マイラは諦めない
2章開始です
私の名前はマイラ。
生まれ変わる前の名前は、花川 瑠美
享年18歳だ。
大型トラックの左折の時に、巻き込まれて轢かれて死んだ。
歩きスマホ、マジ危険、ダメ絶対!
私は、いわゆるヲタク女子だ。
アニメ、ゲーム超大好き。
異世界転生して、魔物をガンガン倒したいと思っていた時期が、私にもありました。
銀髪赤眼の神と邂逅して、転生特典を3つもらった。
私が神からもらった物は。
◎神の祝福:人生はゲーム
一日一回、ルーレットを回して出た目に書いてある事が現実に起こる能力。
◎神聖の肉体
神と同じ体を持つ、マップや鑑定、無限アイテムボックスなどを持つ。
◎経験値倍増
魔物を倒したときに得る、経験値が人より多い。
人生はゲームは酷いと思う、できれば戦闘系の神の祝福が欲しかった。
出てくるマスは、ほとんどが占いレベルのものばかりで役に立たない。
2年前に城塞都市で魔法を覚えようと魔法屋に入ったときに鑑定されたのだが、私には神聖の肉体のお陰か、魔術回路が3つある。
魔法屋のおばあさんには、勇者でもないのにあり得ないと言われた。
勇者です、ごめんなさい。
だけど初めての戦闘で、ゲームとリアルは違うと言うことが痛いほど分かった。
ゲームとリアルの違いそれは本当の死が隣り合わせということ。
魔物が死ぬとき体をビクつかせ命が希薄になっていくのがすごく怖かった。
私は神と約束した戦いから逃げた。
試しの剣が無いことも私を逃げに走らせた。
それは言い訳かもしれないが。
戦いは怖い、怖いのだ。
こちらの両親はすごく優しい。
超が付く程のお人好しだ。
この人達の娘なら幸せに生きていけるだろう、私はただの商人の娘として生きていくことを誓った。
だげど、そんなのは幻想だった。
その日、私は人生はゲームで“運命の人に出会う“と出たので、ウキウキしていた。
街道沿いでゴブリンに襲われた時は、ゴブリンが運命の人かよと神を呪った。
私のマップはレベルが低いので魔物を表示しない。
そして、ゴブリンは強かった。
レベルをあげていないせいもあり、今の私では歯が立たなかった。
私は逃げた、また逃げたのだ。
両親を置き去りにして……。
魔物たちは私を弄ぶかのように狩りを始めた。
本気で襲ってくれば私にすぐ追いつくのに敢えて逃がしているのだ。
奴らの笑い声が聞こえる。
ゴブリンやスライムが、弱いとか言った奴に土下座させたい気分だ。
とか、現実逃避してる場合じゃない。
駄目だ、これ死にますわ。
二匹のゴブリンが私を襲う、さよなら異世界。
グッパイ青春。
覚悟を決めたその瞬間、ゴブリン達の頭が吹き飛んだ。
私を助けてくれたのは白馬に乗った王子さまではなく、みすぼらしい服を着た村人だった。
だけどもうその時には恋に落ちていた。
その少年は私をお姫様だっこすると両親の元に向かい、ゴブリンを倒し命を救ってくれた。
完全に致命傷レベルの負傷を一瞬で治してしまった。
しかも、馬車の破損まで。
もう彼が勇者で、いいんじゃないかな。
と思ったのは内緒だ。
その後、父様は彼に護衛を依頼した。
父様GJです。
実際、彼がいなければ、城塞都市には、たどり着けなかっただろう。
夜営をしたあの夜、私は彼のとなりで勇者ミスティアのように戦う自分を夢想した。
だけど、彼は私が供をすることを拒否した。
でもA級の冒険者になったら、一緒のいてくれると言う言質は取った。
彼と別れてから、三ヶ月が経った。
別れてすぐ、ガリウス様がS級指名手配された。
S級指名手配とは全ての国家で魔族と同じ扱いを受ける。
分かりやすく言えば見つけしだい、国家を上げて殺処分と言うことだ。
あの人が、公爵を殺したと言う。
嵌められたのかな、と思う。
何せ中世レベルの民度だ、貴族なんてろくなものじゃない。
法律だって、上級国民の為のものだ。
絶対に助けますからね。
そう言えば、この間勇者ミスティアをみた。
レベルが高いのに、ステータスが低い。
まあ、偽物の勇者だし、あんなものか。
だけど、あの娘は精神汚染されていた。
解呪するのは簡単だが、敢えてしなかった。
例え精神汚染を解いても、彼女に精神汚染を仕仕掛けた人物を殺さないと元の木阿弥だからだ。
それに私にはやることがあるのだ。
ガリウス様を探しだして、隣にたつこと。
ガリウス様を助けること。
その為にも、ギルドでの地位をもっと上げなければいけない。
目指すはS級の中のS級である、覇王の称号を取ることだ。
覇王はギルドの頂点である。
その力は一国の国王どころか、王国連合の総長に匹敵する。
ガリウス様の為にも覇王を目指すべきだと思う。
本当の勇者である、私になら出来る。
最年少でB級試験にも合格した。
血が怖いとか言っていられない
私が目指すのはもっと上だ、こんなところで足踏みしてられない。
今週は街道沿いの魔物狩りだ。
これはB級冒険者の義務で最低でも、50匹の魔物を退治しなければいけない。
たまには遠出するのも悪くないと思い、ガリウス様と初めて会った場所に向かった。
まだ3ヶ月だけど懐かしい……。
『――こっちだ』
「だれ!」
だけど、回りには誰もいなかった。
気のせい?
『――気のせいではない、こっちだ』
私は、声のする方に向かった。
林を掻き分けてついた先には、一本の桧の棒があった。
ひのきの棒か、ガリウス様いまどこにいらっしゃるのですか。
私が感慨深く桧の棒を見ていると、また声が聞こえる。
『我を持て』
どうやら、この桧木の棒が喋っているようだ。
「ええと、お断りします?」
しゃべる棒とか、呪われそうだよ。
『大丈夫、大丈夫ノロワナイ☆YO』
「ウソクサイデスヨ」
私は、きびすを返し引き換えろうとするが、しゃべる棒が呼び止める。
『我は勇者の剣だ、ある男にこんな姿にされたのだ』
「それで、私にどうしろと?」
『勇者であるお主が持てば、我は元の姿にもどれる』
勇者の剣か、そんなの持ってたら自由に動けなくなるじゃない。
「却下、私は勇者になりたくないの、あなたなんか持ってたら勇者にされちゃうでしょ」
『分かった、ならば唯の剣に姿を変えよう、だから抜いてくれ』
「エロいのはちょっと……」
初めて会ったのに抜いてくれとかゲテモノか! いや、ケダモノか!
『ちゃうわ!』
「なにか、私にメリットあるの?」
『強度と切れ味が最強の剣と、勇者用の魔法回路が手に入る』
「よし、今日からあなたは私の剣です」
『げんきんだな……』
私は、木の棒を拾って、手に取った。
『魔法回路及び勇者の記憶をDL開始、形状をブロードソードに変形』
その言葉と同時に、私の中に色々なものが流れ込んできた。
ああ、成る程これが勇者の魔法ね、って言うか剣技も手に入るのね。
「よし、今日からよろしくね? ええと名前とかある?」
『主が付けてくれ』
「じゃあケンケンね」
『あ、はい』
これで、また一歩ガリウス様に近づけたかな?