笑顔の破壊力 lv.120
「レイちゃんが具体的に何をするのか聞いても良いですか?」
オルレアが四人に聞いた。
「ルルに神力をあげるのー」
ロロが、皆がすでに知っている事を笑顔で答える。
「レイル様は何もしなくて良いんだぜ!」
「神力をレイル様からルルに送るのは、リリ達がするのですわ!」
「ルルを満たせる程の神力が溜まるまで、どれだけかかるかはわからないスけど、今から始めたとして、最低でも数十年はかかるかもっス」
レレは申し訳なさそうにこちらを見る。
「数十年って……そんなにかかるのかよ」
アークが言うと、
「空っぽになった神の子の神力を補填するなら、数十年でも早いと思って、気長に待つしか無いかもしれないね」
ゼンは残念そうに言った。
「わたくし共にとっての数十年はすぐですが、レイル様やアーク様には長く感じられるでしょう」
ダンは私達と目を合わせる。
「もどかしいですが、私達はルルさんが戻ってきてくださるのを信じて待ちましょう」
オルレアは、ルルが帰ってくるという安心と、すぐに会えない残念が入り混じった表情をしている。
私も似たような表情をしているだろう。
「じゃあ、レイル様! 失礼するぜ!」
「リリもですわ!」
「あ! レレも良いっすか!」
「ロロもなのー!」
四人の神の子が、こちらへ凄い勢いで飛びかかってきたと思うと、私に抱きついてきた。
身体強化が無ければ、骨折していただろう。
その瞬間、私の中の何かが抜ける感覚がした。
「とりあえず、レイル様とルルの道を繋いだっスよ。数十年かけてゆっくり神力が流れていくはずっス」
「レイル様の負担にならない程度で調節するぜ!」
今のは、ルルに神力が流れていく感覚だったようだ。
「年に一度話せると言いましても、リリ達もレイル様といたかったですわ」
リリがふてくされたように言った。
「ロロもなのー」
年に一度話せるという事は、やはりこの子達は神のようだ。
くっついていた四人が離れてから、
「ねえ、あなた達が神様なんだよね?」
と私は疑問をぶつける。
「単体では神の子で、集まると神になるんだぜ!」
「神の子は、三人以上で神の力を行使できるのですわ」
「恐らく、神が一人しかいないと、世界を広い視野で見れないからとか何とかっスね。とにかく、意見が割れたら多数決で解決するっス!」
「ロロも神の子なのー」
神がいるというよりは、神というシステムがある、という感じのようだ。
ルルが『父』だと言っていたのは、このシステムの説明が面倒だったからだろう。
基本的にルルは、私に関係の無い事を説明したがらなかった。
実際、ルルは夜な夜な三人以上と話していたのだから、『神』と話しているのと同義。ということは、神の『子』であるルルにとって、同格の者達でも合わされば親と言っても間違いではないのかもしれない。
私にもよくわからなくなってきた。
「私に神力を与えたのも、この世界を選ばせたのも、『異世界に行く方法』に書いてあった事と矛盾があったりしたのも、全部あなた達が関わってるんだよね?」
私は威圧的にならないよう、出来るだけ優しく言った。
ロロ以外の三人の目が泳ぎ出す。
「いやー……まず、神力を与えたのはララ達じゃないんだぜ! それはレイル様の運というか、宿命というか……だぜ!」
「世界を選ばせた、という事に関しましては、仕方なかったのですわ! あのままこの世界を放置してしまいましたら、本当に第五の世界が誕生してしまっていたのですわ!」
「実際、レレ達は違う世界の担当っスけど、第六の世界を選んでいただかないと都合が悪かったっスから、誘導した事は認めるっス」
「ごめんなさいなのー」
意外にも、あっさりと誘導を認めた。
第五の世界は存在していなかったようで、私は胸を撫でおろす。
勝手に転生させる訳でなく、私に選ばせる形にしたのは、この子達の罪悪感と優しさによるものだったのだろう。
「本と現実に矛盾があったのは、まずは住み慣れた家が新しかった事っスよね。それは、元の世界でご両親が住まわれている家を転移させる訳にいかなかったので、そっくりな物を用意させていただいたっス!」
レレは、こちらを窺いながら言った。
この世界に来た時、元の家と見た目だけが同じで、実際は違う家だとわかった時、私は怒りに震えた。
だが、今考えると当たり前だ。
レレが言うように、本物の家には両親が今も住んでいるのだ。
そんな事もわからなかった自分が恥ずかしくなった。
「他に本に書いていなかったのは、『お世話係』ですわね。ただ、異世界の説明が書いてある本をレイル様のお家に置くだけのつもりだったのですが、当日になり、ルルが予定を変更して飛び出して行ったのですわ!」
リリはプンプンと怒っているようだ。
「文字の読み書きは眼鏡の機能通りなんだぜ! 言葉が理解できて、話せるのはララ達からのサービスなんだぜ!」
ララが得意気に言った。
ずっと気になっていた事が一気にわかり、気持ちがスッキリとした。
「ちゃんと答えてくれてありがとう。こっちに来てから色々あったから、他にも聞きたい事があった気もするんだけど……」
私は、この子達がいる間に聞ける事を聞いておかないと、と少し焦っていた。
「レイル様……ロロ達は年に一度、レイル様と話せるの。そんなに焦らなくても大丈夫なの」
ロロが私の様子を見て、話しかけてくれた。
そうだ、私が年に一度話したいと本に書いた名前は、お父さん、お母さん、そして神様だった。
疑問があれば聞く機会がある。
ルルへの神力の補填がどの程度進んでいるのかも、毎年聞けるかもしれない。
「そうだね、ありがとうロロ」
私が言うと、ロロは笑顔で頷いた。
「もうララ達に出来る事は無いんだぜ」
「寂しいですが、そろそろ天界にもどりますわ!」
「長居しても迷惑っスからね」
「ロロもなのー……」
神の子達は皆、名残惜しそうにしている。
「迷惑だなんて……こちらがお呼びしたのですから、そんな事思わないでください」
オルレアがレレの言葉を否定する。
「俺も天界の話とか聞きたかった」
アークは残念そうだ。
「またいつかお会いできる機会もあるでしょう」
ダンがアークを慰める。
「そうだね。まあ、当初の目的は達成したんだ。また、落ち着いてオルレアの神聖力が回復したら、ゲートを開けるよ。今日はぼくらも戻ろう」
ゼンはオルレアを見て言った。
オルレアは普通にしているように見えるが、相当量の神聖力を消耗しているらしい。
一度神聖力で部屋を満たせば終わりでは無く、今もずっと力を放出し続けているのだ。
ゼンは、オルレアを心配して戻る事を提案した。
それを神の子である四人はわかっているようだ。
「また思話で話せる時を楽しみにしてるんだぜ!」
「レイル様、リリを忘れないでほしいですわ!」
「お会いできて嬉しかったっス!」
「ロロもなのー! また会いに来るの!」
そう言って、順番に自身が通ってきたゲートに戻って行った。
ゼンが、指をパチンと鳴らしてゲートを閉じる。
そして、もう一度指を鳴らし、広げた部屋を元に戻した。
「祭壇に何も捧げなかったですね」
私は部屋に置かれた祭壇を見て言った。
「一応活用は致しましたので、無いよりは良い、というくらいのものでしたね」
始めに祭壇の説明をしたダンは、少し気まずそうだ。
「ゴウカにした意味も無かったよな」
アークが呟いた。
確かに、神の子達は場所には興味がなさそうだった。
「レイちゃん、身体の方は大丈夫ですか? 辛くないですか?」
オルレアは、神力がルルに流れている私を心配してくれている。
私は、今も神力が流れていくのを感じていた。
「全然大丈夫だよ。なんか抜けていくのは分かるんだけど、それによって体調に変化は無いみたい。むしろ、もっと多めにしてって頼めば良かったって今後悔してる」
ルルに送る神力の量を増やせば増やすほど、ルルと会える日が近くなる。
私の言葉を聞き、オルレアは安心したようだ。
「それより、オルレアのほうが消耗してるんだから、人の心配してる場合じゃないよ。ゆっくり休まないと」
私は、お人好しなオルレアに少し強めに言った。
「まさか、ルルが神の一人だったとはな……早く会えると良いな」
アークは笑顔で私に言った。
私も笑顔を返す。
「後は王宮に帰ってから、皆を集めて裁判の結果でも話そうか」
ゼンは相変わらず口調が軽い。
裁判……サモラ王国の王様と王妃がどうなったかを教えてくれるのだろう。




