カナカナリ
好きだ、って気づいたのはいつ頃だったけ。
ぼんやり窓の外の飛行機雲を見つめて、なんとなく考えてみた。
だけど、そんなこと考えたって仕方がないことくらいわかってる。
そんなことしても、今、現実はなにも変わらないんだから。
『彼女ができた』
アイツは、そうやって幸せいっぱいって書いてあるような笑顔で、私にこれ以上ないくらい残酷なことを言った。
だけど、酷いとは思えない。
私はそんなこと言える立場じゃないし、資格もない。
彼にとって私はただな幼馴染。
それ以上にはなれない。
「っ……! ばぁか。太一の……バカ」
わかってはいたつもりだけど、流石に十年ごしの初恋が実らないのは堪える。
溢れて止まらない涙を歯を食いしばってこらえると、頭が割れそうに痛む。
「桜庭? おまえ、まだ残って……」
「あ…」
ヤバい、と思ったときにはもう振り返っていた。
涙のあとが何重にも残った顔で。
「あ、いえ、そのこれは……」
慌てて顔を袖口で拭うが、それでも後から後から涙が溢れ出て来て意味がない。
「……桜庭? 」
「ほんと、なんでもないんです……ごめんなさい、橋本先生」
うっ、と嗚咽を漏らしながらの言葉には驚くほど説得力がない。
「そうか」
それでも、先生はなにも言わずにそれだけ呟いて、ポンと頭に手を置いた。
それは、高校一年のとある日の放課後のできごと。
ほんとはもっと続きがあるんだけど、書き切る自信がなくて、短編にしてみました。笑
いつかもっと文章力がついて、余裕ができたらちゃんと書いてあげたいなぁ…なんて思ってます。