7話:最終決戦 後編
魔族の最高傑作であるダリス、そして上級魔族アイーダを激戦の末撃破した千歳はついに魔族城の最上階へたどり着いた。
そして千歳がその重く分厚い扉を開く。
ギィィと音を立てて開かれる扉。その奥には・・・グリムとエミルの姿があった。
「魔王様!やっぱり来てくれたんですね!」
「エミル!その怪我、大丈夫か!」
「僕は大丈夫です!それよりもこのグリムを倒さないと・・・。」
「あぁ、待っていろ。この時のため魔法を温存しておいたのだ。一瞬で倒してやる。」
そんな会話をしているとそれを遮るかのようにグリムが口を開く。
「我を倒すと申すか。貴様ならそれも可能なのだろう。ならば最初に質問をしておこう。貴様はなぜ過去、魔族を壊滅寸前まで追いやったのだ?」
「ふん、そんなことか。貴様らが我に楯突くからだろう?」
そう、千歳は過去に魔族を壊滅寸前にまで追いやっている。その恨みこそが今回の件の引き金となったのだ。
「我ら魔族が貴様に楯突いただと?我らが何をしたというのだ。」
「我が魔城の近くの集落を襲ったのだ。それを止めたまでのこと。」
「なに?そんなことをするわけ・・・」
「あったのだ。これは事実だ。貴様がやったのでなければあれは前の長がやったのか?」
「そんなことをしていたのか・・・すまなかった。全ては我ら魔族が招いたことだったのだな。この少年は解放しよう。」
「ほう、そうか。それはありがたいことだ。」
そう言ってエミルにつけていた拘束を解く。
「さぁ、行け。」
「は、はい。魔王様~!!怖かったです~!」
「ふん、泣くな。少し待っていろ。決着をつける。」
「ほう、我の意図を汲み取ったか。そうだ。我はこれこそを狙っていた。貴様と一対一で戦えるこの日を。」
「そのようなこと、我にはお見通しだ。」(本当は読心術で読んだんだけどな。)
「ならば決着をつけようか。」
そう言うと懐から何かを取り出す。それは特殊な形をしたタクティカルナイフ。その名は「魔刃:ドラグノフ」言わずもがな物理反射を無効にする装備だ。
「我が魔刃に勝てるかな?魔王よ。」
「ふん、愚問だ。我を下すことなどできん。貴様には圧倒的な暴力というものを見せてやる。」
そして二人が構える。千歳の手にはもちろん神殺刀だ。
機先を制したのは・・・・グリムだ。グリムの魔刃から凄まじい横薙ぎが飛ぶ。
「さっそく勝負ありだ。」
「そんなものは効かん。」
だがそれを受けきり、刃同士の激しい切り合いへと持ち込む。
千歳はその切り合いの中に拳を織り交ぜる。この襲撃の中で身に着け、幾度も見せてきた技だ。
その圧倒的な手数を前にグリムは圧倒され、防戦一方となる。
「むうぅぅぅぅ!!これが貴様の技か!凄まじいな!」
「この程度で怯むか!まだまだだな。」
そしてそのうちの一発がついにグリムのガードをすり抜ける。それはあまりにも強烈な一撃。グリムにそれを避ける術はなかった。グリムの鼻からは蛇口をひねったように血を垂れ流す。
「ぐおぉぉぉぉ!!ごふっ!」
「これが我が磨き続けてきた技だ。」
「くっくっく・・・!楽しいぞ!魔王よ!さぁまた切り合おうか!」
「切り合う必要はない、ここで貴様は跡形もなく消える。」
「何を言っている?・・・・まさか!?」
「そのまさかだ。さらばだ、魔族の長よ。素晴らしき者よ。《ゴッド・フレイム》!!!」
「なっっっ!!」
そう唱えた瞬間、千歳の腕に超密度の炎熱エネルギーが宿る。
次の瞬間、放たれたのは獄炎の焔。それがグリムの体を包んでいく。グリムは自身が焼けて炭になっていくのを感じていた。
「ごおぉぉぉぉぉ!!」
轟々と燃えていく中、グリムの断末魔が悲しく木霊する。
「これでよかったのだ、奴は死に場所を探していた。俺にはそう見えたのだ。」
「魔王様・・・・。」
エミルは千歳が少し悲しげな顔をしていることを感じ取っていた。
そして燃え滾る炎が止むとそこには「魔刃:ドラグノフ」を残してグリムは宣言通り跡形もなく消え去っていた。
それを確認した千歳はエミルにこう言う。
「さぁ、魔城に帰って飯にしよう。貴様がいないと美味い飯が食えんのだ。」
「はい!とびきりのおいしいご飯をお届けいたします!」
そう言って二人は魔城に向けて歩き出すのだった・・・・
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