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黒の戦士

 その日は色々あったので、訓練は無しにした。

 宿屋の食堂で、私たちは今後の方針を話し合った。


 まず大前提として、私はガリウス様が好きでガリウス様中心に動く事を了承してもらった。


 次に、メルウスが私に恋愛感情があるか聞いてみた。

「友達としても人としても好きだけど、俺も好きな人がいるんだ、ごめん」

 なるほど、彼も私と同じなのか。

 でも、ごめんて言われると私がフラれたみたいじゃない。

 なんか納得いかない。


「べ、別にメルウスが私の事を好きなんて思ってないんだからね!」


 ツンデレである。

 見事なツンデレである。


「マイラはどっちかって言うとツンドラだよね(意味はわかっていない)」


 テンプレである。

 私がやらせているのである。


 (すさ)んだ冒険者生活に、ウィットにとんだ軽快なギャグは必須なのよ。


 その後にハンドシェイクのコンボを決めてハイタッチ。


「「ウェーイ」」


 これをやると暗いメルウスもにこにこ笑ってくれる。


「それと、明日にでも城塞都市を出ようと思います」


「急だね、理由聞かせてもらってもいいかい?」

「理由は単純、ガリウス様に一刻も早く会いたいんです」


「ブレないね」

 当然ですガリウス様、命ですから!

『いやブレてたろ……』

『ぶれてないよ、情緒不安定だっただけだし』


「そう言うことなので、明日は一人でゴブリンを3匹狩ってもらいます」

「分かった、頑張るよ」


「じゃあ、装備点検や馬車の手配も含めて、一度ギルドに行きましょう」


 馬車は乗り合い馬車もあるのだけど、臨機応変さにかけるので、B級以上に有償貸与される馬車がる、ただしこれは予約が必要で2、3日またされる場合がある。


 ギルドへつくと受付の女性がやって来た。

「マイラ様、指名依頼が入っているのですが」


「どんな依頼ですか?」

「北の廃墟を再利用するために周辺の魔物を退治してほしいと言う依頼で、前金で30G、ただし明日討伐してほしいそうです」

 北の遺跡か、あそこはそんなに魔物はいないしちょうど良いかな。


 とは言えB級は指名以来を断れない。

 拒否できるのはS級だけだ。


 なにより、30Gを前金でもらえるのはうれしい。


 通常は指名でも支払いは月末なのだけど。

 急ぎ旅の私達には、即金でもらえるなら断る理由などない。


「わかりましたお受けします」


 私は30Gを受け取り、馬車の予約をした。

 馬車は明日の午後からなら貸せるそうだ。

 馬自体は空きがあるのだが、インターバル中だそうだ。


 依頼や馬車の手続きを終えた私たちは、消耗品や携帯食料も買い込んで宿に戻ることにした。


 宿で荷物を無限アイテムボックスに入れたらメルウスが驚いていた。

 そう言えば、彼にこれを見せるのは初めてだった。


 色々油断してるなと思う。

 でも、彼なら問題ないだろうけど。


 その晩私達は早めに就寝した。


「ねえ、メルウス起きてる?」

「起きてるよ」

「何で私についてきたいの?」

「君が心配だから」

「私ね、子供の頃から人の顔色を見て 生きてきたから、その人が嘘ついているか分かるんだよ」

 もちろん、前世の話だけど。

 私は両親に愛されていなかった。

 肉体的虐待はなかったが、いわゆる放置子で両親は互いに感心がなく仮面夫婦だった、高校入学と共にお婆ちゃんの家に居候して学校に通っていた。

 アルバイトをして給金の3分の2を家に入れていた、もちろん実家の方にだ。

 おばあちゃんに、なにも恩返しできなかったのが悔やまれる。

 アルバイトの履歴書に趣味人間観察とかいたのは今からでも消したい黒歴史だ。

 そうやって生きてきたせいか、私は人の顔色をうかがうのが得意なのだ。

「本当に心配だからだよ」

「分かった、今はそれを信じるけど、話せるようになったら話してください」

 私が心配だからと言うのも嘘では無いのだけれど、なにかを隠しているのは確かだ。

「ごめん」

 謝ったらダメじゃない。

 まあ、こういうところがメルウスなんだろうけど。

 私達は、その後の言葉が続かなかった。



 次の日の朝、私達は早起きして北の遺跡に向かった。


「メルウスのノルマはゴブリン3匹ね」

「わかった」

「無理しちゃダメだからね」

「うん、無理はしないよ」


 北の遺跡をマップで見るとゴブリン数匹いた。


『なあ、(あるじ)よ』

『なにケンケン?』

『その程度の討伐で30Gっておかしくないか?』

『たぶん、B級の冒険者が定期狩りした後なんじゃない? ラッキーね』

『だと良いのだが』

『ケンケンは考えすぎよ』


 2時間ほど歩くと遺跡の入り口についた。

「ゴブリンを連れてくるから、戦闘準備して待ってね」

「わかった」


 私はゴブリンに発見されるように姿を表し、襲ってきたゴブリンをメルウスの前に連れてきた。


 メルウスはゴブリンの攻撃を受け流し、そのまま胴を薙いだ。


 だけど、その攻撃は威力がないために皮膚を切り裂いただけだった。

 そのまま返す剣で背中を切りつける。


 これも弱い。

 だけど、メルウスは流れる動きでゴブリンを切り裂きまくる。


 ゴブリンの攻撃は当たらない、剣とバックラーを使い攻撃を流す。


 正直、これなら問題ないかな。


 メルウスが3匹を倒した時点で、私は残りのゴブリンを殲滅した。


「メルウスやるじゃない」

「ありがとう、これならやっていけそうだね」


 二人でハンドシェイクをしてハイタッチをした。


「ふふふ、仲がよろしいですね」


 そこには金髪碧眼の女性とミリアス王子、勇者ミスティアがいた。


 この人たち、どこからあらわれたの?

 マップにはなにも反応はなかった。

 突然現れた。


 神の祝福(プライム)かしら?


 それに王子の職業ステータスがおかしい。

 それに、このブカロティと言う女……。


「それでですね、あなたマイラさんと言いましたかね、あなた王子と結婚しなさい」


「お断りします」


「なぜですか? 王族の一人になれるのですよ」


「王族ですか? 女性同士は結婚出来ないですよ」


「女性? ミリアスは男性ですよ?」


「ミリアスはもう王族じゃないですよね、何ですか大和神国女王って?」


「はははは、そうですね神聖体なら神の眼(プロビデンス)を発現していてもおかしくないですね」


(あるじ)こいつ(あるじ)の正体に気がついてるぞ』

『なんで、この女何者なの』


「姉様、マイラは何をいってるんですか?」


 ミリアスがブカロティのスカートの裾を引っ張る。

「お離しなさい!」

 そう言うと、ミリアスのほほを叩く

「ね、姉様……」

 倒れこんだミリアスは、驚愕の表情を浮かべブカロティを見る。

「あなたの利用価値はもうありません」

「利用価値って何なんですか!」


「今世はあなたを王に擁立して、私が裏から操ろうと思ったのですが」


「なにを言って」


「新しい神意(カムイ)が予想以上でしたので私が王になることにしました」


「王って」


「あなたを王に擁立するのは大変だったんですよ、貴族の連中を取り込むのにミスティアを抱かせたりしてね、勇者を抱けるとなったら貴族ども大喜びで私につきましたよ」


「あなた最低ね」

 ミスティアはガリウス様の想い人だけど。

 さすがに許せないかな。


「最低? なにも知らない小娘が!」

 般若の形相を浮かべ私をにらむ。


「まあ、良いですわ」

 そう言うとブカロティは指をならす。

 指の音に呼応するように地面に10個の魔方陣が現れ魔物が召喚される。


B(ブッティ)・オーガロード ? 」


 なにこの魔物は、新種?

 ステータスも通常のB(ブッティ)・オーガの5倍以上ある、それが10匹も。


 これは本気でいかないとダメね。


 星王剣(アスタリスク)牡牛座(タロス)

 七つの光の分身が生まれ敵を攻撃する。

 この分身体による攻撃は全てが星王剣(アスタリスク)で身体能力は私と同等、光の体は触れただけでもダメージになる。


 私は流星群(メテオストーム)B(ブッティ)・オーガロードの頭上に亜光速の隕石を落とすした。


 流星群(メテオストーム)で、すでに瀕死になる、その瀕死のB(ブッティ)・オーガロード に分身体が止めを指す。

「大したことなかったわね」


「さすが神聖体と言ったところですね」

 ブカロティは余裕の表情でにやけている。


「姉様やめてください、なぜマイラを攻撃するんですか?」

 

「うるさい小僧ですね」

 指を弾くと、衝撃波が飛びミリアスを弾き飛ばす。


「それで、チェックメイトだと思うんだけど?」

 ミスティアでは私に勝てないしブカロティもレベルは15え、LV500。


 七体の分身体が霧散し、体からマナが消えていく。


『まずいぞ範囲型のマナ遮断だ、でかいぞ』

 そのマナ遮断はグランヘイム王国全体を飲み込んだ。

 ミリアスが倒れた、この世界の住人じゃ息も吸えないだろう。

『あの女も魔王なの?』

『ちがう、奴は使徒だ』

『使徒? なんでよ使徒と勇者は不文律のはずでしょ』

『まあ、不文律は不文律だが、不文律なだけに相手の気分次第だ』


 その話が終わらないうちにブカロティ変化が起きた。

 金色の髪が黒に変わり、体が小さくなる。

 というか、日本人になっていく。

「初めまして勇者マイラ、私は磯波(いそなみ) 真奈美(まなみ)と申します、気軽にミミってよんでね」


「なんで使徒が勇者と対峙するのよ?」


「まあ、ここに来て数年のあなたじゃ分かりもしませんか」

 そう言って空にある二つの月を指差す。

「あれなんだと思います?」

「月でしょ? それがなに?」

「半分は当たりです、大きい方は地球ですよ」

「あれが地球? 青くない、不毛の地じゃない、まだ私がこの世界に来て13年よ、それがなんで」


「あなたには13年でも、実際は1万年以上経過してるのですよ」


「どういうことよ」

「勇者召喚のためのゲートは1万年前に固定されて、その時代だけから勇者は来ます」



「ゲートは1万年前に空いていて、現在地球人類が滅んでいる。つまり、ゲートを使って滅ぶ前の人類を救済できるのです」


 そんな事が出来るのだろうか。


「私がしようとしていることは人類救済計画なのです、あなたも日本人なら手伝いなさい」


「ちなみに、あなたが来た時代から数年で滅亡しますよ」


「なんで滅亡したの」


「隕石の大量落下による滅亡です、兆候はあったでしょう、小さい隕石が落下したり未確認飛行物体が見えたりして」


 そう言えば死ぬ前にロシアに隕石が落ちたり、千葉県の銚子あたりで未確認飛行物体が飛んでるとか言う話を聞いた。


 あれから数年で人類が滅亡した。


 滅亡前に人類を救う。


 でも、だからと言って。


 この世界の人間を排除して良い理由にはならない。


「私はこの世界で生まれ変わった、守りたい両親もいるだからあなたの誘いを受ける訳にはいかない」


「ああ、あなたの両親ですよね、それならあなたが今殺したじゃないですか」


「そこの合成魔物、B(ブッティ)・オーガロードの二体はあなたの両親ですよ」


 魔物の死体の方を振り向くと、人間の死体が10体分、転がっていた。


 嘘だ!嘘だ!嘘だ!


「マナ遮断の影響下だと魔物部分は消失するようですね」


「父様! 母様!」


 私は二人に抱き締める、見た目に怪我はない、だけど息はしてないし脈もない。


「感謝して欲しいですね、これでこの世界の人間に未練は無いでしょう?」



「あなたは殺す!」


「ミスティアやりなさい」

 ミスティアは目にも止まらぬ動きで私の剣を弾く。

 なんでこの子が動けるの。

 それよりも、とてつもなく強い。

 嘘でしょ、あの雑魚勇者がなんでこんなに。


「驚いているようですね」

「どう言うこと、なんでミスティアが」


「彼女は魔族と現地人のハーフである亜人種の劣化体なんですよ」


 亜人の劣化体は見た目は普通の人間と変わらない。

 亜人は4種類に分けられ。

 完全体>獣人>半人>劣化体と分けられる。


「だからなんで劣化体がこんなに強いのよ」


「わかりませんか? 彼女が強いのではなくあなたが弱いんですよ」


 そうか、劣化体と言えども亜人だ通常の人間と変わらない状態の私と、亜人のミスティアじゃ差は歴然。


「とは言え、ミスティアの体はだいぶ改造させていただきましたけどね、私の体の実験体としてね、マナ遮断状態でもレベルは保持できるようにね」


 つくづくこの女は最悪だ。


「メルウス逃げなさい。多分、私じゃこの二人に勝てない」

 勇者の剣技や記憶を駆使してもたぶん五分五分。

 何より、あの真奈美と言う女の実力が不明だ。

「逃がしませんよ」

 そう言うとミスティアがメルウスを羽交い締めにする。

 それだけでメルウスは失神してしまった。


 両親の敵を討つことも出来ない。

 メルウスも失う。


 諦めかけたその時、私と真奈美の間に一人の黒色の鎧を着た男がどこからともなく現れた。


 名前もステータスも存在しない鎧の男が。






色々書き直しすみません。


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インフィニティ・プリズン~双星の牢獄~ シリーズ
『おさじょ』に出てくるアディリアスとウルティアの二人の神たちの物語 『聖剣のネクロマンサー』
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