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マシだった気がする  作者: kinpo


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第2話

第2話


深夜のドラッグストアは、明るすぎる。

理由は分かっている。

眠らせないためだ。

誰を、とは考えない。


入口のマットが湿っている。

雨は降っていない。

つまり、誰かが急いで入った。

なるほど。

今回はありきたりだ。


俺は飲み物の棚を見る。

前回は温かいもの。

失敗だった。

だから今日は、常温にする。

判断は正しい。

実行もする。


ミネラルウォーター。

硬水。

「飲みやすい」と書いてある。

こういう言葉は、だいたい信用しない。

それでも選ぶ。

実行はする。


レジの前に、先客がいた。

女だ。

年は、たぶん近い。

判断材料は少ない。

この時間に一人。

スマホを見ていない。

カゴの中は、栄養ドリンクとチョコ。

なるほど。

仕事だ。


会釈する。

向こうも軽く返す。

それだけで、会話は成立する。

成立してしまう。


彼女が先に会計を終える。

袋が二重だ。

重そう。

中身より、事情のほうが。


俺の番。

ポイントカードはありますか。

ない。

前回もなかった。

作る気もない。

その判断は、毎回正しい。

たぶん。


外に出る。

彼女もいた。

入口横で、チョコを開けている。

急いでいるのに、急いでいない。

そういう動きだ。


水を一口飲む。

ぬるい。

常温だから。

なるほど。

冷蔵棚の前に置いてあったやつだ。

前回のほうが、まだマシだった。


「お疲れですか」

口から出た。

的外れだと分かっている。

分かっていて言う。


「まあ」

それだけ。

十分だ。


彼女はチョコを半分残して袋に戻す。

甘すぎたらしい。

判断ミスだ。

反省はしない。

そのまましまう。


「これからですか」

俺は聞く。

推理のつもりだ。

「これから帰る」か「これから仕事」か。

二択に見えるが、たいてい違う。


「どちらでもないです」

なるほど。

一番厄介な答えだ。


沈黙。

看板の光。

虫が一匹、ぶつかって落ちる。

事件性はない。


彼女は先に歩き出す。

少しだけ、振り返る。


「無理しないでください」

俺は言う。

分かっている。

何の解決にもならない。

でも、別れ際には、これが一番遠回りだ。


彼女は、何も答えずに消える。

夜は、まだ同じ深さだった。


《これは、誰も生き残る必要のない話である。》

(次は冷たいやつだ)

ドラッグストアの自動ドアが、遅れて閉まった。


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