表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】笑顔の破壊力が物理的な破壊力!  作者: ぽこむらとりゆ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/126

笑顔の破壊力 lv.3

 次に開いたページには、異世界へ行くと、どれほどの恩恵が与えられるのかが書かれていた。


思話(しわ)で話したい三人を本に書き込む。フルネームでなくても、本人がその人が誰かを理解していたら、どう書いても良い。名前を書いた日から効力が発生する】


 世界と世界を繋げるのはタブーなイメージだが、それができるほど強い力がある人が作った本なのだろう。


 本当に神なのか。


「これは、今書くよ。書き忘れて思話(しわ)が使えなくなったら、絶対後悔する」

 

 私は名前を書き込む欄があったページを開き、テーブルに置いてあったボールペンを手に取り、一人目に『お父さん』二人目に『お母さん』と書いた。


 それを見て父は、


「本当にフルネームじゃなくて良いのか? 漠然とした名前だとその思話(しわ)が繋がらないんじゃないか?」


 と不安そうに私を見た。


「説明欄に、どんな書き方をしても良いって書いてるんだから大丈夫よ。もしこれでダメだったら、この本の作者を生涯をかけて探し出して、責任を取らせれば良いわ」


 いつも穏やかな母が、悪い顔をして言った。


「この本が普通じゃないのはわかるし、ちゃんとルールが書いてあるのに、嘘でしたは無いと思うんだよね」


 私はなぜか、この本に書かれている事は全て事実だと確信していた。理由は自分でもわからない。


 残りの一つには『神様』と書いた。


「いるのかわからないけど、他に書く人もいないし、一年後に思話(しわ)が繋がればラッキーかなと思って」

 

 両親から何かを聞かれる前に、言い訳をした。


 父は笑って、


「れいるにそんなにかわいい所があったなんてな。神様か、良いんじゃないか」


 と嬉しそうに言った。


 母は隣でニコニコしている。


 二人とも、私が幼い子どものように見えているのだろう。


「えっと続きは、特別な眼鏡の説明が書いてある。眼鏡って第六の世界にしか無かったよね?」


 続きを読み進めると、第六の世界の特典である、『特別仕様の眼鏡』の説明が書かれていた。


 この本は、第六の世界を選ぶ前提で作られている気がする。


「本当ね、お父さんと見ていた時はこんなページ無かったわよ。でも、不思議な本だからあまり驚かないわね」


 母はにこやかに言った。


 第六の世界を選んだから、新たにページが増えたのか。


 ここで父が口を開いた。


「他の世界の特典は、公爵位・不老不死・チート能力のような、イメージがしやすいものだったもんな。眼鏡だけ異質の特典だから書いてあるんじゃないか? そもそも眼鏡が特典って書いてある時点で、この本はれいるのために書かれたものだと改めて思わされるな」


 今までは、一ページずつしっかり見て考えていたけれど、先のページも見てみる。


 何故、始めから全部読まなかったのだろう。


 両親が先に全部読んでいたから、安心しきっていたのかもしれない。


 眼鏡の説明が書かれているページを飛ばし、後のページをパラパラとめくってみる。


 この先は、第六の世界の特典【住み慣れた家】に関する説明と【異世界へ行くにあたっての注意点】が書かれていた。


「第六の世界の説明しかない。二人が見た時も他の世界の説明はなかった?」


 私が両親に問いかけると、


「父さん達が見た時は、十ページもなくて、六つの世界の説明と思話(しわ)で話したい人を書くのがメインだった。なぜかページが増えているな。だが、細かい説明があるのはありがたい」


 そう言うと、父は母と目を合わせた。


 二人とも順応が早すぎる。


「とりあえず眼鏡の説明から見ていこう」


 私は本をめくり、眼鏡のことが書いてあるページに戻した。


【特別仕様の眼鏡】


 眼鏡には色々な便利機能がついているらしい。


・ズーム機能『望遠鏡のように遠くを見る事ができる』


・文字の翻訳(ほんやく)『異世界語の読み書きができる』


・十六年間で読んだ本全てを眼鏡を通して読む事ができる。


・異世界の生き物が(まと)う色が認識できるようになり、その色により、その人がどんな人なのか等がわかるようになる。(使うにはコツがいる)


 ズーム機能を使う事があるのか。という疑問はあるけれど、文字の翻訳(ほんやく)は素直に嬉しい。今まで読んだ本を読み返せるという事は、小説の他に読んだ、専門書や漫画、図鑑も読み返せる事になる。


 ファンタジー小説や異世界漫画も数え切れない程読んだ。


 不測の事態に備えられるかもしれない。


 異世界の生き物が(まと)う色……こういう設定の本を読んだことはあっただろうか。


 悪い人間からは黒いモヤのようなのが出ている、的なやつかもしれない。結構プライバシーを侵害(しんがい)する気がする。


 そう考えると、異世界あるあるの『鑑定スキル』は最悪なスキルだ。


 名前、年齢、レベル、時には性格、好きな物等が知らない人に知られる。


 他人の色を無闇に見るのはやめておこう。


 一緒に本を見ていた両親は、眼鏡の機能について話し合っている。


「結構使えそうな機能がついてて良かったよ。眼鏡本体は向こうに行ってから貰えるのかな。上手く活用できるよう頑張るね」


 私は今かけている眼鏡を触りながら言った。


「次は、住み慣れた家の説明だね。この家が異世界にあるってことだと思うけど……」


 本の続きに目を通すと、


【住み慣れた家】の事が書かれているページには、特筆するような事はなく、異世界に、今住んでいる家、思い入れのある場所等を可能な限り用意できるという事と、食料が一年間自動的に冷蔵庫に補充される、という事、最低限の調理器具は用意がされている。


 という、私に得しかない内容が書かれている。


「ずっと違和感があるんだけど、至れり尽くせりにも程がない? 作者は私に異世界で何かしてほしいのかな? ここまでする理由ないよね」


 不安になった私に父が、


「父さんもここまで読んで、すごい待遇だなと思った所だ。父さんはれいるの親だからかもしれないが、作者への感謝が大きいな」


 と言うと、


「お母さんもれいるの安全が一番だから、感謝が先に来ちゃった。でも、れいるのために用意された本からして、作者に何か意図(いと)があるのは確かかもね」


 母は、父と私の意見に同意した。


「異世界に行った後の事を今考えても答えは出ないよね。次の異世界の注意点を確認しよう」


 私は注意点が書かれた箇所を指差した。


【異世界へ行くにあたっての注意点】


 異世界の注意点はただ一つ。


『魔物がいる』ということだけだった。


 私が行く異世界で私が暮らす事になるであろう国には大きな街が五つあるらしく、その中の一つが魔物だらけなのだそうだ。今は結界でその街を覆っていて、魔物が出てくる事はないらしい。


 それなら、魔物がいない国に送ってくれたら良いのに。


「魔物がいない国には行けないのかしら?」


 母が(あご)に人差し指を当てている。


「なぜわざわざ危ない国にかわいい娘を行かさないといけないんだ」


 父は腕組みをしながら頷いた。


 考えることはみんな同じ……私は緩みそうになる頬を引き締める。


「まあ、魔物は結界から出られないようだし問題なさそうだよね」


 少し不安だったが私は自分に言い聞かせた。


 父も母も不安そうにしているが、異世界行きを反対されたくない。


「自分で異世界に行く日を決められる珍しいパターンだから、これを有効活用しないとね。異世界に持っていける物とかの記載(きさい)が全く無いけど、手に持ってる物を持っていける可能性もあるし、ちゃんと準備しないと」


 わざと大きめの声で話した。


「出発は、れいるの覚悟が決まったらで良いから、ゆっくり考えて、家族で準備をしていこうね」


 母は腕まくりをした。


「今思えば、こんなに長い時間、顔を見合わせて話したのは初めてだな。れいるの新たな一面も沢山見れたのが父さんは嬉しい」


 心なしか、父の目が潤んでいるように見える。


 私は今日まで、二人を避けていた事を思い返した。


「いつも避けてたの気付いてたよね……二人に気を遣わせたくなくて……私の力が危険なのも自覚してるし、言い訳にしかならないけど、今まで本当にごめんなさい」


 私は頭を下げた。


「気にするな!」


 と言って父は私の頭をガシガシと撫でて、母はまた私を抱きしめてくれた。


 私は、嬉しくて思わず笑ってしまった。


 ハッと我に返り両親を見ると、二人は嬉しそうに笑い返してくれた。


 この日は異世界に行く事を決め、両親との壁がなくなった、私の人生においての特別な日になった。



少しでも続きが気になった方、面白いと思って下さった方は、評価・ブックマークもらえたら作者がめっちゃ喜びます!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
翻訳機能は大事ですね。 やっぱ言語が通用するかは生活に直結しますし。 色々と眼鏡の機能があるけど、割れたら無効になったりとかしないか不安ですね〜。 (╹▽╹)
「笑顔」という人間にとって最大の喜びや愛情の表現が、物理的な「破壊」をもたらしてしまう。この斬新で切ない設定に、一気に引き込まれました! 異世界転移のプロローグでは、主人公が元の世界で家族から虐げら…
『異世界に行く方法』って本があったら、私買いますwww。眼鏡の機能が表示されているだけでは無さそうです。お役立ち程度もひょっとしてチート級?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ