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さて、そんな華やかとも言えないがこんなで冒険者としてデビューして1週間ちょっと。
あれを機に行く先々で色々な依頼を頼まれる羽目になった。
そして、その結果……。
「あ!アキラちゃん、悪いけどこの後料理を作るの手伝ってくれない?
うちに団体さんのお客さんが来ていてねぇ……あ!報酬として特別にまかないも出してあげるからさ!」
「おら、アキラさんですか。
よろしければ今度うちの教会に来て、あの子たちと遊んでくれませんか?
皆さんあの時の物語の続きを楽しみにしているますよ。
報酬というわけではありませんが、今日はうちに泊まっていきませんか?
今日はなんとお風呂の日でもありますしね♪」
「あ!アキラじゃねぇか!!
この間教えてくれた博打、もう裏技がばれちまった!!
だから、もっと面白くてかつ俺にだけ絶対にばれない博打といかさまを教えやがれ!!
報酬なら払う!!博打に勝った出世払いで払うから!!!
……って、うわ!おまえら、ちょ、ちょっとカモにしただけなのに暴力は……ぬわ~~!!」
「……子供のお使いかよぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「言うてお前はガキなんだからそんなもんだろ」
やったね!ホームレスTS異世界転移幼女はホームレス小間使い幼女に進化した!
そんなアホな考えが自分の頭によぎった。
いや、わかっていたけど開拓者村といっても自分みたいなガキだとまともな仕事……俗にいう魔物退治みたいな依頼は受けられないらしい。
もっと正確に言えば、村の人が自分の顔を見て直接何かを依頼するという形のせいで、自分みたいなみため子供が仕事をくださいと言いに行っても、じゃぁゴブリン退治をしてきてと頼む酔狂なやつはいないということだ。
なお、自分がこの世界にきて初日に遭遇したあの小さな餓鬼とも子鬼とも言えそうなあれをゴブリンというそうだ。
実にべたであると思ってしまった自分は悪くないだろう。
「なーなー、ここは地獄なんだろ?
だったら、ガキでも死ぬ気でゴブリンの1匹を殺して来いとかそういうピンチなシチュエーションはないの?」
「あほ、下手な餌同然の雑魚を村の外に出したら、余計魔物をおびき寄せるだけだろ。
……それにあれだ、もし本当に魔物殺しとしての冒険者としてデビューしたいなら、俺は止めないぜ?
今すぐ町の外に出て、ゴブリンの首の1つや2つとってくりゃ、ほかのやつだってお前を曰く立派な冒険者として認めてくれるだろうさ。
まぁ、あいつらはたいてい集団で襲ってくるからお前みたいなガキが一人で突っ込んでも死ぬだけだろうがな」
「え~っと、この宿に泊まっているほかの冒険者パーティに自分を紹介してくれるとか……」
「は?なんでうちの飯のタネにお前みたいなお荷物を背負わせなきゃいけねぇんだ」
実にごもっともである。
なお、自分のステータスを信じるのなら自分はSKILLとやらのおかげで【死霊術】を使え、さらにいえばSIGNとやらの効果かはわからないが自分は≪スケルトン≫とやらを呼び出せることは確信している。
もしスケルトンがあの時のゴブリン相手に夢想した≪スケルトン≫なら間違いなく、異世界チート無双転生間違いなしだろう!
……が、無理だった。
なぜなら、MPが足りないからだ。
一度、深夜にこっそり≪スケルトン≫を召喚しようとしたのだが、MP不足のせいか、発動と同時に一気に意識が遠のき、まるで貧血や湯あたりの時のように気を失ったことは記憶に新しい。
次の日の朝はMP不足のせいで寝過ごした上にスケルトンは召喚されていなかった。
糞が。
「というかなんで突然、そんなこと言い始めた。
こういうのはめちゃくちゃ癪だがおまえはまぁガキにしてはそこそこ使えるやつだ。
ここでも足を引っ張らない程度には頭が働くし、ガキの小遣いとはいえ冒険者として収入も上げている。
それ以上何を望むんだ?」
「金と情報」
「死ね」
店主にすごくバッサリと切って捨てられた。
まぁ、そう店主が言いたい気持ちもわからんでもない。
この開拓村、どうやらあまり治安がいい場所とは言えず、具体的に言えば金を稼ぐ方法がなくやむ終えず村の外に出ることになった村人が次の日には屍で戻ってくるなんてことがよくある。
自分みたいなほぼ無一文なガキにも小銭ほしさに絡んでくる悪い大人だっているレベルだ。
そんななか、立場はほぼ孤児とかわらないのに町の外に出ることもなく安定して金を稼げる自分は相当恵まれているのだろう。
しかし、それでも自分は元大人で現代日本人としては、今の生活にはいろいろ耐え難いことがある。
具体的には元の世界に戻るすべか性別を元通りにすべを見つけたい。
そして何よりも大事なのは……
「今やってる子供のお使い程度の依頼じゃ、宿代というなの倉庫暮らしだけで1銭もお金がたまらないんだよ!
装備が整わなきから魔物の倒せないし、経験値が入んなくてMPが上がらなくて魔法も使えない!
せめて、せめて、普通の普通のスカートじゃない服が買えるだけの金がほしいいぃぃぃ!!!」
「うるせぇ!!妄言がうるさい上にその服に文句あるんならひん剥いて表につるすぞ!!」
そうして、しばらく店主と宿の食堂で口喧嘩を続ける。
周りからやれやれ仕方ないって感じの視線を複数感じるがこちらとしては死活問題なのである。
「……っち、ならわかった!おめぇにぴったりな、今までの倍の報酬は出る依頼を紹介してやる!!
だから受付でそうわめきたてるのやめやがれ!」
「まじで!店長愛してる」
「た・だ・し、これは俺が紹介できる、マジで大事な依頼ってやつだ。
もし失敗したら、お前も俺のただでは済まない。
ガキでも女でもマジで関係ねぇ、失敗したら死ぬ、冒険者の常、いや、これはゴブリン討伐よりも厳しいかもしれねねぇな。
……それでも、やる覚悟はお前にあるか?」
いつになく真剣な表情で店長がそう、こちらにそう問いかけてきた。
……確かにあの時の集団のゴブリンを思い出し、あれ以上と聞いた瞬間、自分の本能が警報を鳴らしてきた。
が、しかし、それでもそれでも恐れていては何も始まらない。
なおかつ、この店長なら自分を無策に殺すような依頼は受けさせないだろうという打算も交じって答える。
「……報酬はたんまりともらうぞ?」
「っは!いうじゃねぇか。
それは自分で交渉するんだな、それじゃぁさっそく、商談成立だ。
後でぐちぐち文句を言うんじゃねぇぞ?」
「……で、今日はどんなお話をしてくれるの?」
「あ~、そうではとりあえず動物が主役のお話とお姫様が主役のお話、それとさむら…いや、とある冒険者のお話がありますね。
やっぱりユリオ様は男の子ですから最後のがよろしいですかね?」
「うぅうん!別に冒険者のお話でなくても、僕はアキラが話すお話は全部好き!
だから、一番面白いのから全部話して言ってよ!いいでしょう?ね?ね?」
さて、今自分がいるのはどうやらこの町を治める領主様の家。
そして依頼内容は、そこに住む領主のぼっちゃん【ユリオ】様の遊び相手をせよと言う物であった。
相手は目上の者だけど、まだまだ子供な上いろいろ多感な時期。
その上最近はいろいろ気に病んでるみたいだから何か楽しませてあげたい、だから最近何かと町の子供や暇人相手に何かと評判になっている自分が呼び出されたという次第だ。
どういう評価だそれ。
けどまぁ、依頼主は領主様だからか今までとは段違いの報酬だし、行くたびにこの家で面会前に身を綺麗にさせてもらえる。
そういう意味では報酬もいいし生活水準も上がるし、なかなかに一石二鳥の完璧な依頼なのであろう。
「……でも、これどう考えても相変わらず冒険者の仕事じゃないよなぁ……」
「ねぇねぇ、それよりも早く次の話、お話をしてよ!」
あぁ、ユリオ様の期待を孕んだ無邪気な笑顔がこの似非TS幼女にはまぶしすぎる。
せめて、ユリオ様が幼女だったらいろいろとご褒美だったのになぁ。
そう思いながら、まぁ不敬罪で村から追い出しならないように少年でも楽しめそうな童話や遊びを何とか頭からひねり出し続けたのであった。
現在のステータス
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NAME:アキラ
Lv:2
ROLE:ネクロマンサー
HP:8/8
MP:3/3
STR:1
TOU:1
MAG:4
MIN:2
AGI:3
SKLL:【死霊術 Lv1】
【流浪人の加護】
SIGN:≪スケルトン≫ MP-4
QUEST:≪メインクエスト:友だち100人できるかな?≫
≪サブクエスト:なし≫
ADVICE:……冒険しないの?
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