゃあの二人の間にはいることはできない。
こんなことなら、もっと自分の力を高めておけば良かった。
メルウスの攻撃は私には見えない。 けれど攻撃を受けた魔人は、その身を削られて力を失っていく。
チャンスがあればスキルを撃つ。
その為に力を溜めておくことくらいしか出来ない。
魔人は手足をもがれて跪づく
その体はじりじりと黒い炎に焼かれて。
どうやらその炎は傷の再生を妨害する効果があるらしい。
再生しては焼かれるを繰り返している。
「マイラ! トドメを刺すんだ」
え、なんでここに来て私なの?
『宝玉は我が剣を突き刺さないと作れんぞ』
『ケンケン、居たのね!』
『ああ、すまん我が半身を呼びにいってたのでサーポート出来なかった。だが呼ぶ必要はなかったようだな』
「早くトドメを!」
私は頷き瀕死の魔人の側に寄り、剣を心臓に突き立てた。剣が魔人の瘴気を吸い上げ中央の空洞に宝珠を作り出す。
それと共に魔人は塵となって消滅した。
「メルウス! 早く黒ノ神剣を外して!」
マリアがメルウスに駆け寄り、黒ノ神剣を必死に外そうとする。
しかし、どう見てもあれは体と一体化している。
「やだぁ、やだぁメルウスが死んじゃう!」
メルウスはマリアの頭を優しく撫でる。
マリアはメルウス腕を外そうと結合部を引っ掻く。
爪が剥がれかけてる。
これは切り落とすしかないか。
「マリアやめなさい私がやるわ。メルウス、切り落とすから腕をあげなさい!」
私はメルウスの腕を切り落とすために剣を上段に構える。
「いやいや、待って待って。死なないから大丈夫だから!」
「メルウスは知らないだけなの! その力は命を奪うのよ、だから腕を切って外すしかないの」
マリアが涙を浮かべ、メルウスに抱きつく。
「メルウス! 早く腕を出しなさい!」
私は彼に腕を出すよう促す、だが彼はそれを拒絶する。
「火炎剣で焼ききれば血は出ないわ、だから腕を出しなさい」
「くくく、其奴なら大丈夫じゃ」
その声の主を探すと、私の後ろにニヤニヤ笑うシンヤがいた。
「どう言うことですか」
マリアがシンヤに事情を聞こうとする。
「貴様に発言しても良いとは言っておらんのじゃが?」
その言葉にマリアは怯えるが気丈にもシンヤから目をそらさない。
「シンヤ教えてよ」
私はシンヤの関心がマリアに向かないように少し不遜な態度でお願いした。
まあ、作戦は成功し矛先がこちらに向いたのは良いのだが。
「お主には失望しておるのよ。まさかここまで弱いとはのう」
返す言葉もない、時間稼ぎをしろと言われたのに、それすら出来なかった。
「ふん、まあ良いわ。其奴はスペシャルと言うことじゃ」
「それはどう言う……」
「本人に聞けばよかろうが」
「本当に大丈夫なんだよね?」
「くどいわ。後、メルウス! 主は後程一人で神の間に来るのじゃ」
そう言うとテレポートをして消えてしまった。
神であるシンヤが言うのだ、信じるしかないか。
「メルウス、本当に大丈夫なの?」
マリアがメルウスに抱きつながら彼の身を心配している。
まるで恋人のそれである。
「ああ、だいじょうぶ……。でも、少し血を流しすぎたみたいだ…」
そう言い残しメルウスは倒れた。