5話:魔王、初の死の淵!?中編
魔城から南に数百キロほどの距離にある山の山頂、そこでは千歳とエンシェントドラゴンによる激戦が行われていた。千歳は「滅殺剣・烈火」を抜き、既に本気モードだ。
千歳は何度も切りつけるも龍族特有の分厚い鱗に阻まれなかなかダメージを与えられない。そんなことはお構いなしにエンシェントドラゴンはドラゴンブレスやドラゴンクロウを飛ばしてくる。それを紙一重で躱す千歳も猛者だ。
「ええい!どうにでもなれ!《ワイド・フレイム》!!」
それを唱えた瞬間、超高密度の炎熱エネルギーが放たれる。辺りを何もかも焼き尽くさんばかりのその炎はエンシェントドラゴンを飲み込む。
だが・・・・
「ギャオォォォン、グルルルル」
エンシェントドラゴンは何食わぬ顔で千歳をにらみつける。そしてエンシェントドラゴンは爪に力を一転集中させ、千歳に向けて振り下ろす。それはまさに命脈を絶たんとする一撃だ。
「おいおい、それはやばいだろ。」
超スピードで放たれるそれを間一髪で避けきれた・・・と思った。
なんとその爪が突然軌道を変え再び千歳に向かってくる。それを見た千歳は・・・
「おい、さすがにそれは無理だろ・・・。なら最後のあがきだ・・!」
千歳はフルパワーのバックステップを踏む、しかし完全には外せず胸を激しく切り裂かれてしまった。さすがのこれには自己治癒能力を高める「魔王のリング」があっても間に合わない。
「ごふぅっ!まじか・・・ここまでとはな・・・。」
エンシェントドラゴンの攻撃は一撃一撃が必殺だ。避けなければさすがの魔王でも対処が難しい。
そこから始まったのはドラゴンクロウと滅殺剣による激しい乱打戦。滅殺剣には《ドラゴン・キラー》という龍族に対して効果が5倍になるルーンが彫ってある。しかしそれでもなかなかダメージを与えることはできない。そこで千歳はとある魔法を使う。それは・・・
「これでどうだ!《アビス・エクスプロージョン》!!」
《アビス・エクスプロージョン》とは、火・水・雷の3属性の複合魔法で、起動難易度は最高峰に高いとされている。そんな大魔法を簡単にこなす、さすがは魔王だ。
複合されたエネルギーがエンシェントドラゴンの足の鱗を穿ち、貫通する。初めてまともにダメージが入ったのだ。
「よし!これならいける!これはどうだ?《エンチャント・斬鉄》!」
すると今度は「滅殺剣・烈火」に《斬鉄》という魔力を付与する。これは通常の状態よりも切断能力が高まるものだ。
「はぁぁぁぁぁ!!」
そう叫びながらエンシェントドラゴンの懐に潜り込み胸を薙ぐ。すると先ほどまでが嘘のように刃が入り血が噴き出る。
「斬鉄も使えるな。これならいけるぞ!よし!」
千歳はこの時点で勝ちを確信する。だが、それで終わらないのがエンシェントドラゴンだ。そしてエンシェントドラゴンが何かをつぶやいた。
「■■■■」
「!?なんだ?」
すると突然、エンシェントドラゴンが見る見るうちに小さく、そして人型に変化していくではないか。
そしてしばらく待つと完全に人型となった。その容姿はまさに戦闘者と言わんばかりの屈強な肉体だ。そんな元・エンシェントドラゴンが口を開く。
「我が名はルシル。竜人族の頂点にして龍族の長たる者だ。貴様の戦いぶり見事であったぞ。だからこそ、我の本気を見せてやろう。」
(こんなのゲームにはなかったぞ?なんだ竜人族って。とにかく戦うしかないか・・・。ここは魔王で行くか。)
「ルシル、貴様の本気、俺に通用するか?今のうちに負けを認めれば逃がしてやる。尻尾を巻いて逃げるがよい。」
「ふん、貴様がそう言うとはな。逃げぬということは勝負を受けるということ。我が本気とくとご覧入れよう。」
そしてルシルは懐からロングナイフを抜く、それは独特の紋様が浮かぶ刃だ。そして互いの剣呑な光を宿した禍々しい刃同士がぶつかりあうことになる。
機先を制したのはルシルの方だ。ルシルは凄まじい踏み込みと同時に神速のナイフを振るう。それを受けようと千歳は刃を縦に構える。余裕で受けきれると思った。しかし・・・その剣圧は凄まじいもので完全に受けきれず押し切られてしまう。
「ぐおぉ!?なんだこれ。ごふっ!」
「これが我が剣圧よ。受けなど通じん。」
「本当に厄介だ。だが人型になってくれたおかげであの戦術が使える。」
そして次に踏み込んだのは千歳だ。千歳が放ったのは空手と軍隊格闘を織り交ぜた格闘術だ。
「はあぁ!」
「ほう拳か。ならば我もそうしよう。」
そして放ったのは神速の正拳突き。それは見事にルシルの胴を捉える。
「ごはぁ!なんという威力。何度も喰らえんな。」
間髪入れず蹴りや肘打ちも織り交ぜていく。その全てが必中、そして的確に急所を打ち抜いていく。
そしてついに勝負は決することになる。
「ルシルよ。これが我が本気だ。これでも勝てると思っているのか?」
「ぐう!これほどまでとは・・・。人族にこれほどの者がいるとは知らなかった。だが、我も龍族の長。負けるわけにはいかんのだ。」
「ならば互いの極大魔法で方をつけようではないか。」
「それはよい。ならばそうしよう。」
そしてあたりを静寂が包む。そこに佇むのは魔王、そして龍族の長だ。
「準備はよいか。始めるぞ。」
「あぁ、よいぞ。」
「いくぞ!《ギガント・エクスプロージョン》!!」
「《ヘル・バースト・ブレス》!!!」
凝縮された超高密度の極光エネルギーと地獄が生ぬるく聞こえるほどの炎熱エネルギーがぶつかりあう。そしてあたりを真っ白な光が包み込み、それが晴れた時、そこに立っていたのは・・・千歳だ。
「エンシェントドラゴン、ルシル。とてつもない奴だった。でもこれで第三の試練クリアだ・・・!」
第三の試練をクリアした千歳、だが、第四の試練はさらに苛烈を極めていくのだった・・。
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