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冬の花火

作者: kick

今日もなんだか体調が悪い。

「健康だ!」と思える日は年に10日もないと思う。

タバコの吸い過ぎか、連日の深酒か、運動不足か、原因はいろいろ考えられるけど、私とつるんで遊んでいるあいつは、私とまったく同じことをしているはずなのに、今日も元気に電話をかけてくる。

たまには休ませてくれ、って思う。

でも思っていてもあいつの「遊び行こうぜ!」って声を聞くと「おう。何時?」って答えてしまう。

きっと私はあいつのことが好きなんだと思う。

でも認めない。あいつも私のことが好きだけど、それは甘い感情ではなくて、熱い友情だ。


「今日は花火をしよう!」

とあいつは言った。

押入れを開けたら開封していない花火セットがでてきたらしい。


真冬の公園でビニールを破った。

タバコの火を手持ち花火の先っぽについてるへろへろの紙につけた。


シュボ!!


一瞬大きな音と煙をたてたけれど、すぐに火力は弱くなり、へなへなと火は消えてしまった。

「しけってんじゃないの?」

私が言う。

「あきらめ早ぇよ。全部試そう。」

そういってあいつは次々に火をつけていく。


いくつかは搾り出すように火花を飛ばしたけれど、そのほとんどが期待する明るさも熱も出さなかった。

「ま、いっか。こんなもんだよ。飲みにでもいこうよ。」

私が言う。

あいつはタバコに火をつけて 

「ま、いっか。」

と言う。

「夏になったらまた新しいの買って、今度はものすごい勢いのやろう。打ち上げ花火を手で持ってさ。」

「ばーかばーか。また危ないこと言って。」

「お前花火嫌い?」

「嫌いじゃないけど、なんかあんたと一緒にやると火の粉とか振り掛けられそう。」

「あははは。ま、やるな。」

「ほらー、ま、いいよ。寒いからさ、どっか入って飲もう。」

そういって二人は歩き出す。

「おまえさ、夏、暇?」

「なにそれアバウトな質問だなぁ。」

「夏、花火しようぜ。」

「ん?そうだね。」


二人はてくてく歩く。

そっか。夏も花火するのか。また二人でかな。


いかん。笑みをかみ殺さなければ。

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