とりあえず、死にましたが楽しいので問題ありません。
少々残酷描写があります、苦手な方は後遠慮ください。
現実。
それは、地獄でも天国でもない、普通の世界。
魔法もなければ悪魔も天使も居ない。リアル。
そんな世界で、普通に生活する、普通の高校生。
イケメンでもなく、勉強ができるでもなく、運動もそこそこで、芸術的感覚もごく普通の16歳男子。
それでいいじゃないか。なにも特別なもんなんか要らない。貰えるなら、その好意に感謝していただくとしよう。けど、別に自分から欲しいなんて思わない。
母親が、痛い思いして産んでくれたんだし、そこに付属能力など要らない。
けど、皆は「あーぁ、魔法使ってみてぇー」とか、「なんで可愛く産んでくれなかったのかなぁあ」とか、くだらないことばかりほざく。
別にいいじゃんか。
目立つとめんどくさいし、ヤな思いするだけだし。
と、いつものように無駄なことを考えながら帰路を歩く。
途中、妹に可愛く頼まれてしまい承諾してしまった月刊の漫画雑誌を買い、夏の夕方の暑さに負けてアイスを買って食いながら帰る。
今までも何もなく普通に暮らしてきた。それで満足だ。
そう思っていたのに、人生何が起こるかわからんもんだ。
「ただいま」
静かに家のドアを開けて部屋に入る。
靴を脱いで、きちんと揃えて、キッチンに居るはずの母に顔を出す。
が、母の姿はなかった。
買い物にでも行っているのか?と思って、さほど気にしなかった。
次に、帰っているはずの9歳離れた妹に、漫画を渡しにいく。
部屋のドアを開ける。
何時もなら、「朔羽にぃにー!!」と飛び付いて来るのだが、おかしい。居ない。
が、平凡思考な俺は母と一緒に買い物か?と思って気にしなかった。
ふと周りを見れば、電気がつけっぱなしだった。
いつもキチンと電気やガスを止めてから出かける母。戸締まりももちろん怠らない。
俺が帰る前に出掛けるなら、ポストの奥に、若干見えにくい位置へ鍵をおく。
しかし、ドアは開いていた。
思い返せば、台所の電気も、コンロのガスもつけっぱなしだった。
明らかにおかしいことに気付いた時には、既に手遅れだった。
家中探し回る。
父の部屋、母の部屋、俺の部屋、トイレ、台所の隅々、庭、リビング、そして___風呂。
そこは、いつもの白壁ではなかった。
飛び散る血痕、シャワーの首から滴る血液、そして、浴槽からはみ出た6本の脚。
そんな現実あり得ないと、頭で否定した。
頬をつねって、叩いて、爪で痕を付けて……いくら痛めつけても、残るのはしっかりとした痛みと、絶望感、そして、想像を絶する恐怖と焦燥。
回らない頭、言葉を発しない口、動かない体。
もう、どうしていいか分からなかった。目の前に広がる血の海と、家族の惨殺された死体。
恐怖で覗き込むことすらできない。
脳が働かない。
焦りと一緒に、心臓もどんどん早く脈打つ。
力なくその場にへたれこみ、「ぁ………あ……」としか音を出さない声帯。
そのまま何分経過したのか。後ろから、何か音が聞こえる。
ぎし、ぎし、と重い何かが歩いて来る。
灰色の靴下が見える。黒いズボンが見えてくる。ふっくらとだらしなく膨らんだ腹部と、それに対応するように膨らんだ腕と脚と首。そして、肉のしっかり付いた顔は、涎を垂らし、にやにやと不気味な笑みを浮かべて「シシシシイ………」と笑う。
危ない、なんて思った時には遅く、胸からグチャ、と音がした。痛みではない。熱い。鉄と体内の肉壁が摩擦を起こして、熱くなる。
意識がとぶ前、俺は倒れた先の頭上に。母と妹と父の、無惨な血まみれた顔を見た。
俺は_____死んだ。
*
*
*
目が覚めたのは、さっきの光景そのままの浴室。
しかし、不思議と落ち着いた感覚だった。
そして、ふと足を見ると、半透明だった。そして、裸体だった。
「………????」
整理がつかないまま、バッバッと周りを見る。すると、そこには同じく半透明の裸体の家族がいた。
「あらやだ、アタシ裸じゃない!ぃやん!」
「京子、お前なかなか衰えてないじゃないか。」
「おかーさんここお風呂だから裸なんでしょぉー??」
「…………………」
のんき過ぎて、呆れるでなくビビった。大丈夫かこの人たちは。
自分の死体が目の前に転がってるんだぞ。怖くないのか?そう疑問に思うが、自分自身、変わり果てた自分の姿を見てもなんとも思わなかった。
そして、家族がこっちに気づく。
「あっらぁ……朔も、やられちゃったの?」
「んー。そうみたい、だな?」
「朔羽!お前、自分じゃ普通普通言ってるクセになかなかいい体してるじゃないか!!」
「え、マジで?」
「朔羽にーにもはだかー!」
「あぁ幼女かわいい……」
「こら朔、今さりげなく犯罪臭がしたわよ。」
「母さん!それは偏見だ!幼女を見ろ!こんなに純粋な体をみてかわいいとは思わないのか!!」
「い、言われてみれば……ピチピチだわ………それにぷにぷにで…か、かわi」
「朔羽!母さんが目覚めてしまうだろう!!!」
「朔羽にーに。眞緒、かわいい?」
「うんかわいいよ!!」
と、もうなんだか色んなことがどうでもよくなりかけたところで正気に戻る。
まず、死んだのは分かった。
けど、迎えとかその、来ないのか?
実際今、俺達は俗にいう幽霊だ。こんなとこに長居してていいもんなのか?
自分では片付かないと思ったので、疑問を両親に投げ掛けた。
「そういえばそうねぇ……。純一郎さん、どう思います?」
「んん、そうだよなぁ。と、いうか、なぜ我々なんだ?何故羽民家なんだ?」
「まぁそれはあのラリったおっさんが適当に入って殺しただけじゃねぇ?」
「そうか。まぁなんにせよ、迎えが来ないとなぁ。」
「………お?なんか音がすんぞ?」
「ぴーぽーだよ!朔羽にーに!ぴーぽーだよー!」
「うんぴーぽーだねぇマオかわいいい//」
警察だ。
ドンドンとドアを叩いて、「羽民さん!羽民さん!!居ますか!?」と、居ない(?)俺達を呼ぶ。何となく、「いまーす!風呂場で仲良くバスタイムでーす!!」と叫んでみるが聞こえる筈もなく、程なくして許可が下りたのか入ってきた。警察は、俺よりも早く俺らを見つけて絶句していた。
そりゃぁそうだろう。流石の警察でも、これはなぁ…。
とまぁ、俺らが頭上に居るにも関わらず死体をくまなく調べ、途中母さんの死体をくまなく調べているのを見て父さんが年甲斐もなく憤慨していたが、俺はそれよりも眞緒の体をベタベタ手袋越しにでも触られたのがゆるせn((
………。まぁ、そんなこんなで、捜査が始まった。死体は損傷が激しくて、以外にも一刺しだった俺は司法解剖に回された。
けど、俺は自分についていくでもなく家族と共にいた。
ここまで見ていて、思ったことがある。
これは普通なのか?
案外にも、自分は妹大好きというか小さい子大好き(ロリショタコンではない)なようで、そして家族全員変人(眞緒はかわいいだけ)で、あと幽霊で。
平和で普通の生活は、絶たれたようだ。
絶たれたようだが、家族ののんびりな会話は終わらない。
「あらやだ!ガスも電気もつけっぱなしじゃなぁい!どうしましょう!消せるかしら?」
母がコンロの火を消そうとする。そこで気づいた。
てっきり物は触れないと思っていたが、案外にも触れるようでカチッと消えた。
「わぁー消せた消せたっ!よかったわぁ!」
「あ、かぁさん、服も着れるかな?」
「んー、どうかしらねぇ?」
「おい!服が幽霊になったぞ!」
「はぁ?」
「にーにぃー!ぱんつもゆーれいさんだよー!きゃはぁー!」
「カボチャパンツの眞緒かぁわぁいぃー///」
「ほれ、朔、服!」
「ぅい。」
「あら、朔の私服なんて久々に見たわぁ」
「そーか?…あー、まぁいつもパジャマだしなぁ。」
「にーにー、髪結んでー?」
「あぁにーにに任せてぇー//」
「「朔のデレデレ具合かわいい。」」
と、もう、死んでも暮らせんじゃね?的な感じになってきた。
それからしばらくしても、全く迎えが来ない。
学校にも行かなくていいし、飯も風呂も入んなくていいし、めんどくさいことが何一つ無いので楽しい毎日だ。
そして、捜査も終わり、ラリった犯人はやはり薬物乱用で、薬物取り締まり法違反やら殺人罪やらで、極刑とまではいかないものの、懲役30年くらいの刑となった。まぁ、30年もすりゃぁ不健康そうな40代だったしぽっくり逝くだろ。
そして、今日は遊園地にいこー!ということになり、チケットも何も必要なくディ○ニーラン○に行った。
ネズミの夢の国で遊び、俺と母さんが小さい子に萌え尽きたところで、何か異変が起こった。