笑顔の破壊力 lv.123
私はというと、ゼンとダン、王様と、話を聞きたいといつも参加するヨウリと、ギルドについての話し合いを繰り返し、数ヶ月かけてようやくまとめた所だ。
ギルドを建てる場所は意外にも早く決まり、そこに建っていた古くなった建物を私が破壊し、ヴェルデが小規模な『建築用木材の森』を作り、それを使ってゼンが立派なギルドを建ててくれた。
その時に、ゼンに黒の輪の登録を王宮からギルドに変えてもらった。
受付や事務や営業などの求人を出し、殺到した応募者を一人ずつ面接するのには骨が折れた。
とりあえず形になってきた所で、システムに抜けがないかを再確認する。
これにまた一ヶ月程費やした。
ある朝、『プルルル、プルルル』という電話のような音が頭の中で響いた。
私は、頭の中で電話を取るイメージをする。
『れいるか? 父さんだぞ』
『お母さんもいるわよー。元気にしてる? 私達は元気にやってるわよ』
両親からの思話だった。
「元気だよ! もう一年になるんだね。凄くはやく感じる」
私は声を弾ませる。
すると、
ドカーーン!
という凄い音がし、天井から煙が上がった。
眼鏡をかけずに仰向けで寝ていたため、笑ったタイミングで神力を撃ってしまった。
慌てて眼鏡をかける。
思話ごしでも、私の様子がおかしいのがわかったのか、
『どうしたの?』
と母の優しい声が聞こえる。
「眼鏡をかけてないから、笑った時に天井を撃っちゃっただけだよ。この家は私の力を通さないように出来てるから心配しないで」
思話の間は真顔になると思っていたが、あれは、思話に慣れている者だからこそ出来る技だったようだ。
『相変わらずすごいな。れいるが自然に笑えるようになっているのがわかって父さんは嬉しいよ』
『お母さんもずっと心配してたの。れいるはこっちでは人と関わる事が無かったから、もし馴染めなかったら戻って来られるのか、なんて考えていたけど、その声を聞いて安心したわ』
両親はこの一年、私がいない毎日を悲しみ、後悔する事もあったようだが、私を信じて、今日の思話を待ち侘びながら日々を送っていたようだ。
私は、この世界に来てからの事を両親に沢山話した。
夢中になって二人に今まで起こった不思議な事を話し続ける。
その間、二人は相槌を打ちながら静かに聞いてくれた。
『そんな事があったのか……大変な思いをしたんだな……命が無くなっていたかもしれないと思うと、恐ろしい。れいるが無事で本当に良かった。れいるの仲間達にお礼を言いたいな』
父が言うと、
『あの木に意味があったなんて驚いたわ。この一年にも満たない期間で、色んな事を経験したのね。れいるに大切な居場所があって、仲間がいてくれて嬉しい、その出会いを大事にしてね」
母の優しい声。
私は不思議と涙は出なかった。安心感と幸福感に包まれている。
『れいるの邪魔をしないようにしようって二人で決めてたから、こんなに長い事話す予定じゃ無かったんだがな。楽しくて時間を忘れてしまった。じゃあ、次は来年だな』
『本当に、ちょっと近況を聞くだけにしようって言ってたのよ! れいるは大活躍して忙しいだろうからって……ふふ、予想通りで嬉しいわ。来年また、れいるの一年分の話を聞かせてね』
「全然邪魔じゃないよ、むしろ嬉しい。でも、ありがとう。話せて良かった。また来年ね、二人とも大好きだよ!」
私は自身の照れに打ち勝ち、二人に言った。
『れいる、愛してるよ』
二人の声が揃う。
「うん! じゃあ、またね!」
『ああ、また来年、元気でな!』
『無理しないでね、ちゃんと周りを頼るのよ!』
母の声が聞こえたと思うと、プツリと思話が切れたのがわかった。
両親は、神から思話の掛け方と切り方を教わったのだろう。
久しぶりに聞く、二人の声に気持ちが安らいだ。
時計を見ると、まだ朝の八時前だった。
両親とは確実に六時間は話した。それなのに、時間が経っていない。
この一年に一度の思話は特別なもののようだ。
「それなら、もっと長く話したかったな……」
そう呟いたが、満足はしていた。
言いたい事、話したい事は全て伝えた。
来年話す時の為に、また色々経験しておかなければ。
『プルルル、プルルル』
また思話がかかってきた。
まさか、今日なら何回でも両親と話せるのかと思い、私は思話に出る。
『ヤッホーだぜ!』
『ごきげんよう、ですわ』
『こんにちはっス』
『ロロなのー』
あの四人からだ。
そういえば私は、あの本に両親と神様と書いていた事を思い出す。
『レイル様、面白そうな事やってるんだぜ!』
『冒険者ギルド、ですわ! これからこの国が、世界が変わっていくのですわ!』
『冒険者ギルドは気になるっスけど、レイル様は今お困りな事とか無いっスか? できる限りお手伝いするっスよ』
『ロロも手伝うのー!』
四人は私の返答を待つ。
困っている事……。
「それなら、ルルに流れている私の神力の量を増やしてほしい。十倍くらいにしても問題なさそうなんだよね。お願い出来る?」
『…………』
返事が無い。
「やっぱり難しい?」
もう一度尋ねてみる。
『うーん……出来るんだぜ……』
『ですわ……』
『レレ達はルルが戻る前に、レイル様と親交を深めたいっス』
『ロロもなのー』
どうやら、今、神力を流す量が少ないのはわざとらしい。
「もしかして、ルルが戻ってきたらあなた達と交流を持たなくなるかもしれないから、ルルがいない期間を伸ばそうとしてるの?」
『……』
図星のようだ。
『この世界の担当はルルだぜ。ララ達にはララ達の担当の世界があるんだぜ!』
『ですが、見守りの対象がいないのですわ!』
『だからといって、レイル様の願いを先延ばしにするなど、神失格っスね』
『ごめんなさいなのー』
『見守りの対象』とは、私のように、転移や転生をしてきた者の事をいうのだろう。
この四人は暇なのかもしれない。
「誰がどこの担当なのか、なんとなくわかるよ。じゃあ、やってくれるって思って良いんだよね」
『わかったっス! では、ルルに十倍の量を流すっス!』
レレが言うと、身体から神力が抜ける感覚が少しだけ強くなった。
だが、体調に影響するような事はなさそうだ。
「ありがとう。これで、数十年が数年になるんだね、嬉しい。ルルがいても、年に一度の思話はするからかけてきてね」
私が言うと、
『わかったぜ! 毎年ララがかけるぜ!』
『リリも沢山お話しますわ!』
『では、レイル様、失礼するっス!』
『またねなのー!』
プツリと思話が切れたのがわかった。
私は、この思話が終わってすぐに通信具で皆に報告をした。
ルルが数年で帰ってくると言うと、皆喜んでくれた。
そして、この日はギルドが三日後にオープンすることを祝して、久しぶりに集まり食事をすることになった。
場所は、センリの店だ。
私はオルレアと一緒に店に向かい、中に入ると、チリンと鈴の音が響く。
相変わらず、落ち着いた雰囲気にピンクの小物が目立つ。
入り口から店内を見渡すと、アークとゼンとダンが既に席に着いていた。
店に入るとあのぶっきらぼうな声が聞こえるかと思ったが、センリがいない。
私達は皆の元に行き、椅子に座る。
「センリさんはどうしたの?」
私が聞くと、
「さっきまでそこに……まさか……」
と言ってアークが立ち上がり、店の奥を覗いた。
「おいセンリ! 起きろ! 大丈夫か?」
アークが、寝ていたらしいセンリを起こす声が聞こえる。
「レイル様が……レイル様が……」
センリのか細い声。うなされているようだ。
するとゼンが指をパチンと鳴らした。
「もう少しで天に召される所でした。まさかレイル様が来店されるとは思わず油断していました。お越しくださりありがとうございます」
ゼンの魔法で目を覚ましたセンリが、席までお詫びと挨拶をしにきた。
その時に、アークに渡された、私のサインのような物が書かれた色紙をセンリに渡すと、物凄く喜び、気を失いかけたがギリギリ耐え、早速店に飾っていた。
「では、メニューが決まりましたらお呼びください」
と、愛想良く言ってセンリは下がっていった。




