笑顔の破壊力 lv.26
「【ゴウカの魔物】の毒がかかったら、生き物でも建物でも何でも砂に変わってしまうんですよね? そんな魔物を五十年も放置してる事に驚きます。ですが、陛下も同じように思われているようで安心しました」
私は王様の目を見て言った。
国が本気にならないと、この問題はどうにもならない。
ここで、下を向いていたアークが立ち上がった。
「絶対に安全だと言い切るのは、魔物を全滅させてからだ。『聖女の結界』を過信しすぎた国には責任があるが、俺たち国民も、何の疑いも持たなかったのは危機意識が低すぎる。幸い、まだゴウカの魔物は結界の中にいるんだ。今のうちに討伐し、本当の意味で安全な国にしよう」
胸の前で拳を握り、演説した。
そして、私とアークの二人が魔物討伐を任され、オルレアが治療要員、ルルが補助役で【ゴウカの魔物】との戦闘に参加することになった。
補助役が何をするのかはわからないが、ルルの戦闘への直接参加だけは絶対に阻止しなければならない。
正直、王様をこの話し合いに巻き込むのは気が引ける。
本格的な話し合いをするなら、この謁見の間ではなく、会議室のような所に移動したい。
私が辺りを見回していると、
「今日はここまでにしよう。余は、レイルとルル様を直接この目で見て確かめたかっただけなのだ。後は、君たちがやりたいようにやってくれて良い。こちらで用意できる物は何でも用意しよう。仲間が足りなければ人員を補充し、魔物の専門家と話したければ呼び寄せる。勿論、ラルが欲しければいくらでも用意する。国が出来ることは殆ど無いだろうが、頼ってくれ。余は先に失礼する」
王様はそう言うと、ダンを呼び、
「この者達に、話し合いのしやすい部屋を用意してくれ」
と言い、謁見の間を出て行った。
「では皆様、ここでは気が休まらないでしょうし、話し合いが出来るお部屋にご案内致します」
ダンが、扉の前に立ち言った。
私達は部屋を移動する為立ち上がり、扉の方に向かった。
ルルだけは、お菓子が食べ足りないようで、立ち上がらない。
すると、ジェイナが四角のかわいいバスケットにお菓子を移し、ルルに渡してくれた。
ルルは、キラキラした目でジェイナを見つめ、お礼を言った。
私達が歩き出すと、ジェイナがテーブルや椅子を一瞬でどこかにやった。
人力でやると少々大変な事も、魔法なら一瞬で片がつく。
ダンについて少し歩くと、話し合いの為に用意された部屋についた。
中に入ると、長方形のテーブルに椅子が六脚用意されている。本当に『会議室』という印象の部屋だった。
当然の様に、紅茶の用意がある。
私達は、それぞれ席に座り、お互いに顔を見合わせた。
「まずは、自己紹介かな。名前と年齢と能力や得意な事を言っていこう。私、ルル、オルレア、アークの順ね」
そう言って、私は立ち上がった。
「名前はレイルで、年は十六歳。能力はメインのものでいうと、『神力』を撃てます。じゃあ次はルルね」
私は椅子に座った。
ルルが立ち上がり、
「名前はルルです。年齢はありません。能力は特にありません。次は聖女ですね」
ルルが座ると、オルレアが立ち上がった。
「名前はオルレアといいます。レイちゃんと同じ十六歳です。オルカラ王国唯一の聖女であり、膨大な魔力を持っています。私は、類い稀なる治癒魔法の使い手で、結界が張れます」
そう言ったオルレアはこちらを向き、ニコッと笑った。
「じゃあ最後はアークね」
私が言うと、アークが立ち上がった。
「俺は、アークだ。年は十八歳。聖剣に選ばれた、オルカラ王国唯一無二の勇者で、得意なことは、『精神操作』と剣術だ。よろしくな」
勇者らしからぬアピールポイントが飛び出した。
勇者が精神操作が得意だなんて聞いたことが無い。
この世界は、私が思っている異世界と少し違う。
「アーク、精神操作が得意なの? 普段使ったりしてる?」
私は、少しアークの能力に恐怖を覚えていた。
「いや、日常生活で使うことは無い。というより、絶対に使いたく無い。だけど、自警団の活動をしている時に悪い奴を捕まえる為に使うことはある」
アークは気まずそうに、段々と声のトーンを落としながら言った。
アークが常識のある人で良かった。
日常的に、精神操作を使うような人と一緒にいることは出来ない。
ここでオルレアが私を見て、
「アークさんは、自警団の団長なんですよ。オルカラ王国には、王族を守る王室騎士団はあっても、国民を守る組織が無かったのですが、アークさんが数年前に自警団を発足して、今ではオルカラ王国に欠かせない組織にまでなっているんです」
と、アークが言った自警団について説明をしてくれた。
「悪い人相手だと、精神操作ものすごく便利そうだね。拷問をする必要も無く罪を吐かせそう」
私が精神操作のメリットについて話すと、
アークが焦ったように首を振り、
「本当に、逃げる相手の足を止めるとか、そういう所でしか使ってないからな。レイルが俺をそんな風に見ていると思ったら最悪だ。もう一度言うぞ、悪い奴を捕まえる時にちょっとだけ使うだけだ」
そう言うアークは真剣そのものだ。
ここで、オルレアが立ち上がり言った。
「アークさんの自己紹介も終わりましたし、ここからは誰かに質問された人が答えていきましょう。まずは私から。レイちゃんは普段何をしているのですか? 二日に一度くらい神殿に来ていただくことは可能ですか? レイちゃんがやってみたい事や、行きたい場所はありますか? レイちゃんが一番好きな食べ物はなんですか? それから……」
「ちょっと待って! その質問は今絶対に必要ないよね。オルレアは一旦落ち着いて座って。私が質問する」
私がそう言うと、オルレアは大人しく座った。
私はそのまま、立ち上がり、アークに体を向けた。
「アーク、私と初めて会った日の事覚えてる? あの時、私はアークに向かって神力を撃ったんだけど、アークは神力が飛んだ事に気付いて避けたよね? 普通の人が気付くのは、破壊音が聞こえた後だと思うんだけど、アークが何故気付いて避けれたのか聞いて良い?」
この世界に来てから、一番気になっている事だ。
アークは、何故か嬉しそうな表情になり、
「俺は、神力が見えるんだ」
と満面の笑みで言った。




