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パラリパラリとページをめくる。

現在自分がいるのは領主様の家の一室、そこで俗にいう魔導書を呼ばれる魔法の指南書を読んでいた。

そこまで自身が読書家であったわけではないせいか、これだけ長い文章を読むとそれだけで頭が痛くなってくるのは少々困りものではあるが。

いや、今自分が読んでいるのは魔導書、もしかしたら、知らず知らずのうちにMPを吸われているかもしれない。

それとも、今読んでいる本が皮紙でできているため自分の体に予期せぬ害が生じているのかもしれない。

はたまたは、なぜか異世界文字なのに一部固有名詞を除けば普通に読めてしまう自分の異世界チートは何か代償付きなのかもしれない。



「……というわけで、魔導書ってそういう読んだだけで呪いみたいな効果が発動する可能性ってない?」


「ないです」


「もっとこう、感覚でしゅぴぴ~っと呪文を覚えられたりはしない?

 たとえば読まなくても目を通しただけで、中に書いているすべての呪文を覚えられたりとかさぁ!」


「そういう魔導書がないこともありませんが、そういうのはよっぽどの高級品か禁制品のどちらかでしょうな。

 というか、アキラ殿はそのような魔導書を望んでいるのか望んでいないのか、わかりにくいのですが?」


「多分どっちも」



部屋に来たモーリンさんに一部の望みをかけてそのように尋ねてみるもどうやら知らない模様。

折角のファンタジーなんだから、楽できるところは楽したいのになかなかのくそったれである。

幸い、電気化学という人間科学の暴力がないお陰で夜にまで魔導書を読むという選択肢がないのだけがある種救いである。

代わりに、魔法石やランプによる光源があるよだって?

そんな例外は知らん。



「うむ!その気持ちはよくわかるぞ!!

 やはりそこのジジィみたいな、普通の魔導士は鈍くて気付かないみたいだが長文というのはそれだけで害!!

 特に魔導書というんはいかん、訳の分からないことばっかり書いているのにそのうち役に立つものはほとんどない!!

 魔法の理解には魔導書を読むのが一番~~?何をバカな!!見ているだけで気持ち悪くなるものが身に付くわけがないだろ、いい加減にしろ!!」


「こ!ら!!

 まったく、ラスカは相変わらず言ってることがしっちゃかめっちゃかで……

 アキラ殿がその言葉を真に受けて、悪影響が出たらどうするんですか」



いいぞ、もっといってやれ。

勿論顔には出さないが今回はどちらかというとラスカさんの方の意見に賛成である。

長文族には教えなければらならいのだ、我らが短文病を患っている者共の苦しみというやつを!



「ついでに言うと、魔法なんかも絶対によろしくない力に決まっている!

 一部の魔法使いどもは、人がもともと持っている力の延長とか神より与えられた奇跡とか言ってるがそれだってかなり胡散臭い、いや、嘘に決まってる!!」



ごめん、それには共感できません。

魔法とかそういうのはいい文化、長文は悪い文化。

魔法が使えるロマンというものは何物にも勝るんですよ。

これ以上長くラスカさんに話させると、また知らず知らずのうちに剣の修行に付き合わさせる可能性がるため何とか会話の矛先をそらす。



「え、え~っとそういえばモーリンさんが来たということは……」


「はい、そろそろ食事の準備をなさるにはいいお時間かと思いまして。

 ……そういえば、ラスカ、お前はなんでこの部屋に来たのだ?」


「ふっ、なに、ちょっと畑を見てくれと頼まれたときに害獣を倒してな。

 ちょうどその肉を手に入れたのだから、あれならユリオ様も喜んでくれるだろう。

 とりあえず、キッチンに置いといたから焼くなり煮るなりしてくれ。

 あ、最低限私には焼いた肉を1つは頼むぞ、特盛でいい」



突然の献立変更案件はやめていただきたい。

なんて、ラスカさん相手に正面から口に出せるわけもなくとりあえずは急いでキチンへ駆け込むこととなった。

そうして、キッチンに吊るされていた自分の体よりでかい謎の肉の塊に戦慄と絶望を感じるのはそのすぐ後の出来事であった。





「うん!おいしい、アキラの料理は相変わらずショートに似ておいしいね!」


「ん、んん~~!!

 ユリオ様、今回の肉は特に美味しいですな、特に鮮度がいいから、鮮度がいいから!!」


「うん、ラスカが町のみんなのために四牙イノシシを狩ってくれたことも僕の耳にも届いてるよ。

 このお肉もそうだけど、町のみんなもとっても感謝してくれてた。

 ありがとうね、ラスカ」


「ふ、ふん!

 それぐらい当然だ!何せ私はユリオ様筆頭護衛だからな!」


「まったく、この娘ときたら……

 ま、でも四牙獣の肉はおいしいのは確かですからね。

 そこの部分は褒めておきましょう、アキラ殿も突然の献立の追加に対応していただいて本当にありがとうございます」



さて、場面はあという間に達ち、すでに日も暮れかけ。

あの後何とかすでに決めていた料理に無理やり肉メニューを追加しつつ何とかみんなで晩御飯を迎えることができるようになった。

ラスカはユリオに褒められいろいろご満悦、モーリンも静かな顔をしながら食事を楽しんでいる。

ユリオも笑顔だし、文字通り雰囲気のいい食卓になって料理を作った自分としては満足である。

なお、一瞬主従は別々に食事をとったりしないのかと思ったがそれはユリオ様の一言でとうの昔にこの家では廃止になったらしい。



「ところでアキラの方はどう?

 今日も結構魔導書を読んでいたみたいだけど。」


「あ~まぁ一応簡単に使える呪文をいくつかは覚えることはできた?

 といった感じですね。まだまだ使いこなすには至ってませんが……」


「こ、ら!また敬語使ってる~~!!

 まったく、アキラはあくまで客人なんだから、もっと砕けた口調で話してくれてもいいのにねぇ」



なお、あのメイド霊事件以降ユリオはどうやら本当に元気を取り戻したようだ。

まぁ、その元気が戻ったせいで連日のユリオ様を元気づけるだけの依頼は亡くなってしまったが、代わりにユリオは自分ができる範囲で褒美をくれるといってくれたのだ。

それゆえ、とりあえず【情報】を集めたほうがいいと自分は判断したので、この家の本を自由に読んでもいいという許可をもらうことにしたのであった。

お陰で連日午前の仕事が終わり次第、ここの所毎日この領主の家にお邪魔しているというのがここのところのサイクルである。

なお、色々誤算であったのは、1つ目は自分が魔導書という響きだけでつられてしまい、長文を読むという行為が苦手であった事を忘れていたこと。

2つ目はそもそもこの家はいうほどの本は存在しないということ。

3っつ目はこの家の一番上のモーリンから一番下のユリオまで全員があわただしく働いているのにホンを読んでハイさよならと何もせず家に帰ることができるほど自分の精神が図太くなかったという事実だ。

おかげで、ほとんど給料が出ないというのに毎回この家に来るたびに晩御飯の用意をなぜか自分がする羽目になってしまった。

いや、料理人としては作ってくれたものをおいしそうに食べてくれるこの人たちに特別に文句があるわけではないんだけどさ。



「あ~あ、アキラがこの家に住んでくれたらもっと効率的に魔導書が読めると思うんだけどな~。

 ちゃんと定期的に料理を作るって確約してくれたら、給料もちゃ~んとだせるのにな~~」


「ふむ、それはいい考えです、丁度なぜか一部屋空いてますしね。

 今ならお洋服もついてますよ?大丈夫です、紺と白のフリル付きのかわいい作業着ですから」


「……いろいろ思うところがあるが、まぁ私としては反対はしない。

 正直、今のこの家にキッチン担当がいないのはいろんな意味できつすぎる。

 このジジィの料理はなんか地味な上にうまくない物ばかりで食っても力が入らんからな」



三方から熱い視線を感じるが、無視無視無視!!

流石に異世界TS転移して、チートの末に手に入れたものがお坊ちゃまのメイドさんルートとか乙女ゲーとかそういうレベルじゃないぞ。

あ、乙女げーにはもう一人男が必要か、ラスカさんをTSさせるか?

そうすれば小青老と選びたい放題だな、ってあほか!!



「む~、まったくアキラは強情だなぁ。

 丁度ショートの幼いころのメイド服もあるから、いろんな意味であうと思うんだけどなぁ」



それは呪われそうだから嫌です。



「……まぁ、けどどういう事情か知らないけど、アキラは冒険者を続けるつもりなんだね?

 うん、そういうことなら仕方ないね、けど怪我で引退したい時や冒険者を諦めた時は是非是非我が家で雇ってあげるから安心して冒険してくれたまえ!

 あ、けど死んじゃいやだよ?それと足は良くても腕は失ったら困るから気を付けてね♪」



めっちゃ不吉なことを言ってるんですけどこの子。

あれ?ユリオってこんな子だっけ?もっと薄幸の少年感があったはずなんだけどなぁ……



「ユリオ様がここまで元気になられてこのモーリン、感激の限りです!」


「うむうむ、流石ユリオ様。

 アキラもここまでユリオ様に期待されているんだから誇ってもいいのだぞ?」



どうやら、こっちが素の性格のようだ。

やだ、このままじゃぁ知らないうちにメイドとして囲われそう、いろいろ怖すぎるんですけど。



「……でもまぁ、アキラが冒険者を続ける理由はわからないけど

 アキラが情報を欲しているなら、今ちょうどいい依頼がここにあるんだ」



そういって、アキラは1枚の封筒をこちらに渡して、こう言ってきたのであった。



「アキラさ、ちょっとこの隣町までお遣いに行ってみてくれないか?」




現在のステータス

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


NAME:アキラ

Lv:3

ROLE:ネクロマンサー

HP:10/10

MP:3/4

状態:満腹


STR:2

TOU:2

MAG:6

MIN:3

AGI:6


SKLL:【死霊術 Lv1】

     【流浪人の加護】

     【調理 Lv1】


SIGN:≪スケルトン≫ MP-4


QUEST:≪メインクエスト:友だち100人できるかな?≫

      ≪サブクエスト・なし≫


ADVICE:メイド地獄も悪い場所ではありませんよ?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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