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ぐるぐる

一週間して、ようやく指の痛みも減ってきた。

指が使えないとパソコンをうつことが難しく、仕事の速度はかなり落ちた。

怪我したのが左手だったので、携帯でメールするのは、さほど苦にならないけれど、左手で携帯を支えるときに脱臼した指が邪魔でしょうがなかった。

車の運転もしにくい。


いつも健康なことがどれだけ素晴らしいかわかる。


普段は全くといっていいほど風邪もひかない私は、健康のありがたさを噛みしめた。


今週は指を怪我しているからユウタのところには行かない予定。


これも悔しかった。


でも、ユウタが怪我しなくてよかった、そう思った。


向こうに行けないのならと、ふみが遊びにくる。

遊ぶといっても、ただ家にいて他愛もない話をするだけだが。


うちに来てしばらくすると、ふみの電話が鳴った。

マルオだ。


ちょっとごめんねと合図しながらふみが電話をとる。

部屋を出て話始める。


そういや、この二人ってどんな関係になってるんだろう…。いつも自分のことで手一杯で、気にしたこともなかったけど…。



ふみが電話を終えて戻ってくる。なんだかとても不機嫌だ。


どうしたの、と私が聞く。

ふ『今日もあの女連れて遊びにいくらしいよ』

あの女…。麻美のことか。

ふ『最近平日でも一緒にいたりするみたいで、あたしは気に入らん!』

ふみが言うには、平日仕事が終わったあと、たまにユウタと飲みに行ったりするのだが、麻美がついてきているらしいのだ。


私は平日のユウタを知らない。

平日のユウタを知っている麻美がうらやましい。


でも、特別って言ってもらったから。

ユウタを信じよう、そう思った。



ふみが弥生も呼ぼうと言い出し、三人になった。

たまにはガールズトークも悪くない。

や『で、二人は結局進展はあったの?』

私『…ない。』

ふ『あたしは実は…。』

ふみが真っ赤になりながら言った。

ふ『こないだ、付き合ってって言われた』

や・私『えーっ?!』

ふ『これだけ一緒にいて、今さらという気もするけど』

私『そんなことないない』

や『おめでとう、やったじゃん!』

ふみが言うには、海事件の怒った電話を切ったあと、また連絡があったらしい。

ふ『でも、言われるなら、電話じゃなくて面と向かってからのほうがよかった』

口を尖らせる。


や『…で、肝心のあんたは進展はしてないのね』

私『ないというわけじゃ…。』

や・ふ『何があったの?!』

私『先週病院に行ったときに、こう、頭をくしゃーってしながら、『お前は特別だからな』って…。』

や『きゃーっ、それってもう告られたも同然じゃん!』

私『そそそ、そうかな、エヘヘ』

ふ『なら麻美がついて回っても安心だね!』

私は急に不安になる。

ユウタは妹みたいで可愛いと言ったけど、麻美のあの態度はどこからどう見てもユウタ狙いだ。

あの可愛い麻美にアプローチされたら、誰だって心が揺れるに決まってる。

ああ、そうだ、まだ好きだって言われたわけでもない、特別って、特別な友達って意味かもしれない。

ネガティブ思考になり始める。



元々ネガティブ思考の気がある私は、すぐにネガティブに捕らわれた。


どうしよう、今週こんな風に過ごしてる間にも、彼女がアプローチしてるかもしれない。

ユウタは優しいから、断ったりできないかもしれない。

マルオたちがいても、公然あーん、をしていたくらいなんだから、もっと密に接触しているかもしれない。


こうして、かもしれない、がぐるぐる頭を回り始める。

こうなると誰にも止められない。


寝るときまでこの『かもしれない』でぐるぐるだった。

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