5話:魔王、初の死の淵!?後編
第三の試練をクリアした千歳、その戦闘で負った傷を癒すため、治癒魔法をかけていると頭上から声が響く。それは神官ラザールの声だ。
「ルシルまでを倒すとはな。予想外だ。貴様には最終試練を受けるだけの器があるということか。」
「ラザール、最終試練は確かあんたと戦うんだろ?ならさっさとやろうぜ?」
「いいだろう。我が秘宝を守り抜き、貴様に絶望を味合わせてやろう。」
ラザールはそう言って空から降りてくる。その間にも千歳は思考を巡らす。
(ラザールは神官の頂点だ。何を使ってくるか・・・。とりあえず最初は格闘で行こうか。)
そんなことを考えていると、ラザールが口を開く。
「この勝負、制約を取り付けよう。使えるのは格闘とナイフのみとする。」
「なんだと!?そんなのありかよ!」
「何を使おうと我には勝てぬのだ。何を縛っても同じだろう。」
「いいぜ?やってやらぁ!」
「それではこれより最終試練を開始する。」
そして開始のゴングが鳴り、いきなりラザールが懐を侵略する。
「ちぃ!速すぎだろ!化け物が!」
「これこそが神速。神の御業だ。」
そこから放たれたのは3発の打撃。その全てが速く、正確に急所を突いてくる。
「ごあぁ!くっそ・・・。速すぎる。なら・・・。」
次に踏み込んだのは千歳だ。千歳が得意とするのは超至近距離での戦闘だ。格闘とナイフなら一定利はある。そして放ったのは刺突と打突の嵐だ。だが、その全てをラザールはいなし、躱していく。その瞬間、ラザールは懐からナイフを抜き、真下に向かって振り下ろす。
「ぐぁぁ!なんだ!?いつ抜いた?何も見えなかった・・・。」
「貴様のナイフさばき、一流だな。だが神の域には踏み込めていない。我には当たらん。」
次の瞬間、再びラザールが懐を侵略し、ナイフの連撃を放つ。だが、千歳もただ攻撃を喰らうだけでは終わらない。その連撃の間を縫うようにしてカウンターを放っている。するとだんだんと千歳は慣れ始める。
「ほう、我が斬撃に慣れたか、ならばタイミングをずらそう。」
「ちぃ!せっかく慣れ始めたのに!厄介だ!」
「隙ありだ、さぁ逝け!」
そして放たれたのは千歳の命脈を絶たんとする一撃。それを千歳は避けようとせず、さらに前に出る。案の定、その斬撃は深く切り裂く。だが・・・
「ごふっ!肉を切らせて・・・骨を断つ、ってな?」
「ぐうぅ!なんと。我に攻撃を当てるとは、見事なり。」
なんと千歳は深い斬撃を喰らう代わりにラザールの脇腹にナイフを突き立てたのだ。それは決して浅い傷ではない。
「ラザール。それかなり深いだろ。あと何回耐えられるかな?」
「それは貴様も・・・なに!?」
ラザールが切ったはずの傷。それがなんとほとんど治っていたのだ。それはまさしく「魔王のリング」の効果だ。
「俺の装備、魔王のリングだ。強いだろ?」
「ふん、一度見た攻撃だ。次はない。」
「次は心臓を貰う。覚悟しな。本気出しますか・・・!」(集中しろ・・・!あの時みたいに・・!)
そこから再び始まったのはナイフ同士による激しい切り合い。それはまるで竜巻のようだ。勢いは互角・・・かに思えたが、わずかに千歳が勝っている。
「むぅ!我が斬撃を見切り始めているのか!見事だ。だがそちらの斬撃も当たらなければ意味はなさない。」
「じゃあこれはどうよ!ギア上げるぜ??」
千歳は斬撃の嵐の中に拳や蹴りを織り交ぜていく。これで被弾率は2倍、いや、蹴りを含めれば3倍だ。
「なんと!この斬撃に加え打突までもが一流とは!面白い。」
「しゃべってる暇はないぞ?」
「ごふっ!」
その瞬間、千歳のアッパーが完璧にラザールの顎を捉える。だが・・・
「ごふ・・・。お前もそれやるのね。」
「貴様から学んだことだ。」
なんと今度は千歳の脇腹にナイフが突き立っていたのだ。そして互いに向き合い再び戦いが始まると思った。しかし・・・・・・
「貴様は面白い。殺すには惜しい男よ。この勝負貴様の勝ちだ。」
「んなっ!まじか!?」
「そうとも、貴様には我が秘宝、《ゴッド・フレイム》を進呈しよう。こちらに来るがよい。」
そう言われ、戸惑いながらもラザールの方へ寄っていく。
「《我が秘宝よ・神に至りし彼のものにならん》」
ラザールがそう唱えた瞬間光の粒子が千歳を包む。そしてついに千歳は《ゴッド・フレイム》を手に入れたのだった。
「使い方には気を付けるがよい。下手を打てば貴様ごと燃え去る。」
「あぁ、任せろ。ありがとな、ラザール。またここに来るよ。」
「その時は決着の時だな。楽しみに待っているぞ。」
「じゃあな。」
そんな会話を終え、千歳はその場をあとにするのだった・・・・
千歳が魔城に戻るととある異変に気付く。その異変とは・・・・エミルがいないのだ。
そしてエミルの寝室へ行ったとき、置手紙を見つける。そこにはこう書いてあった。
『貴様の大切なものを奪った。無事に返してほしくば魔族村へ来い。』
「エミル・・・必ず取り返してやる。待ってろ。」
千歳の復讐劇がここから始まるのだった・・・・
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