キャンディー♪
可愛いお嫁さんになるMariaさんにホワイトデーのプレゼントです。
彼と出逢ってから3年間、バレンタインデーに渡すチョコレートは一つだけ。
もちろん、愛情たっぷりの手作りチョコ。
そして、1ヶ月後、彼は必ず応えてくれる。
飛びっきりの笑顔を添えて。
今年もそうなるはずだったのに…。
2月13日。
朝、携帯のアラームで目を覚ます。
今日はチョコレートの材料を買いに行くの♪
ん?
なんだか、体に力が入らない。
意識も朦朧としている。
天井がぐるぐる回っている。
39℃。
ふらふら歩いて、たどり着いた病院で宣告された。
「インフルエンザですねぇ」
熱が下がるまでは外出を禁じられた。
イヤよ!
明日は彼とデートなの。
手作りチョコを渡すの…。
ああ…。
だんだん、意識が遠くなる…。
気が付くと、私は公園のベンチ。
横に座っているのは、もちろん、大好きな彼。
チョコを渡さなきゃ!
あれっ?
チョコが無い…。
おでこが冷んやりする。
目の前には優しい笑顔。
「良かった」
彼がそう言って、そっと唇を重ねる。
「いくら待っても来ないから、心配で押し掛けちゃった」
えっ?
私は丸一日意識を失っていたみたい。
そうだ!
インフルエンザにかかったんだ…。
えっ!
今、彼がキスをした?
ダメよ!
うつっちゃう…。
翌日も彼は会社を休んで、私の熱が下がるまで看病してくれた。
「ごめんなさい…。チョコあげられなかった…」
「バカだなあ。僕にはチョコより、君の笑顔の方が大切だよ」
おかげで、熱が下がって、だいぶ楽になった。
「もう大丈夫だから」
「いい子だ」
彼は私を抱きしめて言った。
そして、そのまま、倒れ込んだ。
凄い熱…。
うつっちゃったんだ!
私のインフルエンザ。
3月14日。
彼が部屋に来てくれた。
彼と出逢ってから、ホワイトデーのこの日は私の部屋で彼と過ごす。
彼がくれた甘いキャンディーをなめながら。
今年はチョコをあげられなかった。
甘いキャンディーはもらえないけれど、彼の笑顔が見られるのなら、それだけで充分。
「いつものキャンディーは無いけれど…」
彼はコートのポケットから小さな箱を取り出した。
「今年のバレンタインはチョコを貰えなかった代わりに、いつもよりずっと君のそばに居られたから」
飛びっきりの笑顔。
「早く開けてごらん」
私はリボンをほどいて箱を開けた。
信じられない!
彼は箱の中身を掴んで、私の左手を取った。
そして、薬指にそっとリングを通した。
そのリングにはいつものキャンディーより小さいけれど、何倍も輝いているキャンディーが飾り付けられていた。
嬉しい!
嬉しいのに、なんだか涙が止まらない。
彼の腕の中で、私は世界一幸せな気持ちでいっぱいになった。
こぼれ落ちた涙がキャンディーの周りに幸せ色の虹を架けた様に見える。
彼が私の涙にそっと触れて囁いた。
「ウェディングドレスを着た、可愛い君を見たい」