表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マシだった気がする  作者: kinpo


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/11

第4話


夜のファミレスは、だいたい同じ匂いがする。

油と甘いドリンクバーと、冷房。


俺は窓際に座った。

外は見えない。反射だけが見える。


前回は中央だった。

通路に近くて、落ち着かなかった。

店員が何度も横を通る。

そのたびに、俺は水を避けた。

結局、グラスを倒した。


今日は端。

壁側。

安全だと思った。


ドリンクバーへ行く。

コーヒー。

薄い。

砂糖を入れる。

多い。


前回はブラックだった。


今日はミルクも入れる。

膜が張る。

かき混ぜる。

泡が増える。


席に戻る。

トレイが少し傾く。

こぼれない。

ぎりぎり。


彼女はもう来ていた。

いつも通りの席。

俺より先。


「こんばんは」


「どうも」


彼女はパスタ。

量が少ない。

俺はハンバーグ。

重い。


(前回は軽めにした。

腹八分。

今日は空腹だった)


ナイフを入れる。

肉が逃げる。

皿が鳴る。


彼女は俺を見ていない。

スマホも見ていない。

ただ、待っている。


「ここ、最近多いですね」


推理の形で言う。

理由は言わない。


「ええ。仕事が……」


そこで止まる。

彼女は続きを言わない。


(なるほど。

今日はその話題じゃない)


俺はソースをかける。

多い。

戻せない。


彼女は水を飲む。

少しだけ。

慎重。


(前回は一気だった。

むせていた)


「最近、選択肢が減った気がしません?」


俺は聞く。

答えを求めていない。


「減っては……ないと思います」


間が空く。

フォークが止まる。


(そうか。

まだ自覚していない)


肉を口に入れる。

熱い。

待つべきだった。


彼女はサラダを残す。

葉が大きい。


「それ、残すんですか」


「ええ。冷たいので」


(前回は全部食べていた)


俺はポテトを頼むか迷う。

やめる。

さっき重かった。


しばらく沈黙。

店内BGM。

聞いたことのある曲。


彼女が言う。


「この店、前にも来ましたっけ」


来ている。

確実に。

三回目。


「来てますね」


断定しない。


彼女は少し考える。

首をかしげる。


「……そうでしたっけ」


(よくあることだ)


俺は水を飲む。

ぬるい。


前回は氷が多すぎた。

歯が痛かった。


会計を済ませる。

レジ前で彼女が言う。


「今日は、悪くなかったです」


俺は頷く。


「次は、別の店がいいですね」


的外れだと分かっている。

でも言う。


外に出る。

夜風。

思ったより冷たい。


《これは、誰も生き残る必要のない話である。》

看板のネオンが、一つ消えていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ