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幼馴染が女勇者なので、ひのきの棒と石で世界最強を目指すことにした。  作者: のきび
第三章 ミスティアとクロイツ ―ふたりの魔王討伐―
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クロイツと平和な日常 終演

「斬気!」

 俺のひのきの棒からでる光剣が魔物を穿つ。しかしその一撃は軽く,魔物を死に至らしめることはできなかった。


 グレイトル


 頭の無い体に口だけがついた化け物、最初の一層でこんなに強いのか。


「斬気!」

 俺はさらに斬気を重ねがけして威力を高めた聖剣を突き立てる。

 それでも倒すには至らない、先程より深めに剣が食い込んだ程度だ。

 結局一体倒すのに四斬気使ってしまった。これは早いうちに新しい武器を手にいれないと不味いかもしれない。できればひのきの棒で。


 普通の剣でも真名命名(ネーミング)(あらた)は使える、しかしひのきの棒のように細胞をもたない剣は一回しか使えない。


 静さんが言うには金属は自由電子や結晶構造云々言うのだが良く理解できない。それを理解できればひのきの棒の細胞を燃やす力も更に細かく制御できると言うのだが。

 俺の場合剣を細胞一個と同じように考えていると言うのだ。だから小分けにして使えないのだと言う。


 と、そんなことより今は目の前の敵だ、後ろが見えないほどの敵が俺を襲う。


「ガリウス様待ってくださいよ」

 遅れて着いてきた魔王(マオタン)が不平不満を言い、俺の裾をつかむ。


「こいつら殲滅すれば良いんですよね?」


「いや、そうだけど」


「じゃあ行きますね”地獄の底の深淵より、我が失われし血肉よその主たる我の元に戻りその姿を顕現せよ”」


 その文言と共に魔王(マオタン)の帽子が魔王(マオタン)を包み込む。


「”魔王降臨”」


 その姿は3m程の巨体になり指先ひとつでグレイトルを血煙にする。


「ファハァハハハ! 群れることしか脳がないゴミ虫どもよ、我が手によって死ねることを光栄に思うがよい”地獄ノ業火(ヘル・インフェルノ)”」

 その呪文は周囲10mの敵を一掃しグレイトルは灰と化した。


「我が力の前にひれ伏せ悪魔ノ波動(デモンバースト)!」

 魔王の角が光を上げると空間が歪み扇状に衝撃波が伝わりグレイトルは身体中から血しぶきを上げ倒れる。


「煉獄の炎よ、嘆きの川の氷よ、地獄に生えし刀樹よ地獄に吹き荒れし風よ今ここに現れ我が敵を滅ぼせ”黄昏の静寂(デッドエンド)”」

 魔王(マオタン)の両手から存在そのものを否定する何かが放たれている。魔物を殺し、灰にし、その灰すらも消し去り空気さえも塵と化し消え去る。

 その技の後、この階層に暴風雨(テンペスト)が起こり、すべてを洗い流す。


「ファハァハハハ! この世のあらゆる生あるものよ,その命を差し出し我が糧となれ」

 俺はそれを聞くと魔王(マオタン)の頭をかかと落としで蹴り飛ばした。


「なっ!? 主よ我を蹴り飛ばすとはなにゆえぞ。我はこの世の頂点、すべてを統べるものぞ!」

 いや君一応俺の部下だし、うちの魔王軍で4番目だからね?

「糧とするって言ったよね? 糧とするのになんで魔王化してるのかな?」

 魔王化すると経験値が入らない、だから魔王化は禁止していたのに。


「いや、しかし主よ」


「言い訳はいいです、すぐに戻りなさい」


「了解いたした」

 そう言うと魔王(マオタン)は元の愛くるしい姿に戻った。魔王(マオタン)は魔王のときはなぜだか中二病全開のしゃべり方になる。


 魔王(マオタン)は痛くもない頭を痛そうな演技をしてなでる。

「酷いですよお姉ちゃん様、女の子を足蹴にするとか畜生ですか? 鬼畜ですか?」


「ハハハ、我は鬼畜ではなく魔王を倒した現魔王だ、ひれ伏せ弱き魔王よ」


「ちくしょう!」

 魔王を奪われた魔王(マオタン)は悔しそうに叫ぶ。しかし俺の台詞は魔王としてはまだまだ甘いと言う。真相(ガチ)勢は厳しいです。


「ちなみにどこがダメなの?」


「聞いちゃいますか? 聞かれちゃいますか? 良いでしょう、良いでしょう。迷宮地下塔厨二病特別講座を開きましょう」


「え、あ、うん」

 やばい教師モードの魔王(マオタン)は誰にも止められない。


「まず笑い声です、ハハハなんて軽い笑い声じゃダメです。溜めてください。ファハァハハハ!です。リピートアフタミー」


「ファハァハハハ!」


「ふぁははは」


魔王(マオタン)は指を左右に振りチッチッチと言うと

全然出来てないとダメ出しをする。もっとお腹から声を出せと、深淵の底から力を授かり強者になったあなたはすべての者を見下すように笑うのですと言う。


 ……意味がわからないよ。


「ファッハハハ!」


「ふぁっハハハ」

 そうして一時間ほど魔王としての笑い声の授業をやらされた……。




 落ち着いた魔王(マオタン)と、この階層にいる魔物の残党を狩ると魔王(マオタン)のレベルが上がった。

「しかし残党とは言え、あれだけの強さの魔物を倒したのにレベルが1しか上がらなかったね」


「経験値の獲得量が少ないですね」

 とは言え、これで魔王(マオタン)はレベル105かさっきみたいに一気に上がってまた動けなくなるよりは良いか。


「あれ? お姉ちゃん様レベルが3になってますよ」

 魔王(マオタン)の指摘を受け自分のステータスを見ると確かにレベル3になっている。

 俺にはレベルがない、だからこれはきっとスライムのレベルだろう。念のため分離してみるとやはりピンクスライムはレベル3になっていた。

 スライムは魔物ではない、静さんがリライマさんの協力で作り出した人工生命体である。だからレベルがあるのだ。レベルが上がれば人工生命体でも神の祝福(プライム)が手にはいるかもしれないな。

 

「お姉ちゃん様、この子には名前つけて上げないんですか?」

 スライムをニギニギしている魔王(マオタン)がスライムに名前をつけようと言う。たしかに名前くらいあったほうが呼びやすいな。


「名前か、ピンスラかピンムでどうかな」


「う~ん、ギリギリでピンムですかね」

 そう言うと魔王(マオタン)はピンムを胸にしまいこむ。


「何してるのかな君は」


「いえ、オッパイパッドスライムにならないかなと、この制御盤邪魔ですね」

 まあ、気持ちはわからなくはないけどピンムが完全にいやがっている。


「おいでピンム」

 俺がそう呼ぶとピィと鳴き、魔王(マオタン)の魔の手から抜け出すと俺を覆い女性の形をとる。俺の呼び掛けに答えたと言うことはそれなりの知能があるのか。と感心していると新手の魔物が沸きだした。

 見た目は小柄な体に口だけがついた魔物なのだが名前はグレイトルだ。どう言うことだ、先程のグレイトルよりも何回りも小さい。俺は沸いたグレイトルを斬気を発動して殺した。1斬気だ。しかも一撃で。


「あれ、弱い……」


「明らかにさっきまでの個体と強さが違いますね」


「経験値は先程の大きいのと同じだね」


「つまりこれ、1万年でこの弱いのが強くなったと言うことなんでしょうか。レベルもないのに」


「なるほど、そう考えるのが自然かもしれないね」

 このくらい弱ければ最初の階層として申し分ない。この中の魔物は外の世界とは別な形態だと思った方がいいのかもしれないな。大体その身に魔石を持たないのだから明らかに別種なんだよな。


 取り合えずマップで次の階層のワープポイントを確認し、そこまで移動してから今後の計画を練ることにした。


 道中沸きだしたグレイトルを何匹か仕留めるとレベルが5になった。そして気がついたのだが、俺のステータスも上がっている明らかにレベル1のときよりも動きが良い

 レベルはステータスに掛け算で影響を与えるがレベルが5になってステータスが5倍になっても実際の力が5倍になるわけではない。

 その点、身体強化は使った魔力に応じて実際の力を何倍にもする元々これは使徒の技だそうで、魔法を使うのに魔法回路を介さない使徒だから使える技なのだ。

 俺も神気があるのでマナは自己生成できると言うがイメージ力が足りなくて、いまだその領域に達していない。


「取り合えずここを拠点にしてレベルを10まで上げようと思う」


「そうですね、魔物が自己進化して強くなるこの地下塔(リバースタワー)では次の階層の魔物がどのくらい強いかわかりませんもんね」

 とは言え100階だ、1ヶ月で抜けるには最低1日に3階以上踏破しなければいけない。

 結構ハードな冒険になりそうだ、マイラさんと組んでたときは大体彼女のお陰でなんとかなっただから冒険と言えるような冒険はしたことがない。ミスティアやアリエル達のことも気がかりだけど、俺ははじめての冒険とも言えるこの状況にワクワクせずにはいられなかった。



◇◆アキトゥー神国◆◇


 大和神国から神剣(デバイス)をなくした神国に代わりの剣が授与された。それは神剣(デバイス)よりも使いやすく遥かに強力だった。

 その剣は神国の血を引いていなくても使えた。


 しかし、私はその剣を突き返した。倒すべき存在の使徒に施しを受けるなどあり得ない。他の五国はその剣を受けとり国剣とした、愚かしいことだ。

 しかし非難はできない、彼らは命をとして使徒ガリウスと戦ったのだから。


 シルフィーネがいれば……。


 私のつまらぬ嫉妬心であの娘には辛い思いをさせてしまった。私の責め苦により、シルフィーネは心を壊しすべての能力をなくした。だが私は更に責めたてた。

 嫉妬、それもあるだろう。しかし私は恐れたのだあの力に、私の力のなさに。

 国民はシルフィーネを姫王と称え私を蔑んだ。せっかくこの地位についたのに娘に王の座を奪われるのが怖かった。

 だから死ぬほどの責め苦をした。苦しめた。


 シルフィーネが死んだ今わかる、私は愚かだった。


 取り返しなどつかないが。


 力が欲しい、何者をも恐れることなど無い力が。


 その言葉に呼応するかのように一本の光の剣が私の目の前に現れる。


『力が欲しいのか? お飾りの王よ』

 剣は私に語りかける。あの会議の後で現れるようになった幻覚。


『何度も言っておろう幻覚ではないと』

 この声が幻覚でなければなんだと言うのだ、この声の主は封印されており私と意思の疎通などできるはずはない。


『なんども言っておるだろうアキトゥーの王よ、お主ら黒の封印は今神を名乗る者により開封されていると、つまりお主には守るべきものはないのだ』

 それが本当なら、私たちはなんのために存在するのだ。


『だから私が力を与えようといっている。元々お前達六色は私の勇者と言う名目だったのだろう? だったら問題あるまい?』

 確かにそうだ。だが……。


『条件はお前の娘マリアを私に差し出すこと』

 そんな条件飲めるわけがない。


『言い方が不味かったか? 分かりやすく言えばマリアは私の勇者になる神の巫女だ。そしてお主は神の巫女の父として私の力を分け与えよう』


 ちから、神の力が手に入る。


『使徒に対抗したいのであろう? 私もあやつらには騙されてこんな状態になってしまったのだ。だからお主に力を貸すのはやぶさかではない』


 確かに使徒は悪だ。あやつらはグランヘイムを滅ぼした、信用できない。


『その剣をつかんで我が名を叫べ、さすれば永遠(とこしえ)の繁栄を約束しよう』


 そうだ、何を迷う必要がある。私は力をてにいれマリアは使徒に対抗しうる勇者になる。そうすれば何者をも恐れる必要はない。

 私は目の前の光の剣を握り神の恩名を叫んだ。


「我に力を、ウルティア!」



神剣より強力とアキトゥー国王がそう思っているだけで実際は神剣の方がはるかに上です。

神剣の実力は神意と同等場合によってはそれ以上ですがその力は六色の勇者で勇者を発現していないと使えません。

黒魂ノ勇者剣はクロイツの魂に反応して神剣化しています。それは六色の勇者の出自に関係してますがまだ謎です。

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