笑顔の破壊力 lv.118
「ララ、リリ、レレ、ロロの願いを叶えたら、ルルをこの世界に戻してくれるって事だよね? じゃあまずは、皆の願いを教えてくれる?」
私は四人に聞いた。
どんな願いが来るかわからないが、出来るか出来ないかだけでも把握しておく必要がある。
「確かに、確認は必要ですね。神の子ともあろう方々であれば、実現不可能な事は仰られないでしょうが、念のため、です」
ダンは、四人を牽制するかのように言った。
「じゃあ、ララからだぜ! ララは……えーっとだぜ……ララより強い剣士を連れて来るんだぜ! こう見えてララは凄腕の剣士なんだぜ!」
ララは何処からか剣を出し、その場で軽く振った。
「リリは、どんなお茶にでも合う素晴らしいデザートを持って来て欲しいですわ!」
リリは、祭壇の上にいろんな種類のお茶が入ったカップを沢山並べた。
「三番目はレレのお願いをきいてもらうっス! レレは、どんな病気、怪我でも絶対に治る万能薬を望むっス!」
レレは悪い顔をして言った。キャラ的に無害そうだが、少し計算高い面があるようだ。
「最後はロロなの! 最強の癒しをロロに与えるの!」
両手を大きく上にあげ、ロロは叫んだ。
ロロは、絶対に第四の世界担当だ。
「じゃあ、ララのお願いから聞くんだぜ!」
ララが剣を持ち、嬉しそうに言うと、
「俺が行くよ」
アークが前に出る。
「ふはははははー! 貴様、勇者アークだな! ルルから神力が見える者がいると報告を受けているんだぜ! 神力が見えるからって、たかが聖剣でこのララ様を倒せるなんて思わない事だぜ!」
ララは何かになりきっている。物すごく演技がかっているが、楽しそうで何よりだ。
「剣を振るにはここじゃ狭いよね」
ゼンが指をパチンと鳴らすと、部屋が五倍程に広がった。
「ぼくが作った神殿だからね、変形くらいすぐに出来るよ」
そう言いながら、ゼンはこちらをチラチラと見ている。
「凄いですねー、さすがゼン様、魔法の天才です」
私は頑張って褒めた。
すると、ゼンは嬉しそうに笑う。
「では、公平を期して、わたくしが審判を致します。どちらかが負けを認めるか、戦闘不能になりましたら、試合終了とさせていただきます」
ダンが、向かい合ったララとアークの元へ行く。
「開始」
カキンッ!
合図と同時に、二人の剣がぶつかった。
カキンッキンッキキンッキンッ!
キンッキンッキンッカキンッガキンッ!
お互いに剣を押し付けながら、睨み合う。
「おお! 思ったよりやるぜ! 中々のスピードとパワーだけど、ララ程じゃないんだぜ!」
と言うと、ララは一瞬でしゃがみ、アークの死角にまわる。
「これで終わりだぜ!」
ララが、アークの背中を突き刺すその瞬間、
ガキンッ!
アークが振り返ると同時に聖剣を振り、ララの剣を止めた。
「ララ、君の剣は真っ直ぐだ」
アークは余裕そうに言う。
「何かおかしいぜ……なんで、聖剣なんかでララの攻撃を止めれるんだ……ララの剣より強い剣なんて無いんだぜ」
ララは独り言を言いながら、アークの聖剣を見た。
「ええええ!?」
ララが大きな声を出す。
「ララ、試合中ですわ! 何がありましたの?」
リリがララに聞くと、
「アークの聖剣に神力が纏わりついてるぜ! こんなの無しだぜ! これで斬られたら、ララは回復出来なくなるんだぜ!」
ララは聖剣を指さし叫ぶ。
神力を纏う聖剣で斬られたら回復が出来ない……。
ゴウカでの戦いで、私の攻撃が当たると、ジェット達魔人は、自身の治癒能力では回復が出来なくなっていた。
それと似たような事が、神の子にも適応されているらしい。
私が神力の修行をしていた時、ルルは的のすぐ近くにいた。あれは神の子にとっても危険な行為だったようだ。
他の三人がアークに近付き、聖剣をまじまじと眺めだした。
「本当ですわ! 何故、聖剣が神力を纏っているの?」
リリが興奮気味に言うと、
「これは、ルルから聞いていないっスね。ルルは隠していたんスよ。あー! レレもこの世界を担当したかったっス!」
悔しそうにレレは地団駄を踏む。
「ロロもなのー」
ロロは話すのがめんどくさいのか、ほぼ同じ事しか言わない。
「続けられますか?」
ダンがララに聞くと、ララは首を横に振った。
「神力を纏ってるなんて聞いてないけど、ララの負けだぜ! 確かに魔力や神力を纏ってはいけないってルールは無かったんだぜ! 完全にそっちの作戦勝ちだぜ!」
ララは、勝ち負けにあまり拘っていないらしく、笑顔で負けを認めた。
「ララ様のお願いは、アーク様により叶えられました」
ダンが宣言した。
「作戦なんて無いが、作戦が無いことが作戦だったのかもしれないな!」
アークは訳のわからない事を言って、ララと握手をした。
これで、あと三人。
次は、リリのどんなお茶にでも合う素晴らしいデザートを持って来て欲しいというお願いだ。
「どんなお茶にでも合うデザートか、それはぼくが教えてあげるよ」
そう言って、ゼンが指をパチンと鳴らすと、真っ白なケーキが現れた。
一見、普通のチーズケーキのように見えるが、そんなに単純なものではないのだろう。
それを、ゼンが祭壇の空いたスペースに置く。
「こんなシンプルなものがどんなお茶にでも合うデザートですの? あなたはリリとの勝負を捨てたのですわ!」
リリが自信たっぷりに言うと、
「まあまあ、どのお茶とでも良いから食べてみてよ」
ゼンも自信をこめて返す。
リリは訝し気にフォークを持ち、ケーキを切り、口に運ぶ。
「味は普通ですわ。少しがっかりですわ」
そう言って、お茶を飲むと、
「えっ? なんです? これはなんですわ? 先程までただのケーキだったんですわ! それが、今ではこのお茶の為に作られたのだと思える程に、お茶と調和していますわ!」
驚いたような表情で、リリはゼンを見る。
「これだけで判断せず、他のお茶とも合わせて食べてみてよ」
ゼンはリリに笑顔で言うと、リリは悔しそうな表情をしてゼンを見てからケーキを一口食べ、さっきの物とは別のお茶を飲んだ。
すると、リリの頬が緩む。
その後もリリは、色々な種類のお茶で試し、驚きと歓喜を繰り返している
「これは認めざるを得ませんわ! このケーキはなんですの? どのお茶と合わせても相性が良いだなんて、あり得ませんわ! リリの負けを認めますわ! ケーキのカラクリを教えてもらいますわ!」
リリがゼンにまくしたてる。
ゼンは待ってましたと言わんばかりに、ニヤッと笑った。
「ははは、カラクリか。このケーキに使われている材料が特別なだけで、あとは何の仕掛けも無いんだよね」
ゼンが言うと、レレがケーキをまじまじと眺め、
「もしかして、その特別な材料って、『名もなき果実』だったりしないっスよね?……いや、まだ一度しか歴史上に現れたことのない物がここにある訳無いっスよね! あはははー、ちょっと言ってみただけっス!」
そう言うと、ケーキから離れた。
「何で、その名を知っているんだい? 正解だよ! 君は博識だね。レレ様の言う通り、このケーキには『名もなき果実』を使っているんだよ」
ゼンは心底嬉しそうに笑いながら、レレに言った。
「名もなき果実ですか、聞いた事が無いですね」
オルレアが呟く。
「俺も初めて聞いた。まだこの世界の歴史に一度しか出て来て無いって言ってたな。何でそんな物を大神官様が持ってるんだ?」
アークは不思議そうにゼンを見た。
「『名もなき果実』は、知らないのが当たり前といって良い物です。わたくし共も、『名もなき木』に実が成るのを見たのは遠い昔に一度だけですから。『名もなき果実』が収穫出来たのは、それが最初で最後です」
ダンが『名もなき果実』について説明してくれた。
レア度が測れないほどの、激レアアイテムだ。
そんな物を今使うとは、ゼンは惜しくないのだろうか。
「『名もなき果実』なんて、初めて聞くのですわ。そんなに貴重なものをリリは食べたのですわ! 感激ですわ!」
リリは、完全に勝負を忘れているようで、お茶の続きを堪能し始めた。




