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自分ことアキラは元々普通の日本男子学生であった。
別に超能力も魔法も使えない、あえて言うなら女や非日常にあこがれはするもののだからと言って何をするわけでもないごくごく普通の人間。
別に恥ずべきことではないがこのまま何もなしで成長して、きっとどこにでもいる大人になるというのをなんとなく察している。
そんな普通を具現化させたような人間だった……はずだ。
『ここは希望の町 エデラント!
××魔王を破り、この世に光と希望を勇者××××がかつて駐屯していたとされる町です!
この町は魔王がなくなった今、勇者の遺志を継ぎ我々一般人が開拓し、発展させる人魔最前線ともいえる町のひとつです!!
もちろん、今回の開拓プロジェクトには国王も積極的な支援を約束してくれています。
そのため、この町にはたくさんの資金と新たなる雇用が充実しております!
さぁ!魔王を倒して名を上げようとしていた方々も仕事がなくて困っていた人もこの国のためにならんという強い意志を持つ方も!
是非是非この町にお越しください、次の新時代の勇者はあなただ!!』
「……」
「おい、嬢ちゃん。
そのチラシをじっと見つめてどうした?
というかお前、字が読めるのか?読めねぇんなら俺様が代わりに読んでやろうか?
まぁ、金はとるがな!!」
「……読めてるつもりだけど。
というか、おじさんの方こそ読めるのか?」
「バカにすんなよ。
そんなの見なくても何が書いてるかなんて……
簡単だ、【地獄にようこそ!!】だ!」
それが何の因果か、名前も知らない世界で死んだような目をした幼女をやる羽目になっているから人生とはわからないものだ。
原因不明の奇妙不可解に異世界に来て、そのままたまたま町の周りを見張っていた警備隊に拾われこの宿に放り込まれて早数日。
まだまだわからないことだらけだが、少しだけわかってきたことがある。
例えばここが日本でも地球でもないどこか、いうなれば【異世界】ともいうべき地球に半端に似ていながら、本来の地球では考えられない法則にまみれている世界にある事。
自分がなぜか謎の存在の影響を受けてこの世界に来て、なぜか童女の姿で……まぁ、俗な言い方をすれば【異世界TSチート転移】とでもいう変な状態に巻き込まれていること。
そしてその中でも自分がはとんでもなく糞みたいな場所にきてしまったということだけだ。
「わりぃがこちらも仕事だからな。
とりあえず、今はおめぇが拾ってきた【剣】を担保に泊めてやってはいるがあと数日で出すもんだしてもらわなきゃ、こちらとしてもおまえには野宿やらゴブリンのエサになってもらわなきゃならねぇ。
だからそろそろ働け、いいな?」
「こんな幼女に働かせるとはなんという鬼畜。
この世界には労働組合とかそういうのはないのか」
「っけ!この時代、孤児には事欠かないからな!!
おめぇより小さいガキがぼろナイフぼろナイフ片手に遺品集めなんてことはこの辺じゃめずらしくもねぇからな。
……まぁ、お前みたいな気がくるってる餓鬼でも娼館なら受け入れてくれるだろう」
「は~い★
今ならここにいるカワイイ幼女があなたの宿でウェイトレスをしてあげますよ?」
「っは!自称元男のくせにこういうときだけネコかぶりやがって。
あともう少し年相応の愛嬌と記憶を取り戻してからいうんだな!」
う~む、実につれない。
この店主、あの剣だけで自分のような中身男のどう見てもやばい子供を泊めてくれるくらいにはいい人なのは間違いない。
が、まぁそれでもだいぶ現代日本よりも、見た目子供で相手が孤児の類であろうときちんと金を請求してくる辺りシビアで現実的な考えの人だ。
見た目子供でカワイイ幼女だからと甘やかされチートの類はできないらしい。
なのに、こちらのことを【親族を亡くして、精神的ショックのせいで気が狂い自分は男だと勘違いしてしまった厨二病に患ったホームレス幼女】と勘違いしているようだし。
さらに言えば、この宿限定でそれは共通認識のようだし、元男だとか大人だといっても酒を飲ませたりはしてくれない。
糞が。
「くっそ!!異世界なら異世界で【冒険者】とか【魔法使い】とか!!
そういうロマンあふれる仕事はないのかよ!!」
「なんだ?おまえ、あんな命知らずな仕事に就きたいのか?
やめえておけ、お前の見た目なら娼館でおっさん相手にへこへこしてるだけでなんと銀貨が3枚以上ももらえるかもしれねぇんだぞ?
半端に賢いお前さんなら、ぼちぼちいい値段はつくかもな」
「やだよ。梅毒にかかって死ぬのはごめんだね。
この世界に性病があるかは知らんけど」
「ガキのくせに相変わらず変なことだけはしってやがるな、けどこの町の娼館はそこそこチェックが厳しいから大丈夫だとは思うが……。
まぁ、けど冒険者か。うん、それもいいんじゃないか?」
異世界にも梅毒はあるらしい、実に勉強になった。
異世界にもいる梅毒は何物なんだろうと思ったが、異世界にも人間はいるんだから梅毒ぐらいあっても問題ない……ないのか?
それはさておき、店主はこちらに一枚の封筒と硬貨数枚を放り渡してきた。
「ほれ、それじゃぁさっそくお使い依頼の依頼だ。
その封筒を教会にいる、メリーラさんのところまで届けて来い。
報酬はその硬貨だ」
「……いろいろ言いたいことはあるけど
とりあえず、冒険者ギルドとかそういうものに登録とかは?」
「ならず者一歩手前の冒険者のためのギルドとかしゃれたもの、この町にはもうねぇよ。
だから、あきらめてその封筒をもって教会に行ってこい。
運が良ければ、そこで薬草拾いなんかのお仕事を紹介してもらえるかもな」
「……」
「なんだ?たった10bだと依頼すら受ける気になれねえってか。
仕方ねぇな。ほれ、追加報酬の黒パンのサンドイッチだ。
切れ端肉としなびた根っこが入ってるくそったれなやつだがな」
「……わかったよ。
行けばいいんだろ行けば」
なんか釈然としないものを感じながら、こうして自分は子供のお使いという名の異世界での冒険者デビューを開始したのであった。
……なお、別に肉につられたわけではない。
わけではない。
なお空はむかつくほど澄み渡る青空で周りはまだできたばかりだからなのかどれも拙くとも新築ばかり。
活気あふれているというか、地に足がついていないとかそんな町である。
新築以上に具体的にはホームレスとチンピラにもあふれている、こう見ると幼女なのに宿に止めてる自分はかなり幸運なのでは?
「そういえば……」
ふとある事を思い出し、頭でそれを念じてみる。
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NAME:アキラ
Lv:2
ROLE:ネクロマンサー
HP:8/8
MP:3/3
STR:1
TOU:1
MAG:4
MIN:2
AGI:3
SKLL:【死霊術 Lv1】
【流浪人の加護】
SIGN:≪スケルトン≫ MP-4
QUEST:≪メインクエスト:友だち100人できるかな?≫
≪サブクエスト:なし≫
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「……結局何も変化は無しかぁ」
若干、もしかしたらステータス、特にクエスト欄が変化していることを期待したが特に変化はなし。
結局、このステータスとやらは何だろうか?
そう疑問に思いつつ、やたらゴムより固い黒パンの挟まれた噛み切れない脂身ばかりの肉を食べながら件の教会とやらへと向かっていったのであった。