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幼馴染が女勇者なので、ひのきの棒と石で世界最強を目指すことにした。  作者: のきび
第三章 ミスティアとクロイツ ―ふたりの魔王討伐―
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クロイツと勇者候補選抜御前試合 その二十五 ~魔法なんて所詮マナの塊でしょ?~

 灼熱の太陽がクロリアの頭上の落ちる、その瞬間。彼女の世界は暗転した。


「ここは……意識の世界?」


「ヤレヤレだわ、クロリア」


「シルフィーネ、あなたが助けてくれたの?」


「助けてないわ、依然として上空には灼熱の太陽が渦巻いてるわよ。私の意識の世界で思考を超加速させてるから死なないだけ」

 意識の世界の窓から外を見るクロリアは、本当にギリギリで止まっている攻撃に冷や汗を流す。


「でも助かったわ」


「だから助かってないわよ。私がこの世界を解除したら死ぬわよ」


「じゃあどうしたら」

 その言葉にシルフィーネは怒るあまりにも他人事だからだ。


「クロリア、私たちの記憶があるからと言って強さはそんなに変わらないのよ。油断したうえに驕ったわよね?」


「……」

 シルフィーネの言葉に思い当たる節が有り余るほどあるクロリアはグウの音もでなくなる。


「舐めてなきゃ普通に勝ててたわよ。あなたのその考えは相手にたいして失礼だし最低の行為よ」


「はい、すみません」

 素直に謝るクロリアに、あまり強く言いすぎてもためになら無いわねと思い直し怒るのをやめる。


「まあ、良いです。このまま死ぬわけにはいかないので私が行きます」


「でも私の精神力が強いから出れないんじゃ?」


「嘘に決まってるでしょ。私を頼らないようにするためよ。あなたは甘えん坊だからね」

 そう言うとバトンタッチよと言ってお互いの手をパシッと叩く。

「よろしくお願いします。トホホ」


「かわいいあなたを殺させはしないわよ」


「え? なんだって?」

 その答えを聞く間もなく、シルフィーネは闇の世界から現実世界へと顕現する。


 灼熱の太陽が闘技場を焼く。しかし渦巻く灼熱の炎は光となり消え去る。その中央にはクロリア、いや、シルフィーネが立っていた。


「なるほど。面白い魔法ね、でも、魔法なんてマナの塊、元の姿に戻してやれば消え去るわ。それにあなたの技は精度が低いのよ」


「なにを!」

 魔法が消えたこともそうだが、何より自分の最強の技を掻き消されたことでゼロスの頭に血が登る。


「”終焉の太陽(ラストブレイブ)”」

 シルフィーネがそう唱えると手のひらに白く輝く光の球が出来上がった。

 ゼロスは自分の英雄魔法を真似されたことに驚いたが自分の終焉の太陽(ラストブレイブ)よりも小さいと、たかをくくっていた。


「勝つのは僕だ!」

 ゼロスがシルフィーネに向かい突進するとシルフィーネの持つ終焉の太陽(ラストブレイブ)から光が発せられ剣を一瞬で溶かした。


「なっ!」


 更に光が数回現れては鎧を溶かす。


「完全把握、魔法を使えると言うことはこういうことよゼロス」

 シルフィーネは余裕の表情で光の球を親指に乗せクルクルと回す。


「僕は、僕は負けられないんだ!”魔法剣 幻想四属性ノ剣(エレメンタルソード)”」

 ゼロスの手のひらから光の剣が現れる。その剣を握りしめると最大速度でシルフィーネに突きの一撃を加える。

 だが、シルフィーネはするりとそれを交わし光の剣に触れるとゼロスをいなして転ばせた。


「面白い魔法剣ね”魔法剣 幻想四属性ノ剣(エレメンタルソード)”」

 シルフィーネの手のひらから光の剣が現れ、大きくなったり小さくなったり伸縮を繰り返したかと思うと様々な形に代わった。


「なっ!」

 ゼロスは驚く、まるで先ほどのクロリアとはまったくの別人だと、勝つビジョンが全く見えないと。

 いや、その存在に勝つと思うことすらおこがましいと。


「完全把握。あなた、この魔法剣の使い方も間違ってるわよ」

 そういった瞬間シルフィーネの光の剣は見えなくなった。

 しかし、シルフィーネが腕を振るうとゼロスの周囲の闘技場の床が削り取られる。


「降参しなさい」


「僕はあなたに勝てない、それでもマーちゃんのために。マーちゃんの代わりに僕はなるんだ!」

 一瞬だった。シルフィーネの剣がゼロスの腹部に当たるとゼロスは空中高く持ち上げられ、そのままシルフィーネの魔力弾で撃ち抜かれる、何発も何発も。


 魔力弾はただのマナの塊だが一発一発が暴徒鎮圧に使うゴム弾のごとき衝撃を与える。


 地面に落ちてきたときには手足はあらぬ方向を向いておりとても戦える状態ではなかった。


「ぼ、僕が勝つ、んだ……」

 意識を失うほどの痛みに耐え、ゼロスは這いずりながら前に進む。


「素晴らしいわ、その不屈の精神クロリアにも見習わせたいわね。まあ私もだけどね」


「トドメよ”黒星雲ノ流星ブラックシューティングスター”」

 無数の黒い刃が上空に現れる。ゼロスの横たわる地面には黒い星雲が渦巻き、そこから強い重力波が発せられ黒い剣が勢いよく落ちてくる。


「試合終了! ゼロス戦闘不能によりクロリアの勝ちとする」

 審判の声が響き渡るが魔法はすでに発動された。幾百幾千の刃がゼロスを襲う。


「敗けを判定するのが遅いのよ」

 シルフィーネはひょいっと飛び上がるとゼロスの横にたち自分で放った魔法を剣で受け流す。

 黒星雲の出す重力波が効かないのはシルフィーネは魔力を使った身体強化でパワーアップしているためである。


 すべての剣を打ち落とすとシルフィーネはアイテムストレージから回復薬を取り出す。


「飲みなさい」


「僕は、負けてない」


「あなたは負けたのよ。死んだら強くなるチャンスは永遠に失われるわよ」

 ゼロスは涙を流して回復薬を飲む。もちろんシルフィーネは最上位回復魔法の魔法回路を作り出し。ゼロスに使用する。

 ゼロスの体はみるみる治り会場がどよめく。


 シルフィーネは空の瓶を掲げ、伝説の回復薬(エリクサー)だと説明する。回復薬を使ったのは誤魔化すためなのだ。


 会場が歓声で空気がビリビリと揺れる。これだけ圧倒的な力を見せつけて勝ったシルフィーネはこの国の国民に代表と認められたのだ。


「見事じゃクロリア、そなたが我が国の代表だ。ストロガノフ王子の件と今回の御前試合の褒美を与えたいと思うのだがなにか欲しいものがあるか? 何でもよいぞ」


「それでは、私はサラサ・ラササを褒美として求めます」


『さすがシルフィーネね私の意図が分かっていたのね』

 クロリアは元からこの勝負に勝ったら褒美をもらうつもりだったのだ。サラサと言う褒美を。


「は? どう言うことじゃ。あの者は王家転覆を図った罪人で死刑が決まっている者じゃぞ」

 普通王族で死刑になるようなことはほぼ無い良いところ一生幽閉だ。

 しかし死刑判決が出たのはストロガノフが動いたのだ。彼は敵に対しては一切の情をかけない冷血漢だ、だからこそサラサに選ばれなかったのだが。


 そんなことはお構いなしにシルフィーネはサラサを欲しいと言う。


 王は唸る。欲しい物を何でもやるといった手前、あげなければ沽券(こけん)にかかわる。

 しかし、大罪人とはいえ王族である。誰彼構わずくれてやるわけにはいかぬと顎髭をさする。


「よろしいではないですか国王陛下」

 ストロガノフが祖父である国王に進言する。国を救い御前試合にも勝った。その者の望みを叶えなければ国民は王室を見放すと。

 何よりクロリアならサラサを逃がす心配もないでしょうと助け船を出したのだ。


 心の中で、この借り大きいんじゃないだろうかとクロリアはゲンナリする。


「当事者であるストロガノフがそう言うならばその意向汲むしかあるまい。よかろうクロリアよサラサ・ラササの身柄そなたに預けよう。ただし逃がすようなことがあれば責はそなたにとってもらうぞ」


「はっ! 心に止めておきまする」


「皆の者大義であった!」

 王は会場に響き渡る声で叫ぶと踵を返す、その際サラサの父であるピロシキがクロリアに深々と頭を下げ王と共に闘技場を後にした。


 闘技場にはシルフィーネとゼロスだけだ。ゼロスは仁王立ちするシルフィーネに言う。


「確かにあなたは強い。でも、クロイツさんは僕を一瞬で叩きのめした、姿さえも見せない超高速の一撃で。たぶんあなたでも、あの方には勝てない」


「ふふふ、それは楽しみね。そんなに強いならクロリアにはやらせないで私が戦おうかしら」


「?」


「まあ、あなたも頑張りなさい。やりたいことがあるのでしょう? あなたならまだ強くなれるわよ」

 シルフィーネの言葉にゼロスは頷く。彼女には心に決めたことがあるのだ。だからここでくじけてはいられないのだと決意を新たにする。


「ありがとう。僕は他の国から勇者候補としてもう一度あなたと戦います。その時は絶対に負けませんよ」


「ええ、もし私の前に現れたら全力で叩き潰してあげるわ」

 そう言うとシルフィーネはゼロスにてを差し出す。ゼロスはその手を取り固い握手をした。






 

 


アルファポリス先行で更新してますのでこちらの更新忘れる場合があります

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インフィニティ・プリズン~双星の牢獄~ シリーズ
『おさじょ』に出てくるアディリアスとウルティアの二人の神たちの物語 『聖剣のネクロマンサー』
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