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プロローグ


「え」



ある日目が覚めたら、周りは血の海でした。

脈々と広がる死骸の山、周りに浮かぶ無数の蠅と蛆。

空は薄暗い暗雲が広がり、いやが応にも鉄と土とむせかえるほどの腐臭が鼻腔内に広がった。



「は?」



わけがわからず、思わず自身の状態を確認しようとする。

しかし、するとわかる自身の手小さくなっているという事実。

手だけではない、足も視線も身長もおおよそすべてが小さくなっている。

本来股間にあるべきものまでなく、いわゆる自分が女性に、いや童女になっていることに気が付いた。



「……嘘だろ」



恰好はぼろ着で、靴すら履いていない。

体もドブネズミのように汚く、手には爪先まで泥にまみれている。

おおよそ、自分がなぜこのような目にあっているのか?そもそもここはどこなのか?

いくつもの疑問が頭に浮かぶ。

もちろん、これらを全部夢だと断言して現実逃避してもよかっただろう。

……しかし、この過酷な状況がそれを許さなかった



「いたっ!!いたっ!!

 べ、別に敵じゃないから!!邪魔しないから!!やめて!!」



そう、死体に群がっていた無数の『カラス』や『ドブネズミ』がこちらめがけて襲ってきたのだ。

そのくちばしによる攻撃が彼(彼女)に休む暇も、思考する暇も、逃げる暇すら与えてくれない。

何もわからず突如か弱い童女となった自分にできることはただただ小さくしゃがみ、その無慈悲な刺突は止むのを待つだけであった。

無論、普通に考えればそれは愚策であろう、なぜ何もせずに本能のままに動く獣が逃げもしない弱者に加減など考えるだろうか?



「あれ……?」



だが、こちらの予想に反してカラスの攻撃に反してカラスたちはあっさりと攻撃を続けることをやめバサバサとどこかへと飛び去った。



「もしかして助かっ……ひぃ!」



が、それは所詮、新たな地獄の始まりに過ぎなかった

自分の目に映ったのは無数の人外畜生の群れ。

人のようで人でない、獣のようで獣でない、まさに〔子鬼〕や〔餓鬼〕とも見える化け物達がこちらに迫っていたのであった。

もちろん、あんなのに襲われるのはごめんだから、一目散に逃げだそうとしたさ。

……が、当然子供の体に傷ついた体、足場は無数の躯が足をからめとろうとする中まともに逃げられるわけがない。



「……っ!!」



もちろん、あっという間にその化け物群れには追い付かれた。

もしかしたら、化け物には理性があってこちらを見逃してくれるかもしれないだって?

それは無理だろうな、だってやつらの口からは無数の唾液が垂れ流しになりその漆黒の眼には一切の理性の光が感じられないのだから。



(だれか……助けて……!!)



絶体絶命の恐怖、避けられない死。

そんな状態に陥って最後に思い浮かんだ思考。

それは、恐怖でも闘志でもない、ただの祈りであった。

誰に対するでもないが誰かに対する、究極の他力本願、情けないと思うかもしれないがある種人の人たる根源はそんな神秘や無いものに対して希望を見出してしまうことなのかもしれない。



―――― 一閃


「ぎぃ?」



そして、その祈りは届いた。


そこにいたのは1人の骸骨。

どこに隠れていたのか、どこから現れたのか。

いつの間にか躯の山に立ち、まるで指揮棒でも振るうかの如くその手に持つ剣振るい、まるで当然の権利のように餓鬼の首を切り飛ばした。



「ぎぃぎぃ!!」


「ぎぎぃ!!ぎ……ぎゃぁぁぁぁ!!!」


「ひぃ!!」



そう、そこから先は一方的な虐殺であった。

一見すると唯のひょろ長い筋も肉もないその人骨は、どのような奇跡か呪いか、まるで踊るかのように数多の死体の上で踊り始めた。

その手に持つ剣の軌跡は優雅にして残酷。

骸骨が剣を一振りすれば、餓鬼どもの首が複数飛ぶ。

剣舞とはこのようなことを言うのだろうか?

そんなことを彼が考えていると、さすがに餓鬼どもは分が悪いことを悟ったのだろう。

10を超えるその餓鬼の群れは蜘蛛の子を散らすかのように逃げて行った。



「あ……」



余りの目まぐるしい、目も前の光景の変化に思わず呆けてしまった。

しかし、その剣鬼ともいうべき骨が目の前までやってきたことで現実に引き戻される。



「あ、えーえっとその……え?」



お礼を言うべきか逃げるべきか、どうしようか迷っている間にその骨に手を掴まれる。

骨は無言のままこちらの手を引き、どこかに連れて行こうとする。



「え、えーっと、その……もしかしてだれか安全な場所まで連れてってくれるとか……ない?」



自分の願望ともいうべき予想を言った。

が、なんとその予想は当たったらしい。

骸骨はこくりとうなずき、そのままこちらでもついていける速度でゆっくり、手を取ったまま歩いてくれる。



「やった!ありがとう!!」



表情は見えないが、その骸骨、ばつが悪そうに笑ったような気がした







「ふぅ……ふぅ……」



さて、何時間たっただろうか?

やはり、この体、只の童女のようで体力は余りないようだ。

あの後、数時間歩いき続けたわけではあるが、今ではすっかり息が切れ、そのたびにこの骸骨は止まてしまっている。

助けてもらった上に迷惑をかけるだなんて、申し訳なさ過ぎてこの骸骨には一生頭が上がらないだろう。



「けど……おかげでようやく……!!」



そう、なんと眼下にはいくつかの建物が見えた、つまり人里まであと少しというところまでついたのだ。

その集落は決して大きくなく、どこか木の柵や石垣が時代錯誤な古臭さを感じさせる。

ここはもしかして、自分の知らない世界なのでは?もしかして異世界転移とかそういうなのでは?なんていう考えも浮かびはする。

だが、そんなものは長く歩いた疲れとようやく安全な場所まで行けるであろう安堵の前ではゴミみたいなものであった。



「よし!それじゃぁ、あと一息だ!行こう!」



そういって自分を奮い立たせる意味でもそう宣言して、骸骨の手を引き彼(彼女)は共に人里に入ろうとする。

が、その夢は叶わなかった。



「……え?」



その骸骨はその場から一歩も動かなかった。

いや、動けなかったのだ。

なぜなら、その骸骨の足はまるで波に流される砂のようにさらさらと消えて行っていたからだ。



「ちょ!ちょっとまって!!

 こんな、ど、どうして!!まって!!まだ、まだ、いろいろ聞きたいこともあるのに!!」



しかし、その叫びもむなしくその骸骨の体はどんどん塵へと変わっていく。

初めは下肢だったのが、次第に太腿、腰としたからどんどん消えていく。



「あー、えーっと、その……!!

 あー!!あー!!」



もうこの骸骨の崩壊は止められない。

そう悟ったからには、何とか最後に骸骨に何を聞こうか考える。

なにせ、いきなり見知らぬ場所で見知らぬ体で放り出されていたのだ。

さらに言えばこの骸骨がなぜ助けてくれたのか、そう、聞こうと思えば聞くべきことはたくさんあった。

そうして、その限られた時間の中で最後に骸骨に放つ言葉は……。



「あ、ありがとう!!」



純粋な感謝だった。



「な、なんにもわからないけど、あなたが誰かも知らないけど!!

 おかげで死なずにここまで来れた!!だから、ありがとう!!」



おそらく、それは賢い選択でないことは重々理解している。

しかし、あの地獄のような状況から、まさしく身を粉にしてまで助けてくれたのに礼を言わないのはあまりに人道に反することではなかろうか?

だから言った。

そして、向こうにもそれが伝わってくれたのであろう。

ぽりぽりと居心地悪そうに頬を掻いた後、ほとんど消え去っているその身でこちらの手をその骨だけの手でやさしく包んでくれた。

骨だけのはずなのに、なぜかその手は暖かい気がした



「あ……」



……そうして、その骸骨はその手に持っていた一振りの剣を残して消えた。

彼が何者なのか、なぜ消えたのか、ここがどこなのかも何もかもわからない。

しかし、さっきの一瞬だけあの骸骨の彼と自分の心は通じ合えた。

そんな気がした。









≪サブクエスト・初めてのお友達 達成!! メインクエストが更新されました!≫

≪あなたは【契約】に成功したことにより、経験値10を習得した!≫

≪あなたのレベルが2に上がった!!≫



「は?」


やけに場違いなファンファーレとともにまるでゲームのような文字が頭に突如浮かび始めた。

思わず、口から変な声が漏れる。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


NAME:アキラ

Lv:2

ROLE:ネクロマンサー

HP:0/8

MP:0/3


STR:1

TOU:1

MAG:4

MIN:2

AGI:3


SKLL:【死霊術 Lv1】

     【流浪人の加護】


SIGN:≪スケルトン≫ MP-4


QUEST:≪メインクエスト:友だち100人できるかな?≫

      ≪サブクエスト:なし≫


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「……レベルが上がったんなら、HP全快するくらいのサービスはくれや」



目も前にステータスが現れて、自分の疲労を痛感したからだろうか、はたまたは度重なる非常識ゆえか。

昔男現在幼女の自分の体と意識は静かに暗転していったのであった。




元青年系ネクロマンサー幼女≪アキラ≫

異世界TS転移ですけどめげずに頑張ります!

息抜き1人称文章です

続くかどうかは知らん!


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