勇気を与えてくれる、魔法の辛口カレーうどん
ここでは特殊設定である『ケーキバース』を扱っております。
『ケーキバース』のある世界では3つの人間が存在しています。
『フォーク』:荒天的に味覚を失った人のこと。
『ケーキ』:『フォーク』が唯一食べて美味しいと感じる人のこと。
『ノーマル』:普通の人間のこと。
本来『ケーキバース』を扱う作品は、カニバリズム等の猟奇的な内容を含むものが多いのですが、この作品は流血表現等が全くないので、安心してお読み頂けます。
なので、最後までお楽しみください( ´ ▽ ` )
蕪木塔磨、二十三歳。僕は今、自分の家のダイニングにて、絶対絶命の危機に陥っている。
何故なら、僕の恋人である蜜季が、『塔磨のためだ』と言ってカレーうどんを出してきたからだ。
しかも、辛口とか嘘だろ!?
「ほれ、塔磨。辛口カレーうどん、出来たぞ〜。うん、ちゃんと俺の黒いパーカ着て、偉いな」
「偉いな、じゃないよ!拒食症克服のためだって言われたから、何が出るかなぁってワクワクしてたのに!出てきたのがカレーうどんって!しかも辛口とか無理でしょ!?」
「無理じゃないだろ?以前、俺の作った辛口カレーライスを駆け足で完食した、とっても勇敢でカッコいい俺の恋人は誰かなぁ」
「うぐぅ!」
酷い!そんな言葉で僕の事をおだてても、カレーうどんなんて食べないぞ!
どうせ僕は、拒食症治りかけの『フォーク』だ。辛口カレーうどんなんて食べたら、きっと『辛すぎる!味がしない!』って投げ出して、口を押さえたままトイレに駆け込むに決まってる!
僕はネガティブな事を考えながら、目の前に出されたカレーうどんを見る。
あぁ、赤くていかにもスパイス多めなこの料理を眺めてたら、涙が出てくるなぁ。
けれどそんな時、僕の近くにいた蜜季が、突然僕の頭を撫でて優しい声をかけた。
「塔磨、あまり無理しなくていいんだぞ? 克服出来なくても、目の前に、俺という『ケーキ』がいる。もし食べるのが無理だとしても、気持ち悪くなってトイレに駆け込んでも、俺が残りを食べるし、口直しに俺を食べてもいいから、な?」
「…蜜季」
「まぁ、そもそもの話、俺も辛口カレーうどん食べたかったんだけどな。ははっ。でも、正直な話、塔磨は甘口も中辛も最初から吐いちゃうだろ?なにせ、辛さより味が勝るしな。そもそも味を感じないか、舌の刺激が強いものの方が、ちゃんと食べられていいだろ?」
そう言いながら、蜜季は声を出して笑う。そんな彼を見ていたら、僕もなんだか笑いが込み上げてしまうよ。
だから、僕は蜜季に続いてクスクス笑いながら口を開いた。
「ふふっ。分かったよ、蜜季。これでも一応、辛口カレーライスを食べられた僕だ。トイレに駆け込まなくても、近くに水もビニール袋もあるから。頑張ってみるね」
「塔磨…。おう、その粋だ!じゃあ、俺は、ビニール袋の準備してるから、思いっきり食べてくれ」
「う、うん!が、頑張ります!」
蜜季の頼り甲斐がある言葉に背中を押され、僕は意を決して、近くの箸置きから箸を取り出す。
そして、うどんを一つ摘んでから、一気にそれを口に運んだ。
「か、か、辛ああああああい!!」
当然の事である。カレーうどんは辛口で、しかも粘度のない液体だから、口内全体が辛さで満たされているのだ。
それはそれはもう、辛くて悶絶するだろう!
けれど、脳内が辛さで埋め尽くされているからか、味を感じなくても一応食べられる!
僕は、辛さに涙を堪えつつも、一生懸命カレーうどんを完食した。
「う、うぅ…やっぱり辛かった。ごちそうさまでした」
「おう、お粗末さま。とっても偉いぞ、塔磨。ご褒美に、俺のキスいるか?」
「蜜季のキス!?いるっ!」
こうして辛さの口直しとして、僕は蜜季と舌を絡めたキスをして、甘い唾液を沢山摂取したのだった。
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