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幼馴染が女勇者なので、ひのきの棒と石で世界最強を目指すことにした。  作者: のきび
第三章 ミスティアとクロイツ ―ふたりの魔王討伐―
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ミスティアのクーデターまでの六日間 その六

「これ、渡れるの?」

 私はあまりの距離と激流に尻込みした。


「さすがにこれは無理ですね、普段は膝上くらいまでの水量なのですが、どうやら上流で雨が降っているようです」

 そういうとアルファはグランドル連峰を指差す。そちらを見ると山々を厚い雲が覆っていた。

 その厚い雨雲により、湖の水が上昇して大量に河川へと流れ出ているのだと言う。


「ねえ、このまま湖に出て船で王都は目指せないの?」

 私はアルファに率直な意見を聞いた、よくよく考えれば危険な山を行かなくても湖を横断すれば一番近いのだから。


 アルファは私の意見を聞くと、それは愚策だと言う。1000人もの人員が船で移動すれば目立つ、そもそも船がないと言う。仮りに私たちだけで船で行ったとしても湖には巡視船や軍艦がいて、私達は狙い撃たれて一貫の終わりだと言う

 それに水上では罠魔法も使えないのだとか。


「ルートは無くはないのですよ」


「なんだ、それならそうと言ってよ。余計な頭使っちゃったじゃない」


「あまり、おすすめはしませんよ。ここで日が沈むのを待ってから出発して滝の裏の道を行くと言うルートです」

 つまり半日無駄にすると言うことで、サグルの時間を無駄に使ってしまうと言う。

 そのルートはどうしようもなくなったときにすると言うことで他の案を募った。しかし、誰も良い案は出せなかった。

 なにかないだろうか? 50mの川をわたる方法。


「ねえ、サグル。獣化して私を対岸まで投げられる?」


「無理だと思う良くて30mだね」

 30mか私のパワーシューズが10mの壁を飛び越えた。それでもあれは全力じゃなかった、全力で飛べば50m行くはずだ。


「サグル、あなたを苦しめることになるけど獣化して私を対岸に投げて」


「いや、30mしか投げられないよ」

 そう言うサグルに私は靴を指差した。そしてサグルの遠投に私の脚力を合わせれば行けるはずだと。


「ミスティア様、それは成功の確率が低いですよ」


「なぜ?」


「ミスティア様一人だけ対岸にわたっても仕方ありませんよね、そうなるとあなたに(つな)を結ばなければなりません」


「そうなるわね」


「そうなるとその綱は余裕を見て100m位のものを使います、つまり綱が抵抗になって予想よりも飛べないでしょう」


「じゃあどうすれば良いのよ」


「いいえ、その案自体は良いです。ただサグルさんも飛んでもらいます。そうすれば届くと思います」


「飛ぶってどうやって」


「私の魔法を使った脚力は中々のものなんですよ」

 つまりこういうことらしいのだ、まずアルファとサグルがお互いに足と足を合わせて押し合い飛び、その後私を投げるサグルと私の脚力で対岸まで投げるのだと言う。


「あ、サグルが獣化したら私の獣神化と同じ力があるんだから飛び越えられるんじゃない?」


「それは買いかぶりだよ、俺の力はせいぜい獣人3人分くらいだよ」

 私の身内贔屓だったのか、サグルは自分の力量を正確に判断する。力を失うと相手の力量もちゃんと計れないことに愕然とした。

 だが今はそんなことを考えていられない、対岸に行くことが重要なのだ。私はアイテムバックからロープを取り出すと腰に巻きもう一方を太い木の幹に巻き付けた。

 アルファの指示のもと、ジャンプするタイミング等を短い時間で練習し、本番を迎えた。


「じゃあサグルさん私の足に乗ってもらえますか」

 そう言うとアルファは寝そべり足の裏を上に向ける。

 サグルは分かったと言うと獣化しアルファの足の上に乗ると私を肩に乗せ足の裏を手で持った。


「タイミングが重要です、私が魔法を唱え終えたらカウントしてください。いいですね?」


「わかったわ」「了解した」


「補助魔法:加速する足(ローリングブースト)」その呪文と共に私達は空へと舞い上がった。3、2、1。ここで私は力の限りジャンプした。それを押し上げるサグルの力と共に私は対岸へ叩きつけられた。


「イタタ、成功した。私はみんなに手を振り成功を伝えた」しかしその振った手があらぬ方向を向いていた。折れていた。あれだけの威力で叩きつけられたのだ村娘の体力で耐えられるはずがない。足はパワーシューズのお陰かなんともないが全身くまなく痛い。


 なんとか折れた腕や体の痛みを耐え私は小高い丘まで上がり、そこの木にロープを巻き付けることができた。まず最初に渡ってきたのはアルファだ背中にサラスティを乗せている。

「ミスティアさん大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃないけど、成功してよかったわ」

 そう言うと私は成功した安堵からか、全身の痛みで気絶をしてしまった。


 次に目を覚ますと私の体はすべて癒され元の状態に戻っていた。よく見るとロープもピンと張っていた。アルファがかけ直したのだろう。

「サラスティありがとう」私は彼女にお礼を言うと、まだ、渡っていない人たちの回収を手伝った。

 アルファは作業を手伝わないで石になにかを書いていた。彼がサボることなど無いのでなにか重要なことをしているのだろう。


 数分後すべての人が渡り終えたのだが、対岸のロープを切ることができない。ここでロープを捨てるのは避けたい。


「サグルさん、ここからあの木のロープが巻き付いてる部分に石を投げてもらえますか」


「届きはするが破壊は無理だぞ?」


「それなら大丈夫です、この石に書いた魔方陣があなたが投げた石を加速させますから」

 そう言うと先程書いていた石をサグルの前に三つ置く。


 サグルはなにがしたいのか分かったようで、石を拾い木に向かって投げた。その石は木に当たっただけで甲高い音をたてて根本をコロコロと転がった。

 もちろん魔方陣を使っていない練習だ。練習だけど、ここからあの木までちゃんと届くのがすごい。本調子なら私も槍でなら当てる自信があるけど、石だとたぶんあらぬ方向に飛んでしまうだろう。

 その点でもサグルは適任なのだ。


「じゃあ本番行くね」

 そう言うとサグルは石の前にたち力一杯遠投をした。

投げられた石は魔方陣の上を通るとギュンギュンと加速して一瞬で木を貫いた。


「すごい、二人ともすごいよ」

 私がそう言うと周りから歓声が上がった。珍しくアルファが照れている。

 回収したロープは私のバックに入れようとしたのだけど水を含んで重さが増してしまい許容オーバーになってしまった。

 サグルはそのロープを持ちまるでムチのように地面に叩きつけた、ビシッビシッと何度も何度も。


「これで乾いたと思う。そういわれ渡されたロープは先程よりも遥かに軽くバックに入れることができた」

 とは言え私には重いのでそのままサグルに入れてもらったのだけど。


「さて、ここから魔物多発地帯になります。私たちが先頭を歩きますので皆さんは離れないように注意してください。大型の魔物が出た場合私たちが対処しますのですぐに呼んでください。決して自分達で対処しないようにお願いします。よろしいですか?」


「「「「「おぉ~!!」」」」」

 完全にレジスタンスをアルファが取り仕切っていて私はクスリと笑うと、アルファはばつが悪くなったのかサグルを押して私と二人で後詰めをするよう命じてきた。


「了解です、アルファ様」私は日本人達がするような敬礼をして後方に回った。

 アルファはやれやれといったポーズをして無理はしないようにと私に一言いうと先頭へと戻った。


「サグルと魔物狩りは初めてね、頼りにならないかもだけどよろしくね」

 サグルの現在の姿は獣化60%と言うところだろうか、普通はすぐにもとに戻れるのに本当にゆっくりと獣化が解ける。しかし私のそんな思いとは裏腹にサグルは魔物狩りができるのが楽しみなようで、そわそわしていた。

「こちらこそよろしく、少しドキドキするよ魔物とは戦ったのことないから」


「まあ、しゃに構えないでドンとしてれば良いのよいつも通りに」


「そうだね」

 そう言うとサグルはアイテムバックから偽勇者の剣・改Ⅱ(イクスソード・かいに)の刀身を継ぎ足したミリアスの剣を取り出しいつでも戦える姿勢をとる。


「サグル力み過ぎだよ剣はしまっておきなさい。疲れちゃうわよ?」


「そうなの?」

 まだ見通しもよく魔物が出てもすぐに対応できる状態だ。剣を抜いて緊張するほどでもない。それに密林では長剣は不利だ私はバックから短剣を取り出すとサグルに渡した。


「こいう密林地帯は長物は不利よ」

「はい、先生!」

 ちょ、だれが先生よ私はふざけるサグルを軽く小突いた。

 まあ、実際は爪がまだ出せるから爪の方がいいのだけど。それではいつまでたっても戻れなくなるしね。

 そうやって戦う心構えをサグルに教えていると前から伝令がきた。

 そろそろ対岸の見張り台からこちらが見える頃なので密林に入ると言う。それと私の魔法は絶対に禁止で魔銃の使用は命の危機以外使うなと言う。

 まあ、魔銃なら初級魔法だから、もし誤射してもなんとかごまかせるでしょうけど、私のは中級以上なので見張り台から丸見えになる。だからこその伝令でしょうね。


 私達がそれを了承すると伝令は前に戻っていった。

 前を見ると、隊列はすでに密林に入り道を切り開いていた。進軍速度が目に見えて遅くなる。獣道が見つかれば速度も上がるでしょうけど。危険も駄々上がりなのが難点ね。

 そうこうしていると。前方で戦闘音が聞こえた。私は飛び出していこうとするところをサグルに止められた。


「いっちゃダメだよ」


「なんでよ!」


「僕たちが前にいってる間に後方が襲われたら対処できないだろ?」


「でも、心配じゃない」

 そう言う私に大丈夫だよ前にはミリアスもいるしアルファもいる。問題ないさと言う。それに今は軍隊行動だから隊列を乱すのはいけないんだとも言う。


「わかりました教官」

 私はそう言うと少しふてくされて敬礼をする。まあ軍隊の知識なんかないしここはサグルにしたがうのが良いだろうけど……。あれ? サグルって色々な知識あるのよね、なら私の狩り講座いらなかったじゃない! 私がそう言うとテヘ、バレましたかと舌を出す。


 こんにゃろめ!


◎ミスティアとレジスタンス現在地

挿絵(By みてみん)


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