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勇者のスペア ー魔剣使いの人生譚ー  作者: 黒崎こっこ
エルフィア孤児院 少年期
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第十四話 リーダーの器




 何事もなくアンジェの初陣は終了した。

 初の本格戦闘で、魔獣級二体。滑り出しは上々と言えるだろう。

 セレナは初陣で十体くらい薙ぎ倒していたが。

 俺の初陣?

 魔獣級を一体殴り倒しただけである。

 魔法を使う暇もなかった。


 ひとまず休憩だ。

 へなへなと座り込んだアンジェに、セレナが飲み物を手渡している。

 本当なら、この後魔物から討伐証明部位と素材になりそうな部分を剥ぎ取る作業があるが、今回は俺が一人で行うことになった。


 戦闘に参加したのは五人。

 そして一体も討伐してないのは俺だけだ。

 どれだけ魔物を追い詰めても、倒したのは俺ではない。

 ゼロはゼロである。

 仕事をしてない人間が後片付けをするのは道理だ。

 だから俺は黙々と作業をする。

 決して理不尽などと思ってはいない。

 大人なので文句も言わない。


 まあ正直、魔物の皮とか牙とかを剥ぐ作業は、臭いも見た目も触感も色々とキツイものがあったりする。

 血とか内臓とか胃袋の中身とか。

 これも今のうちに慣れておきたいことではあるので、訓練と思えば……


「……おぇっ」

「情けねぇなぁエル。かしてみ」


 トミーにバトンタッチし、俺はよろよろと木陰に座り込んだ。

 前世でも、俺は『もし自分がこういう傷を負ったらどんなに痛いか』などという妄想をたくましく膨らませる類のヒトだった。

 酷い時には、手にこびりついた血が自分の血に見えてくるほどだ。

 あかん、ちょっと吐きそう。


「エル、さっきのって何ていう魔法なんだ? 水が地面から噴き出たやつ」


 隣にクレイが座ってきた。

 俺は死んだ魚のような目で彼を見る。


「……ただの『水塊』の魔法です」


「それって、ただのでっかい水の塊作るヤツじゃなかったっけ?」


「地下に水を膨らませて、土の重みで圧力をかけた状態に熱を加えて水蒸気に変えて地面にヒビ入れて破裂させたんです。たしか噴火と同じ原理だったはず」


「噴火ぁ? 山が爆発するアレか?」


 クレイが首を傾げていた。

 トカゲを吹っ飛ばした水の爆発は、そんな難しい原理でもない。ただ『蛍火』の熱量を水の加熱に回し、気化させて、セルフ水蒸気爆発を発生させただけだ。

 おかげで火球本体は毛ほどのダメージしか与えられなかったが、魔力の大幅な節約には繋がった。

 ……よくよく考えるとこれって微妙に複合魔法っぽいが。

 蒸気を作る火と水の複合魔法もあるし。

 しかし今、わざわざそんなことを解説するような気力は俺にはないのだった。


「はい。ちなみにこれ以上話すと俺の胃袋も噴火します」


「吐くならあっち向けよ!?」


 頭を鷲掴みされて、ぐりんと首ごと方向を変えられた。

 吐き気は何とか呑み下した。



 トミーがトカゲの死骸を捌き終えたころ、女子が戻ってきた。


「ふぃー……ただいま帰りましたよっと」

「おーうミミ、おかー。どう、花はいっぱい摘めたか?」

「そりゃもう大量に。デリカシーのない君に特大の花束を見舞ってあげよう」

「冗談だってちょっ待っぶごぅっ!」


 どこから戻ってきたかを述べるのは野暮というものだ。

 うっとうしい虫を叩き落とすような仕草でクレイを吹っ飛ばしたミシェルは、やつれた表情で俺の隣に座った。


「やれやれ、疲れちゃったよ」

「お疲れさまですミミ姉。レイ姉とエルシー姉は……あー」

「ん、見ての通りさー」


 ミシェルが指した方向。

 少し遅れて、魔法使いの少女二人も帰ってきた___レイチェルとエルシリアだ。

 先の戦闘では影も形もなかった女子であるが、その間どこにいたかというと、


「大体レイ姉さんは何でもかんでも世話焼きすぎだよ、子供たちにも自分で学び取らせるのが大事なんじゃないか!」


「それは時と場合によるものでしょっ。大体エルもセレナもアンジェもまだ七歳なのよ! 今はまだ厳しくするべきじゃないわ」


「あーそうだったね、レイ姉さんはちやほやされて育ったものね! 魔術の才能があったから!」


「それは今と関係ないでしょーが!」


 ご覧の通りだ。

 お前らいつまでケンカしてんだと言われるとぐうの音も出ない。実際トカゲも騒がしい彼女たちに引き寄せられてきたわけで、戦闘の只中でも露払いを周りに任せたまま口論をやめず、魔法使いとしてやるべき仕事の一切を放棄していたのだから。

 無防備にケンカを続ける二人に寄ってきたトカゲを片っ端から追い返したのはミシェルである。

 雑魚とはいえ、処理を俺たちに丸投げってのはどうかと思うが。


「……やれやれ、まだやってたか」


 作業を終えたトミーが、血のにじんだ袋をぼすんと俺の隣に放ってきた。俺は女の子のような悲鳴を上げてその場を飛び退いた。

 トミーは手を水魔法で洗いながら、二人の女子の方へ向かう。


「おい、そこら辺でやめとけ」


「トミー兄さんは関係ないだろ、口出さないでよ!」


「部外者は引っ込んでなさいよ!」


「俺だってお前らのケンカに顔突っ込むのは御免だけどな。とりあえずあっち見てみ」


 トミーが指した方向に、二人はまなじりを決した顔のまま視線を向ける。

 ……なんで俺の方見るんですかね。


「エルな、さっきまで、心底呆れ果てた顔でお前たちの口喧嘩眺めてたんだぜ」


 ぴしりと女子が固まった。

 いや待て、何を言い出すんだ。


「あの、ちょっとトミー兄?」

「ケンカする女子とか見てらんないね、とか言ってたな」

「止めろ矛先こっちに向けんな!?」


 冗談じゃない。

 そんなこと言って二人がブチ切れて魔法を飛ばしてきたらどうすんだ。

 レイチェルはすでに火の上級魔法を使えるし、エルシリアの魔法の多彩な使い方は俺を凌駕する。

 俺なんぞ消し炭すら残らんだろう。

 ひとまず、俺はいつでも『流砂』の詠唱を始められるよう身構えていたが、女子たちはぷるぷる震えたかと思うと不意に肩から力を抜いた。


「……一時休戦だね」

「そうね。続きはまた今度にしましょ」


 ふぁええ?

 なんでそうなるんだ。

 いや、別に消し炭になりたいわけではないが。

 二人のケンカの消火には、シェイラ母さんですら手を焼くほどだというのに。


「お前なら分かるだろ、エル」

「クレイ兄さん……?」

「男ってのはな、背中で語るもんだ」

「……??」


 それでも意味が分からない俺は男ではないのだろうか。

 呑気に首を傾げているうちに、切り替えは早い二人の魔法使いはあっという間に身支度を済ませて班の先頭に立った。


「討伐任せっきりにしちゃってごめん。次は私たちががんばるから」


「まとめて吹っ飛ばしたげるわ」


「訓練もクソもなくなるからやめい」


 申し訳なさそうなエルシリアと謎のドヤ顔をするレイチェルに、クレイが珍しくまともな正論を言った。

 やれやれ世話の焼ける、と呟くトミーに、実際あんた何もやってないでしょと突っ込むミシェルの一言も合わせて、険悪な雰囲気は霧消する。

 もう、これだけで彼らは元通りだ。

 なんの後腐れもなくいつもの調子に戻る。


 戦いをほっぽって喧嘩など、社会に出れば無責任すぎて論外だが、裏を返せば、背中を任せた仲間に対する信頼の表れでもある。

 血も繋がっていない家族だが、だからこそその絆は強い。

 なんとなくうらやましい。


「……ん。える、なに?」

「や。俺ももっと強くならんとな」


 首を傾げるセレナに、俺は頭を振る。

 俺たちもこんな風になれればとは思うが、残念ながら実力が釣り合っていない。

 俺はまだ弱すぎる。


 だが、時間がないわけでもない。

 やるべきことも変わらない。


 と、まったくブレずに前を向く思考をふと自覚して、俺は苦笑した。

 俺はいつからこんなストイックになったのだろうか?


「さっきのトカゲは偵察だと思う。たぶん巣はそう遠くない所にあるよ。今日中に見つけちゃって、一気に叩いちゃおう」


 打って変わっててきぱきとしたエルシリアの指示に、俺たちはこくりと頷いた。




 ***




 それからは何事もなく。

 トミーとクレイが斥候として先行し、前衛の代わりをアンジェとセレナが務める索敵の基本訓練を行ったり、俺はミシェルから退路の確保、背後への警戒の仕方を教わった。

 獣道や糞の跡から魔物の住処を推測する訓練もした。


 実に順調なクエスト進捗である。

 強いて問題を挙げるとすれば、余りに順調すぎて、トカゲの巣も見つからないまま夜になってしまったことか。


 ここでまたしても喧嘩が始まった。


「今日はもう引き上げるべきよ。エルたちに夜間戦闘は早いわ」


「まだ僕もレイ姉さんも魔力に余裕あるし、雲一つない、星明かりで十分見えるじゃないか。まだ探索は続けられる」


「私たちは問題なくても下の子が消耗してるじゃない!」


 小さな木陰で、俺たちは一時休息を取っていた。

 俺が作り出した小さな焚き火を囲むように面々が座っている。俺はセレナと一緒に武器の手入れをしているところだ。

 アンジェは俺の膝を枕にして横になり、トミーとクレイとミシェルは代わる代わる見張りについていた。

 今はミシェルが見張りになっている。

 焚き火を挟んで向かい側、口論しているのがレイチェルとエルシリアである。

 依頼を続行するか中止するか判断しかねているようだった。

 日は地平線の向こうへ沈み、やはり視界は格段に悪くなっている。不慮の事故を避けるためにも、ここは一旦孤児院に引き上げた方がいいとは思うのだが……


「んー、俺も引き上げに一票だな。ちょっとアンジェが消耗してるし」

「私は全然大丈夫だしっ。まだ行けるよっ」

「強がんなよ、ふらふらじゃねえか」


 アンジェを気遣う年長男子二名も同じ意見のようだ。彼ら自身はまだまだ戦えるだろうが、問題は当の少女である。

 今日が初陣ということもあり、体力的にも精神的にも、負担は大きかったはずだ。

 まだ行けるなどと空元気を振り絞っているものの、本音は早く孤児院に帰って寝たいといったところか。


「……ふぁーあ」


 唯一、最も元気の有り余っているミシェルは少し離れた所であくびをしていた。

 余裕の顔だ。

 無論サボっていたのではなく、いざというときに退路を開くため、体力を温存しているだけである。

 元々体力がある方ではあるのだが。

 多少探索時間が伸びても、彼女のやることに変わりはないのだ。


 反対票が一人増えたことで、エルシリアは少しだけたじろいでいた。


「う……でも、今日中に依頼を達成しないとダメだ。ここまで来たじゃないか。また明日に出直すとなると……」

「死んじまったら明日もクソもないんだぜ、エルシー」


 クレイがにべもなくそう言った。

 でも……と尚も泣きそうな顔で反論しようとする少女。クレイはがしがしと頭を掻いたあと、俺の方を見た。


「エルはどう思う?」

「俺に振りますか」


 困った時の逃げ道に使わんでほしい。

 実際、どちらの言い分も分からないでもない。


 孤児院における食費等の出費はシェイラの伝手で術導院から出されているが、もちろんそれだけでは十数人が暮らす孤児院を回すことは不可能だった。足りない分は術導院の依頼を受けるなり何なりで補填する。

 が、最近まで稼ぎ頭だったダンたちは卒業に向けて資金を集め始めた。

 次の年代、トミーやクレイ・エルシリアが孤児院の出費を賄わなければならない。

 世代交代である。


 しかしここで、俺たち年中組の実戦訓練も始まった。

 トミーたちの能力は素晴らしく高い基準でまとまっているのだが、この時にはまだ彼らだけでパーティを組んだことはなかった。

 まだ練度の低い暫定パーティで、俺たちのような足手まといを連れ歩きながら金稼ぎをしなければならなくなったのだ。

 今まではダンが臨時リーダーを務め、暫定ながら形もにはなっていたが、まだリーダー経験の浅いエルシリアではこの尖りまくった個性の集団みたいなパーティををまとめるのは難しいだろう。

 実際、パーティ内での対立を諌められずにこんな無様を晒している。


 ちょっと話が逸れた。

 簡潔に言って、なぜエルシリアが多少の無理を押してでも依頼を続行しようとしているかというと、金が足りないのだ。

 俺は知っている。

 昨日の夜、エルシリアは夜遅くまで孤児院の家計簿とにらめっこして、達成しなければならないノルマを一生懸命計算していた。

 多分今日は、最低一つは依頼を達成しないとおかずが一品無くなったりするのだろう。

 考え無しに物を言う子ではない。


「俺はエルシー姉さんに賛成です」

「……マジで?」

「はい。トミー兄とクレイ兄の言うことも、よく理解はできますが」


 実を言うと、話が振られなかったとしても俺はエルシリアを支持するつもりだった。

 当然だ、実情を知っているのに黙っているなんて何のイジメだ。

 これで俺かセレナのどちらかが大怪我でもしていれば話は違っただろうが、俺は魔力の節約訓練も兼ねて戦っていたのでまだ余裕がある。セレナも、矢が二本しか残っていない以外には何の支障もなさそうだ。

 一つ心配なのはアンジェだが、ミシェルのカバーで何とかなるだろう。


「夜間戦闘はまだ早いと思うが……どう戦うつもりだ?」


「いえ。これから俺とセレナは戦闘には参加せず、アンジェを守ることに徹します。実戦訓練は終了ってことで。ミミ姉さんは後ろのカバーをお願いします」


「ん」

「えっ、私戦わないの?」

「まかされたー」


「他のみなさんで、できるだけトカゲを倒すことに専念するってことでどうでしょう」


 トミーとクレイは眉を寄せていた。

 あれは一言物申したいって顔だ。

 レイチェルは腕組みをし、しばらく考えを巡らせてから俺を見る。


「つまり、ノルマ達成を最優先ってことね」


「そんな感じです」


「考えは分からんでもないけどな、アンジェ守るったってお前、もう魔力ないんじゃないか? あんなバカスカ撃ってたろ」


 クレイが険しい顔で言う。

 俺の剣の腕はあまり考慮されていないようで、少し悲しい。


「いや全然余裕ですよ」

「へぇ。具体的にどんくらい残ってる?」

「大体七割くらいですかね。割とセーブして戦ってたので」


 途端に兄貴二人が目を剥いた。

 そんな驚くことか。

 まあそうだろう。

 魔法改変で色々と弄れるようになってからは、いかに俺の少ない魔力を有効活用するかと考え続けてきたが、今回はなかなかに良い結果となった。

 ド派手に魔力大放出してるように見えたとすれば、今日の実験は大成功と言える。


「七割って、嘘だろお前、序盤から遠慮なくぶっ放しまくってたじゃねえか」

「手から足から口から尻からぽんぽんな」

「口からは出しましたが、尻からぶっ放した覚えはないです」


 それはあまり突っ込まないでほしい。

 分掌技法という技術だが、今日はそれだけ上手く行かなかったのだ。

 通常、心臓から腕を通す魔力回路を、他の部分でも通せるようにする、言ってしまえばそれだけのものである。

 足から風魔法を出して推進力にしてみようと思っていたが、普通に無理だった。

 方向転換も速度制御もままならずに地面へダイブする羽目になり、両腕に超特大の擦り傷を負った。

 今も両腕は包帯でぐるぐる巻きである。

 そろそろ取っちゃダメだろうか。


「まあ、俺の提案はそんな感じです」


「……俺は引き上げた方がいいと思う」

「俺もだな」

「私も。二次災害は避けるべきよ」


「えるとおなじ」

「わ、私は保留ってことで……」

「あたしもどっちでもいーよ」


 続行に二票、撤退に三票、保留に二票。

 とりあえずセレナはもう少し自分の考えを持っていただきたい。

 同じでいいのは水浴びまでだ。


「うー……」


 年長組の大半が続行に反対していることに迷っているのか、エルシリアは困り果てた顔で考え込んでしまった。

 レイチェルはまだ何か言いたそうな表情をしている。

 これ以上は口を出すべきではないが…。

 仕方がないので、最後の助け船だ。


「エルシー姉さん」

「……何だい?」

「リーダーは、エルシー姉さんです。俺でもレイ姉さんでもありません」


 集団戦の授業で一番最初に習うことだ。

 リーダーを信じる。

 これはパーティで行動する上で絶対的とも言える最重要事項である。

 

 もちろんリーダーにも間違いはある。

 その判断が正しいものか、間違っているのか、自分の判断の方が正しいのか、そんなのは誰にも分からないことだ。

 だがその時、もし自分の判断の方が正しいとして、果たしてその通りに行動してもいいものだろうか?

 もちろんダメに決まっている。

 全員が一体となって、一つの群体のように戦うことで、戦力は二倍三倍に跳ね上がる。

 だがその反面、一人が勝手に動いた時点でパーティは崩壊する。


 だからこそのリーダーだ。

 全ての最終判断はその人に一任される。

 故に、責任は重大で___こんな優柔不断なリーダーは、ちょっと困るのだ。

 信頼もそうだが、いざというときの判断が遅くてはパーティも動きようがない。


「……分かった」


 だがもちろん、それは彼女もよく分かっていることだ。

 彼女はくっと顎を上げ、パーティメンバーをぐるりと見回した。


「探索は続行。できるだけ戦闘は避け、巣を見つけることを優先しよう。エルたちは以後戦闘には参加せず、休んでて」


「……巣を見つけたらどうすんのよ?」


「撤退し、明日の夜明けに奇襲を仕掛ける。今日は野宿するよ」


「えっ」


 野宿。

 それは予想外というか何と言うか、何とも挑戦的な試みで。

 というかわざわざ夜明けに奇襲って……

 ……ああなるほど、確か。


「フォレストリザードの習性ですか。夜明け直後の動きが鈍い」

「そう。寝てる間に、体表の鱗に分泌される保護粘膜が乾燥するのが原因だ。このため、眠りから覚めたトカゲさんはすぐ川へ行って水浴びをする。そこを狙うよ」


 一応、理に適ってはいる。

 しかし本来、野宿訓練は十歳を超えてから行われるものである。七歳になったばかりの俺たちは大幅なフライングと言えよう。

 やはり俺たちのことが心配なのか、年長の三人は納得いかなそうな顔だ。

 自己主張の強い年頃であるから、仕方ないと言えば仕方ない。


 だが、もう一度言おう。

 リーダーの判断は、絶対のものだ。

 

「了解です」


 口火を切ってそう言った俺に続き、みんなも各々頷き、了解の返事を返していた。




 ___もしかしたら。

 間違った判断であるかもしれない。

 だが、それはこの時の誰にも分かりようのないことだった。



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