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拗らせたマイラ


「ガリウス様……」


 ガリウス様のステータスは名前もLVも表示されない状態になっていた、つまりメルウスと同じ状態。


 なぜなのか理由は分からない。だけど、そんな状態でも私を助けに来てくれた。

 また、ガリウス様に助けられた。

 だけど去り行く際、体から血煙を噴出した。

 この地面に降り注がれた赤い物は間違いなく血だ、鉄錆の臭いを漂わせている。

 血、血、ガリウス様の血。


 ゴクリ……。


 私はヴァンパイア、血に飢えし者。

 吸血衝動に逆らえない悲しき化け物。


 これを舐めたら私は人間として終わる。


 悪魔マイラ「今なら誰も見ていない、舐めちゃえよ」


 天使マイラ「神は見ておられますが、ガリウス様の血なら仕方ありませんねどうぞお舐めください」


 満場一致です、いただきます。


 ペロペロ。


 グッドテイスト! デリシャス! グラッチェ、グラッチェ!! 本当にありがとうございます。


『変態の極みだな』


『ケンケン生きてたんだ、なにも返事しなかったから死んでるのかと思ってたよ』


『すまない』


「後で詳しい話聞かせなさい』


『今じゃダメなのか』


『見て分からない? 忙しいのよ?』


 ペロペロ。


『ガリウス様とやらがそれ見たらどう思うだろうな」


 ペロッ


 くっ、ケンケンのやつ正論で来た。

 気持ち悪いよね、気味悪いよね。

 分かったわよ、ハイハイ分かりました。

 焼却しますよ。

 燃やせば良いんでしょ、燃やせば!


「オメガフレイム」


 私は最大級の魔法で血が飛び散った一帯を焼いた。

 地面は溶岩と化しボコボコと音をたてる。


 虫だろうと、微生物だろうとガリウス様の血は一滴たりともあげません!


 しかしあれほどの血を流して、ガリウス様は大丈夫なのだろうか。

 ブザー音が二回の後、血煙を撒き散らした。あれはなにかが限界を迎えたとかじゃないの?


 心配だ……。


 でも心配いてても、なにも始まらない。


 まずは、ここがどこか調べないと。

 私はマップを広域に変更した。


 ここはグランヘイム王国よりも、遥かに北にあるアキトゥー神国だ。


 「ここは?」


 「わたしたちどうして」


 父様と母様が目を覚ました。

 私は再び二人を抱きしめた。


 二人に、ガリウス様に助けられたことを増し増しで話しておいた。

 これで両親もガリウス様押しになることでしょう。

 そんな事しなくても両親もガリウス様押しなのだけど。


「マイラさん……」

 続いてミリアスも目を覚ました。


「私に言うことありますよね?」


「ごめんなさい」


「分かりました許します」


「許してくれるんですか?」


「あなたも騙された被害者のようですしね」

 それにミリアスを守れとガリウス様に言われたし許すしか無いじゃない。


 取り敢えず、近くの村にでもと言うか、近くにあるの王都じゃん。

 私達は不法入国だから、この国に事情説明して入国手続きしないといけないわね。

メルウスが起きるのを待ってから出発ね。だけどメルウスが起きるのを待っていたのだけど1時間経っても起きる気配がない。

 脈はあるし呼吸もしているから死んではいない。

 ミスティアに失神させられたときに何か障害が起きるような事があったの?


 でも、ガリウス様が彼を治さなかった理由はなぜだろう。

 ガリウス様には鑑定がある、と言うか鑑定を取得した瞬間を見た。あの時私は助けてくれたガリウス様をずっと見ていた。

 もちろんステータスを見ながら、子供ができたらこのステータスやアビリティ引き継ぐのかなとか。

 子供は3人で、はじめは女の子で次は男の子末っ子も男の子、つまり一姫二太郎三茄子。いえ、三茄子は冗談です、彼との子供が茄子のはずがありません、愛情を注いで育てます。

 まあ、末っ子が男の子なのは女の子だと彼がメロメロになって私そっちのけで娘を可愛がるなんて耐えられないです、私は彼といつまでもラブラブでいたいのです。


 でゅふふ。


 いけないヨダレが。


 と言うか、今はメルウスの事です。

 私の魔法は効かない、回復させる事ができない。

 自然に回復して起きるのを待つしかない。


「父様、母様ここはアキトゥー神国でこれから王都に向かいます」


 二人は今いる場所に驚いていたが、自分達に起きた事を理解しているのだろう、すぐに了承してくれた。

 メルウスは私が背負い連れていくことにする。私より身長も体重もあるけど特に重いと言うことはない。


 まさかと思うけど植物状態になってる何てこと無いよね。

 私はガリウス様に会いたい、自称黒の戦士が言うにはガリウス様に会いたければ魔王を倒せと言う事だし。

 だけど、その為にメルウスを置いていくなんて出来ない。

 メルウスは魔王を倒すとしても、私について来てくれると言ってくれた大切な仲間だ。



 半日ほど歩くと和洋折衷的な王城が見えてきた。

 何気にサイバーパンクかなと思ったけど王城の関所につくと守衛は合気道の道着のようなものを来ていた。


「次の方どうぞ、本日はどのようなご用件で?」


「B級冒険者のマイラと言います、こちらは両親とグランヘイム第三王子ミリアス殿下です、実はグランヘイム王国のクーデターから逃げてきたのですが、不法入国になってしまいまして」


「なんと! グランヘイムの王子殿下! 暫し待たれよ」


 守衛は魔導通信機と言う電話のようなもので、どこかに電話をかけている。

 電話を終えると私達に待合室で待つように指示をしてきた。

 お茶や茶菓子なども出してくれて人心地(ひとごこち)つくことができた。


「半日前からグランヘイムと音信不通になりどうしたことかと世界中で騒いでおりましてな」


 どうやら、グランヘイムの異変は世界中の知るところらしい。

 勇者の排出国なだけに非常事態に備えて世界中に連絡するシステムがあったのかもしれない。


「そちらの方は」

 守衛は横たわるメルウスを指差し説明を求める。


「仲間なのですが、クーデターのに巻き込まれて目が覚めません」


「それはそれは大変でしたな」

 そう言ってお茶のおかわりを持ってくる。

 このくには何気に日本ぽい雰囲気を醸し出していて懐かしい。

 人も人情味溢れていそうだ。


 小一時間ほど待つと、黒塗りの馬車が来て王城へと案内された。


 両親とメルウスは宿屋で待つことになった。

 メルウスは守衛が担いで宿屋までつれて行ってくれることになった。やっぱりここの人たちは良い人が多いのだなと思った、王城につくまではね。



「ガリウスと言う大悪党がそんなことするわけ無い!」


 謁見の間で、そう叫び声をあげたのはアキトゥー神国第二王女アキトゥー=クロウォリ=マリアである。


 もうこの一言で、この国が嫌いになったわ。

「先程も言いましたが、わたしたちを助けてくれたのはガリウス様です」


「あいつは姉様を殺した大悪党よ!」


「それ以上、私の命の恩人を侮辱するのは止めていただきたいのですが」


「やめないと言ったらどうするの?」


「殺しますよ」


 私の発言に回りの武官や文官達がどよめく。

 それはそうだろう、王の御前なのだから完全に不敬である。

 だけど知ったことか、ガリウス様を侮辱するものには死あるのみ!

 と言うか、この王様止める気がありませんよね。


「良いわよ、かかってきなさいよ」


「井の中の蛙大海を知らずと言うことを教えてあげますよ」


「なによそれ」


「自分の実力を過大評価してる愚か者の事です」


「なっ! 許さない殺す!」

 マリアは顔を真っ赤にし抜刀する。


「許さないのはこっちよ糞女」

 とは言え遅い、まだ剣を抜いてる途中だ、あくびが出そう。

 正直、剣を抜くほどの相手でもない。

 だけど、ガリウス様を侮辱した罪は抗ってもらおう。


 と考えているとマリアはやっと魔法剣を発動させる。

 しかも、ただの風刃剣(ブラストソード)だ。


 私はそれを風系魔法塵旋風(ダストデビル)で相殺しなおかつ、マリアを吹き飛ばした。

 風系の初級なんだけど実力差がありすぎるため魔法剣をも凌駕する。


「あなた口だけなのね」

 わざとからかい口調で挑発する。


 そう言われ、怒りに震えるマリアは腰の短刀を抜き二刀流になる。

 打刀(うちかたな)を逆手にもち短刀を横に構える。

 短刀には火炎剣(フレイムソード)をかけ、逆手に持った打刀(うちかたな)は見えない。

 つまり本命は打刀うちかたなの方ね。


 私を殺す気満々だ。

 よし、ぼこぼこの刑に決定。

 私は私に殺意を向けるもには許さない。何よりガリウス様を侮辱したにはもっと許せない。


 私はマリアの懐に飛び込むと刀を叩き落としアゴにパンチをいれる。

 パスンと乾いた音がした。この感触はアゴが砕けたものだ。

 倒れたところを馬乗りになり顔をタコ殴りにする。

 マリアは腕で防ごうとするがおかまいなしに殴る、それでマリアの腕は複雑骨折したようにぐちゃぐちゃになった。


 当然顔もぐちゃぐちゃだ。

 ああ、しまった回復魔法を手に纏わせるの忘れてた。


 なんか凄いプシュープシューみたいな呼吸音なんですけど、やり過ぎた。

 回復魔法をかけるのを忘れるくらい、イラついたのはしょうがないよね。

 取り敢えず治してあげるか、嫌だけど。

 最上級回復魔法じゃなくて、初級回復魔法でじわじわ治してあげよう。

 その方が苦痛も味わえるしね。


 ガリウス様を侮辱したことを後悔しながら苦しみなさい永遠(とこしえ)に。


 ふははは!


 悪役だ、完全に悪役の思考だ。


 私と真奈美の間にも、この位の差があったのだろうか。

 思い出すと苛立(いらただ)しい。

 完全に圧倒されていた、勝てる気がしなかった。

 こんなんじゃガリウス様の隣に立てない。

 私はもっと強くならなければ、王族相手だからと言って自分の思いを曲げるなら、もうガリウス様に横に立つ資格など無い!


 でも私って、こんなに狂暴だったっけ?

 ちょっと前まで魔物を殺すのさえ戸惑っていたのに。

 冒険者稼業で血に慣れたと言っても限度を超えすぎてる。

 ガリウス様の悪口を言った冒険者に回復魔法を使う余裕くらいはあったのに。


 今回はそれが全くなかった。


『ケンケン説明しなさい』


『勇者の記憶の影響だろうな、皆最初の勇者の記憶に引っ張られるからな』


『最初の勇者はそんなに狂暴なの?』


『我の半身で(あるじ)も会ったことあるだろ神のシンヤだ』


『私かなり暴言言ったけどキレなかったわよ』


『最初の頃のあいつは感情が欠落していてな、それはもう手がつけられなかった、全てアディリアス様のお陰だ』

 狂暴なのは、あのシンヤのせいだったのか。

 完全に引っ張られていたわけだ。


『そうとも言えないけどな、ガリウスのことで怒りに火がついておったぞ』


『ですよね~』


 ケンケンと話をしてたら少し落ち着けたのでマリアを完全回復してあげた。

 彼女はガクガク震えて腰砕けになりながら王にすがり付く。

 お漏らしをしながら……。


 当然、回りは兵士に囲まれている。

 まあ、正直怖くはないけどね。


「私の命の恩人を侮辱したあげく、正々堂々戦った私を取り囲むのですか!」

 そう言うと王は兵士達に武器を下げさせた。


「B級冒険者マイラよ、少し我の話を聞いてほしい」


 そう言うと神話の話を話し出した。

 なるほど、これが真奈美が言ってた嘘の神話か。


「この話を聞いて思うところはあるか?」


「いいえ、特にありませんが」


「そうか、ならばよい。先程は娘が失礼した、許せ」

 まあ、王様にしては謝るだけなしな部類なのかな?


「そなたの話だと、グランヘイム王国を乗っ取ったのは使徒という事で間違いないのだな」


「はい」


「わかった、では神国として冒険者マイラに依頼を出したい」


「何でしょうか」


「死んだクロイツが持っていた黒ノ神剣(クロノデバイス)を探しだして欲しいのだ」


「宛もないものを探す余裕は、私にはありませんのでお断りします」

 さすがに無理難題の場合B級でも断れることができる。


「宛はある、クロイツはそなたを助けたガリウスと言う男と行動を共にしており、グランヘイム王国の報告ではクロイツを殺したのはガリウスと言うことなのだ」


「それは知っています、その件と黒ノ神剣(クロノデバイス)を探すことに何か関係あるんですか」

 こう言う時はできるだけ相手から話させた方がいい。自分から話を持ち出せば墓穴を掘るだけだ。


黒ノ神剣(クロノデバイス)はガリウスが持っている可能性がある。持っていなくても行方を知っている可能性もあろう」


「たしかに」


「そなたがガリウスから黒ノ神剣(クロノデバイス)を取り返した暁には、ガリウスの罪は冤罪だと認めて指名手配を取り消そう、更に探索に関わる費用は全てアキトゥー神国負担でよい、成功報酬として1億G(ゴルス)出そう」


「分かりました引き受けましょう」


 しまった引き受けてしまった。

 商人の娘の血が騒いでしまった。

 いや、だって、1億G(ゴルス)ですよ?

 牛丼大盛200万杯以上食べられますよ?


「それと頼みがある」


「何でしょうか?」


「娘をそなたのパーティーで鍛え直して欲しいのだ、もちろん教育料と護衛料も払おう」


「まずは値段を提示していただけますか」


「うむ、一ヶ月300万G(ゴルス)でどうだろうか」


「400万G(ゴルス)ですね、それと条件があります、姫として扱わないことを了承してください」


「分かった、ただの平民と同じ扱いでよい。それでは今日からよろしく頼む」


「そんな……」


 マリアが涙目になって私を見る。

 お金の力には逆らえないのよ、頑張って強くなろ?


『王族相手だからと言って自分の思いを曲げないとはいったい……』


『マゲテナイヨ、お金大事! ガリウス様とイチャイチャして過ごすにはお金必要、これ絶対!』


 それにパーティーメンバーも欲しいと思ってたところだしね、ある意味ちょうどよかった。


 魔王はレベルカンストで使徒より強い。ステータスも呆れるほど高かった。

 つまり、魔王に勝てれば真奈美にも勝てる可能性も出てくる。

 前哨戦にはちょうど良い。

 とは言え、私一人で魔王城に向かうのは自殺行為だ、仲間がほしい。


 でも魔王討伐は苛烈を極めるだろう、つまり命懸けだ。本人の意見も尊重してあげないとさすがに可哀想かな。

 まあ、無理矢理魔王討伐に連れていって、地獄見させても良いんだけどね。

今後は仲間なんだし握手でもと思い、手を出したら泡を吹いて気絶してしまった。


 なんでやねん……。


 ミリアス王子については亡命国家として扱ってくれると言ったが、国家再興の為に強くなりたいので私についてくると言う。

 本当にそうなら良いけど。

 私を見ながらにこにこする目は獲物を狙うそれである。


 『ではこれを持っていきなさい」


 王はペンダントを側仕えを通し私に渡す

すように言いつける。

 それはこの国の国旗の中心にある、黒騎士を型どったものだった。


「それを見せれば、どこの国でも協力を得られる」

 こういうアイテムあると色々便利よね。


「ありがとうございます」


「それではくれぐれも頼んだぞ」

 私は倒れたマリアを担いで両親とメルウスが待つ宿へと向かった。


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インフィニティ・プリズン~双星の牢獄~ シリーズ
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