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4. ラーメン職人、行列に並ぶ魔王に見定められる

街に勇者シュピナート一行敗退の知らせがもたらされた。


「嘘だろ……シュピが…?」

宿屋で別れたのは5時間くらい前か。自分はシュピーナートたちの強さを良く知っている。あいつらが城に入る前にやられるとは…


「しまった!間に合わなかったか!」

アイアはショックを受けている。どんぶりを持ちながらなので緊迫感が今一つだが。


「間に合わなかったって?」

「いや、はは!私はもともとここに魔王との和平交渉に来たんで…勇者一行を止めるのも任務の一つだったんだけど…」

「じゃあ止めろよ!呑気にラーメン食ってる場合じゃないだろ!」

「……」

アイアががさつでちゃらんぽらんなのは分かってきたが、これはさすがにシャレにならない。

本人もそれをわかっているのか、黙りこくっている。


「くそ!こうしちゃいられない、なんとかシュピを助けないと…」

俺に何ができるかわからないが、居ても立っても居られない


「すまないが、そのラーメンを一杯いただけないか?」

「こっちはそれどころじゃ…」


振り返ると、そこには黒い装束をまとった長身の魔族が立っていた。精悍で威厳ある顔立ち、青い肌、赤い目はあきらかに人間のものではない。


「ケイ!離れて!そいつが魔王ゼタンよ!」

「えっ?!こいつが?」

「下がって!私が!」

「王家の魔導師アイア・ヴァハテルよ。まさかその豪炎で、村人を焼き払うつもりではないだろう」

「くっ……」

アイアは魔王ゼタンと対峙する。俺は逃げ場もなく立ち尽くすしかなかった。


「皆、落ち着け。和平の使者を待っておったところ、和平の使者は来ず、代わりに勇者一行が来たので、様子を見に来ただけのこと。勇者一行も命は取っておらんよ」

「わ…和平?どういうこと?」

魔王然とした口調で和平を出されても混乱してしまう。


「お前らは我を魔族だ魔王だだと呼ぶが、我らには我らの国があり、家族がある。我らとて、無駄な戦いは避けたいのだよ。それは王家も同じこと」

「そ、そうなのか?」

もっともらしいが人外の魔王の言うことの真偽は判断しかねる。アイアの反応を見る。


「その通りだ…魔王ゼタン。私は王家の名代、このアイア・ヴァハテル。和平の証として『護国のアミュレット』を持ってまいった」

アイアが赤い護符を掲げる。片手にはどんぶりを持ったままだ。


いや、お前それ、めっちゃ無くすところだったじゃん…あそこで自分が救い上げなかったら国が滅んでいたかもしれないのか…いや、アイアのちゃらんぽらんぶりで国の命運が傾くところだったのか…あとどんぶりは置け。会話に入れる状況ではないので、心の中でひとしきりツッコむ。


「おお。不可侵の霊力を持つ『護国のアミュレット』!王家の意向はわかった。しかし、勇者一行の闖入の意図は?和平交渉の裏をかこうとしたのでは?」

「手違いで、護国のアミュレットの送付が遅れただけだ。勇者一行の行動は王家とは関係ない」

アイアは堂々と主張する。

全部お前のせいだな!マジでラーメン食ってる場合じゃなかったな!また心の中で突っ込む。


「そうか…しかし、その言、信じてよいやら……」

魔王ゼタンは空を仰ぐ。


「信頼が崩されたとして、さらに争うもよし。しかし、信頼は長い時間をかけて培うものでもある…まして、長き諍いの果ての上の信頼関係ともなればなおさらよ…」

魔王の顔は怖いが妙に思慮深いことを言う。


「王家の使者アイアよ。我から提案がある。この街に護国のアミュレットを置き、和平のための緩衝都市とする。この緩衝都市を挟んで両国は不可侵とする条件ではどうか」

「……それはありがたい。王家の顔も立つだろう」

「ただし、条件がある」

「条件……?」

「この街が、名ばかりの緩衝地帯では困る。人間と魔族が集い、両者が交流できる街であるべきだ」


なるほど。この魔王、顔の割にはめちゃめちゃいいこと言うな


「……つまり?」

それでもアイアは訝しい目を崩さない。


「この男、ケイに、この街で家系ラーメンを作らせ、両国の和平の象徴とさせるのだ」

「えっ?」

つい声が出てしまった。そこで俺が条件になっちゃうの?うそでしょ?

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