プレイヤーのキャラクター
「なんで地球が滅んでないの!?」
そうだ、そういえばウルガスが少し前の時間に送ると言っていたっけ。
でも地球が滅んだのは遥か昔のはず。
まあ私の隕石魔法が原因なんだけど……。
まだ滅んでいないなら地球のみんなを助けることができるんじゃない?
私のせいで滅亡した地球を……。
「お姉ちゃんは転生者なの?」
空を見上げて考え事をしている私に少年がかけてきた言葉に背筋を凍らせる。
地球人に転生者、それを知っているこの少年はどう考えても普通の人じゃない。
私が少年を警戒していると、それを察したのか自分が何者かを紹介し出した。
少年の名前はカッツ、彼は自分をプレイヤーが作ったゲームキャラだと言た。
先ほど襲ってきた獣人の騎士は邪骨龍王の配下で不死身の兵士なのだと言う。
不死身の兵士をさっきの剣は殺しちゃったんですけど?
殺せるなら不死身じゃないよね?
念のために死体を確認してもピクリとも動かない。
カッツはあの剣が邪骨龍王と獣人のリンクも切ったからその獣人は既に不死身じゃないので死んだと教えてくれた。
その邪骨龍王とは地球破壊兵器で、完全起動すれば地球を破壊するためにこの世界の生物はおろか鉱物まで喰らいつくし星を飲み込むと言う。
そして邪骨龍王起動の鍵は少年を含む六人のゲームキャラとプレイヤー『アキト』なのだと言う。
相手を殺すため自分もろともとか女神の頭もずいぶん逝っちゃってるわね。
「で、残りの五人とアキトとやらはどこにいるの?」
「キャラクターの四人は既に邪骨龍王に吸収されて、アキトの行方は分からないんだ」
既にそこまで吸収されてるなら詰んでるようなものじゃない。
この世界、終わってるわ……。
「ん、残りのキャラクターの一人は?」
「最後のキャラクターである人間種の彼の身体は僕が乗っ取っているこの身体の持ち主で、彼という器は別次元へと吹き飛ばさせてもらったんだよ、邪骨龍王にすべて仲間を吸収されないようにね。まあその見通しは甘かったんだけど……」
「その人間の子がこの世界に居ないんなら邪骨龍王は起動できないんじゃない?」
「見通しが甘かったんだよ。すでに邪骨龍王は起動しているんだ。現にこうやって奴の配下が襲ってきているしね。ただ全能力を解放できていないだけだよ」
カッツは言う、完全起動していない邪骨龍王を放っておけばいずれはその最後の一人の命を狙い世界を渡り殺しに行くと。
そして、この世界は滅んでしまうのだと。
「それでカッツはどうするの?」
「僕は邪骨龍王を倒すよ。仲間を助けないといけないしね」
「さっきの配下の獣人にやられそうになったのに?」
「……僕がやるしか、やるしかないんだ。アキトもガリウスも居ないんだから」
「は? ガリウス?」
少年の口からまさかガリウス様の名前が出るとは思わなかったけど別の世界の話だし同名なんて腐るほどいるわよね。
「お姉ちゃんもしかしてガリウスを知ってるの?」
「ええ、別人だと思うけど私を助けてくれた大事な人よ」
それを聞いてカッツは顔を青くする。
「助ける? 動いてる? そんなはずは……」
「……同名なだけよ」
だけどカッツは首を横に振る。ゲームキャラクターの名前はこの世界では神のルールに従い同じ名前をつけることができないと。
それにカッツが言うにはガリウスは作ったばかりの初期キャラでアキトが操作したことないので魂がない状態なので動くことができないはずだと。
「つまり、その彼は僕たちのガリウスだよ」
「そんな訳ないじゃない! 別な世界の話よ、この世界の話じゃないわ。ガリウス様がゲームキャラクターなんてことあるわけがない」
そうだ、あの人は自分で考え動いて私を助けてくれた。それがただのゲームキャラだなんて……。そんなことあるわけがない。
「残念だけどお姉ちゃんの居た世界の星の名はウルガスだし、今いる星の名前もウルガスだよ。隣り合った別な空間なだけなんだ」
「でも、動いてるじゃない私のガリウス様は動いてるじゃない」
「多分ガリウスの中に第三者の魂が入っているんだと思う。それもプレイヤーである地球人のね。だから魂ができて自我が芽生えたんだ」
「つまりガリウス様は地球人であり転生者なの?」
私は一縷の望みをかけてカッツに聞いた。
「違うよ。アキトが作ったゲームキャラクターだ」
転生者ならまだしも、ただのゲームキャラクター? ガリウス様が?
そんなの……。
そんなの。
「嘘よ!」
「嘘じゃないよ……」
茫然自失している私を尻目にカッツは私を置いて歩き出す。
「どこに行くの?」
「邪骨龍王を倒しに」
「それなら、私も行くわ。そいつを倒さないとガリウス様の命も危ないんでしょ? それにあなたにはまだ聞きたいことが山ほどあるし」
カッツはうなづくと私にベルトをつけ、それに先ほどの剣を装着させる。
「ならそれはお姉ちゃんが使ってよ、僕には使えないから」
そう言うとカッツはニコリと寂しそうに笑った。




