笑顔の破壊力 lv.109
水晶が、魔法使い達の元に降りていく。
どうやら、撮影は終了したようだ。
「どんな褒美が良いか考えておくように」
王様はそう言ってニカっと笑い、王妃と共にこちらへ来た。
「レイルは王妃に会うのは初めてだな。メイア・オルカラだ」
王様に紹介され、王妃が私に笑いかける。
「初めましてレイルさん、メイア・オルカラです。さっきはいきなり話しかけてごめんなさい、驚いたわよね。王子と王女と仲良くしてくれてありがとう」
王妃は優しい声で私に言うと、こちらに近付いて、
「英雄であるあなたなら、王子の相手として歓迎するからね」
と私の耳元で囁いた。
そして、私が返事をする間もなく、王妃は王様と共に謁見の間を後にした。
すると、ヨウリがこちらへ駆け寄ってくる。ユウニがその後ろをついて歩いてきた。
「皆、今日はおめでとう。こんなにめでたい場に来られて良かったよ。レイル、君の力はやはり美しいね。ますます興味が沸いたよ」
ヨウリが、ニコニコと話しかけてくる。
私は、先程の王妃の言葉を思い出し、反射的にヨウリから目を逸らした。
アークが、バッとこちらを向き、
「今の反応……まさか君は……ヨウリを……」
と何故か泣きそうな顔で、私に何かを伝えようとしている。
「アークさん? 少しよろしいですか?」
オルレアが笑顔でアークを呼び出し、引きずるように隅に連れて言った。
「今、何を言おうとしたんですか? それを言うとレイちゃんがヨウリ様を意識してしまいます。発言は慎重にお願いしますね」
「いや、レイルの様子がおかしかっただろ? それで、不安になって……」
「恐らく王妃様に、ヨウリ様の事を言われたのだと思います。とにかく、軽率な発言は控えてくださいね」
少し離れた場所にいる、オルレアとアークはコソコソと何かを話している。空気が深刻そうだ。
「レイル、どうしたんだい?」
ヨウリが、心配そうに私を見ている。目を逸らした事を怒ってはいないようで安心した。
「いえ、何もないです。そういえば、今日は国王陛下と王妃様がいる場で緊張してたんですけど、お二人がいてくれてリラックス出来ました。ありがとうございました」
私はヨウリとユウニに、笑顔を向けた。
「僕達は何もしていないじゃないか。それでも君の役に立てたのなら良かったよ」
ヨウリは、眩しい笑顔をこちらに向ける。
「アーク様がいらっしゃる。この後お茶でもいかがですかなんて誘ってみましょうか。アーク様のご予定をお聞きするのが先かもしれません。ユウニ、大きな声で言うのです」
今日もユウニは、早口でボソボソと独り言を言っている。
アークとオルレアは話が終わったらしく、こちらに戻ってきた。
「じゃあそろそろ僕も戻るとするよ。またねレイル」
そう言うと、ヨウリは消えた。
何かの魔法か魔道具を使い、ワープしたようだ。
「今日の所は眺めるだけで我慢するとしましょう。私も戻らなければ叱られてしまいます。残念ですがお茶はまた今度ですね。では失礼致します」
ユウニも何処かへワープして行った。
王室騎士団はケイの指示のもと、持ち場に戻っていく。
その他にも、式に参列していた者達が、次々とこちらに来て一言お祝いの挨拶をした後、謁見の間を後にした。
「レイル様、この度はおめでとう御座います。そして、ゴウカを救ってくださり感謝しております」
クロエが挨拶に来た。
「ありがとうございます。皆で協力して掴んだ勝利です。私もゴウカを取り戻したかったので、目的が果たせて良かったです」
私は笑顔で答えた。
私達が話していると、ゼンがクロエに気付きこちらに来た。
「クロエ、君はなんて物を作り出したのさ、時計……だったよね? このタイミングで発表するなんて、時星が無くなる事を予想していたのかい?」
ゼンも、時計が気になっているようだ。
「いえ、時星が無くなるなどと予想出来るわけがありません。丁度最近、時計を大量生産する目星がつきましたので、本日、国王陛下にお見せしようと思い持っていたのです。本当に偶然でした」
クロエはそう言うと、どこかから時計を出した。
「お母様、時計は配るのでは無く、販売するのですか?」
話を聞いていたアークが、少し不安そうにクロエに聞いた。
「アーク、時星が無くなった今が、時計を売り込む好機なのです。そして、私が時計の時間を合わせる為に、どれだけの計算と努力をしたと思いますか? 完成にどれだけのラルを使ったか想像出来ますか?」
クロエは淡々とアークに言い聞かせる。
「すみません……そうですよね。そんなに素晴らしい物を、なんの苦労も無く作れる訳が無いですね。ラルが無くて時間がわからない人々が出てくる事を思うと……」
アークは気まずそうに言った。
優しいアークは、時計を買う事が出来ない人々の事が心配だったようだ。
それを聞き、クロエは少し考える素振りをした後、
「では、街中に皆が時間を知れるよう、時計を何台か設置しましょう。わざわざ外に出なければいけませんが、無いよりは良いでしょう」
と言うと、アークの反応を待った。
不安そうな表情だったアークの表情が、パアッと明るくなる。
「凄く良い考えですね。それならば、誰でも時間を把握できるようになります。ありがとうございます」
それにしても、街中に時計を設置するという考えが瞬時に出てくるとは、クロエは本当にすごい。
元の世界では当たり前のように、時計台や、電光掲示板、学校等で誰でも時間がわかるようになっていた。
この世界でも、それが当たり前になる日は近いだろう。
「時星が消え、人々が不安になっているタイミングでクロエ様が時計を出されたので、皆様の不安は一気に解消された事でしょう。流石はクロエ様です」
ダンが、感心したように言った。
実際、時計を出すには最高のタイミングだった。
クロエは、運と実力どちらも兼ね備えており、好機を逃さない。
こういう者が市場を支配するのだろう。
クロエはダンに向かいニコッと笑うと、
「では、私も明日の準備がありますので、失礼致します」
と言い、頭を下げた後、謁見の間を出て行った。
「クロエが時計を売っている間、ぼくは裁判で、サモラ国王と王妃に判決を言い渡してくるよ」
ゼンが嬉しそうに言った。
裁判が明日始まるとして、明日判決が出るとはどういう事だろうか。
「もう結果は決まっているからね。もしその場で無実を訴えたとしても、何も変わらない。ぼく達は、完璧に証拠と証言を集めてるんだ。あとは本人達の前で判決を言い渡すだけなんだよ」
ゼンは私の表情から、私が疑問を抱いた事がわかったようだ。
「他国の王族といっても、国賓じゃなくて罪人だからね、扱いは他の犯罪者と同じだよ。もう、サモラ王国はあの二人を守らないんだ。じゃあダン、ぼく達も明日の準備をしに行こうか」
ゼンは指をパチンと鳴らして、ダンと共に消えた。
サモラ王国の国王と王妃が捕まったというのに、国が二人を守らないとはどう言う事なのだろう。
明日の裁判の準備をするらしいが、判決を言い渡すだけの裁判でも準備は必要なのか疑問だ。
「私達もお部屋に戻りましょうか。お部屋に着きましたら、少し相談があるのですが……」
オルレアが少し恥ずかしそうに、私に言った。
上目遣いでこちらを見ているのは計算なのだろうか……相変わらず可愛い。
「俺も、相談があるんだが、良いか?」
アークが言った。




