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「よっ! 

 オレのこと、覚えてる? オレオレ! オレだよ、記憶ない? あ、そう? 

 ま、オレ、コロッコロ名前変えるからさぁ、さもありなんってか? 

  七変化はお手のモノ、女形も出来るっていう寸法で、

 あらゆる後ろ暗い隙間に忍び込むのを得意とするのがオレってわけ。

  え? 近づきたくない? そんなぁ!


  ま、そう寂しいこと言うなって。

 オレだって人間なんだ、チビとはいえ拒絶されるのは胸にくるものがあるぞ~。一応。


  何? 騎士様? あぁ、なるほどリディか。気になるか。そりゃそうか。

 あいつはもう根城に帰ってるよ。徹夜が趣味だからな、あいつ。

 戻らんとさすがに怒られる立場なんだよアレでも。

  へ? あー、まあ、気にスンナって。

 ああ見えて飄々としごきにも耐える丈夫なやつだし、平気だよ。ヘーキヘーキ。

 リディだし。すげぇよリディ。

  ――――昔っから、ああなんだ。

 なんでも優しすぎるきらいがあるというか。

 鷹揚なんだよ、なんでも。庇うことにかけては得意だからな、

 騎士が服着て歩いているようなもんだ。あ、騎士か。

 それに、あー、目ざといというか。気配りがな。

  オレも仕事柄、色んなことに気を利かせなきゃならんのだが、

 あいつは別の細やかさだな~、うん。本職だし。


  何、お話を聞きたいって?

 うーん、そうだなあ、じゃあ、

 まず手始めにオレのことは親切なお兄さんだと思って、

 兄貴って呼んでくれ。え、嫌? お兄さんは駄目? じゃあ教えない。



  ……あー、わ、分かったって、分かった!

 チビを泣かせたとなったらさすがのあいつも怒髪天突くだろうしな。

  しばらく奢ってもらえ無くなりそうだし……、

 あいつが教えてくれる食事って美味しいもんばっかだからな、そうそう、

 なんでかアーディの食事処をよくよく知ってるんだよあいつ。

  ここだけの話、オレがな、偏った食事というか、

 食べないことを気にしてるみたいでなあ~……。ははは、まーなんというかな、

 オレの職務が職務なだけに、な。

 太るのも良くないが、筋肉がつきすぎるのも良くないし、

 って考えると適当な食事についついなってしまいがちでさぁ~。


  面倒なんだよ、食べることって。

 リディにはよく叱られてたよ、肉ばかりじゃなくまともな食事をしろってさ、

 骨折って太くなったと喜ぶ野郎はあいつだけ!

 ホント変な奴だよ、リディってやつは。

  オレみたいな奴に気に入られたり、近衛騎士にまで取り立てられるなんて。

 あいつは運が良いというか、

 ……悪い、というべきか。

 

  ……はぁ。

 まあ、こんなこと喋ってる間に司祭のおっさんが起きる時間になったか。

 ガキンチョどもも目覚めるだろう、オレの腕前は完璧だからな。 


  リディが対応したがっていたが今回の件はオレがそこそこ対処することになったから。あいつも気にしいなんだよ、仕事を抱えるだけ抱えたがる仕事魔人だからな、てことで、気になることを教えろ、オレに。司祭のおっさんと交渉するから。気になることはなんでもいい、脅す材料になればなお良し!

  あ?

 あー怯えなくていいよ、そこまで怖がる必要はない、と思うぞ多分……。

 ははは。


  ……ふむふむ……懲罰? なるほどなあ。

 そうか、まあこの教会はそうあくどいことはしてないはずだが……、ん、ああ。

  他にも幾つか孤児院はあるんだよ、ただ中には孤児を売り払うやつもいるし、

 酷いところだとご飯も一日一食だけしか与えずにガリガリな所もあってなあ、

 なかなか駆逐できねぇんだよ、そういうとこ。権力者が仲介役やってたりするからな、いくらリディでもそうそう手出しできねぇんだ。躾とか言い訳されると検証するのがなあ。

  あいつも頑張ってはいるが、いかんせん、あいつの同僚たちは貴族位があんまいないからな。副団長一人が孤軍奮闘しても王家は貴族の立場を慮らねばならんところもあるからな、ましてや今は時期が悪い……。


  そうだ!

 ああ、忘れてたわ。

 これこれ。これ、見てくれないか、ほら。

  

  どうだ、読めるか?

 チビは文字を読むことができるって聞いていたから、

 これ読めたら助かるんだが。

  お、そうか! 

 良かった、良かった。

 そうそう、そうなんだよ、これ、便箋だよ。

  なんかあったらこれに文字書いて、そうそう、

 ここに送るようにしてくれや。

 オレのもう一つの名前だけど絶賛貸出中の名前なんだ、

 リディのところへ直接行くはずだ。


  ……は?

 え、あーそうなの。あの司祭、勉強も文字を書くことも禁止している、と。

  ほお。

  ふぅん。

 あーまぁ、王都で文字を書けるやつ、そんな多くいないしな。

 職業として代筆屋がいるぐらいだし基本貴族とか、商人か。司祭も、か。 

  

  よし。お兄さんが良いことを教えてやろう!

 隠しとけ。

 ベッドの下に。

  男はな、大事なものはベッドの下に隠しておくもんなんだ。

 手紙の体裁が整わなくても、名前だけ書いて送ればいい。

  郵送できなきゃ、そうだな、あの聖女様像の胸元にでも、

 あー無理か。チビはチビだもんな。そういった色気はなさそうだ。

 じゃあ、そこの窓のとこにでも目立たないように挟んでおいてくれ、

 リディのことだ、なんらかの手立てをしてくれるさ、オレみたいにな。

  あ、これペンとインクな。使ってくれや。

  

  あ、そうそう、オレってばリディの幼馴染みなんだ、

 昔からのツレよ。そうコレよコレ! こういう仲なのよ~分かる?

 あいつの屋敷って広くってなあ、お菓子はいっぱい出てくるし、昼寝してても基本文句言われるのはリディだったからな、マジ極楽だったわ~…… 。

 

  え? なに、聞こえない。 

 オレには何も聞こえないぞ、リディの嘆きなんて。


  それよりアリス。

 元気になったみてぇだな、こりゃ目出度い!

 

  んじゃあ、オレ、行ってくるわ。

 リディとアリスの話を加味すりゃ、

 ま、なんとか生活改善はできるだろうさ!」  

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