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第2章 モブメカは戦う理由を見つける

 村に戻るさなか、ガントは消沈しているレンティアを心配する。

 マーナも何も語らず、ガントは何かあるのかと勘繰るがそこにイオルンのアラート。

 それは、地球統一連合軍の機体の識別反応をキャッチしたことで鳴るものだった。


 ガントはラトルナ村に煙が上がっているのを見つけ、さらにそこに居座っている三機のマグナクルスを発見してしまう。それは統一連合軍の最新鋭機ガンエグゼスだった。

 村の広場には村人が集められており、ラトルナ村は完全に占領されていた。


 ガンエグゼスの部隊長は、かつて新人史同盟を裏切って統一連合軍側に寝返ったヴァレンティノ大尉であった。大尉はガントの元上司であり『新人種』による人類の統治を訴える生粋の『新人種』信奉者でもあった。彼らもまた異世界に転移していたのだ。


 大尉の目的は、敵軍であるガントではなくマーナとレンティアだった。

 レンティアを渡さなければ集めた村人を殺すと脅してくる大尉。レンティアは彼の顔を見て、今まで以上に怯える。それを見たガントは大尉達に対して怒りを抱く。


 だが大尉はガントを無視して「レンティアはこんな村にいるべき存在ではない」と言い出す。そして彼女を守ろうとするガントに、大尉はレンティアの正体を告げる。

 ガントの戦友を撃墜した『白翼の騎士』ガンレイヴのパイロットが、レンティアだった。

 事実を知ったガントは、抑えきれない憎悪からレンティアを睨みつける。


 仲良くなりかけていた彼からのまなざしに、レンティアは堪えきれずに泣き出してしまう。それを見て大尉は笑い出して『新人種』の価値もわからない男にレンティアの守護者はできない。自分こそがそれに相応しいのだと誇らしげに語る。

 大尉が同盟から連合に寝返った理由も、連合の方が『新人種』に関する研究が進歩していることだった。そして大尉は、レンティアが所属する部隊の指揮官でもあった。


 再び大尉がマーナにレンティアを渡すよう迫る。しかしそのとき、村人が投石などで大尉を攻撃して隙ができて、マーナがミスリルの魔剣で大尉に切りかかる。

 しかし、マグナクルスの装甲と同じFSSAのボディアーマーを切り裂くことはできなかった。その事実に驚きながらもマーナは「やっぱり」と何かを納得する。


 村人達がマーナとレンティアに逃げろと言って、ガントにも二人を助けてくれと頼む。しかしレンティアの真実を知ったガントは懊悩の中にあり、咄嗟には動けなかった。

 大尉が彼に銃を向ける。マーナは彼を庇おうとして、代わりに撃たれてしまう。

 驚くガントにマーナは今だけは力を貸してと言う。それを聞いたガントは、マーナとレンティアを連れてフォルトBで逃走する。大尉達は村人によって阻まれる。


 西の森に逃げ延びたガント達だが、マーナは力尽きてしまう。

 彼女の傷は深く、治癒魔法でも治せるものではなかった。死を覚悟したマーナはガントにレンティアを守ってやってくれと頼むが、彼はうなずくことはできなかった。

 マーナはガントの事情を察しながらも「ラトルナ村を守ってくれたときのことを思い出して」と告げて「何か理由があったから、戦ってくれたんでしょう?」と尋ねる。


 ガントの脳裏に「何のために戦うのか」という戦友からの質問がよぎる。

 そしてガントはレンティアに「やるだけやってみる」とだけ答える。マーナはうなずき「あなた達ならきっとできるから」と言って、レンティアを見る。

 マーナ、まだ自失状態にあるレンティアに笑いかけて「ありがとう」と言って息絶える。


 ガントはマーナの墓を作ったあとでレンティアに逃げるぞと言う。だがレンティアはその場から動かず、カッとなったガントは彼女の腕を掴もうとするが、レンティアはそれを振り払ってマーナを殺したのはガントだと怒りの声を響かせる。

 ガントを庇ったから、マーナは撃たれた。あれさえなければマーナは死ぬことはなかった。それを指摘されたガントは逆に「おまえだってあいつを殺したじゃねぇか」と反論。


 戦友のことだと察して言い返せなくなるレンティアに、ガントは「何で俺があいつを殺したおまえを守らなきゃいけないんだ!」とブチまけ、レンティアは涙目になって「守ってなんて言ってない!」と彼に言い返す。ガントはさらに怒りに駆られて銃を向ける。

 レンティアは半ばやけくそになって「撃ちたければ撃てばいい」と言い出す。


 そして感情のままに連合軍に利用され続けた日々を吐露する。『新人種』の能力のことを知られて、家族を人質に取られてガンレイヴに乗せられた。そして活躍すると家族や友人は自分を遠ざけるようになり、軍の中にしか居場所はなくなった。

 マーナとラトルナ村の人達だけが自分に優しくしてくれた。だから、自分は逃げないで村にいるみんなを助けに行く。そう言い出すレンティアを、ガントは「行くなら一人で行け」と冷たく突き放す。そしてマーナの墓の前で二人は互いに背を向ける。


 フォルトBのコックピットに戻るガント。自分の戦友を殺した仇が死地に向かった。彼女は間違いなく村人を救えず、マーナを失った以上の絶望を味わうことになる。

 それはガントに喜ぶべきことのはずなのに、喜べない自分がいる。


 一人になったガントは「俺だけか……」と呟くがイオルンが『当機が現存しています』と事務的ながらも慰めるようなことを言ってくる。ガントはうなずきつつ、このコックピットが自分の最後の居場所なのだと気づく。今の彼には守るべきものも何もない。


 このまま逃げても、整備不全状態にあるフォルトBはいずれ動かなくなり、この世界に関する知識を持たない自分は野垂れ死んで終わるだろう。だがそれでもいいだろう。レンティアの言う通り、恩人であるマーナが死んだ原因の半分は自分にあるのだから。


 深い自己嫌悪と暗い絶望に覆われかけるガント。そのとき、彼はマーナが最後に言ったことを思い出す。最初に自分が村を助けたとき、そこには何か理由があったでしょ。と。

 戦友から問われてこともあり、ガントは「俺が戦う理由、何だっけな」と呟く。するといきなりモニターが乱れて、いきなり古い映像が再生される。

 そこに流れる内容を見たガントは何も言えなくなってしまい、映像が終わったあとで彼はモニターを殴りつけて腹の底から絶叫する。


 一方、ラトルナ村に戻ったレンティアは大尉に優しく迎え入れられる。彼は自分がレンティアを守ると言う。しかし、彼が自分を利用する気しかないと見抜いていたレンティアはそれを拒否する。すると大尉は本性を見せて、自分に従わない場合は村人を皆殺しにして村を焼き払うと脅してくる。


 レンティアは自分はやはり利用されるしかないのかと思いながらも村人達を見捨てることはできず、諦め半分になりながら大尉の脅しに屈しかける。

 しかし、それでは不十分と判断した大尉はダメ押しでレンティアの心を折るために部下に命じて村人の一人を彼女の目の前で撃ち殺そうとする。マーナのこともあり、レンティアは必死に止めるよう大尉に言うが、彼は笑うだけでそれを聞き入れない。


 どうしてこうなってしまうのか。自分には誰も守ることはできないのか。誰も自分を守ってくれないのか。今度こそレンティアの心が本当の絶望に呑まれかける。

 だがそのとき、森の奥から飛び出してきたフォルトBが大尉の乗るガンエグゼスをブン殴り、レンティアをさらってそのまま再び森の中に突っ走っていく。


 何事かと思うレンティアに、ガントは「プライドの高い大尉はああすれば必ず自分達を追ってくる」と告げて、このまま大尉達を村から引き離す作戦であることを教える。

 ガントはレンティアに「すまん」と素直に謝って、この戦いが終わったら自分のことはどうしてもいいと言う。さっきとはまるで態度が違う彼に、レンティアは戸惑う。


 森を抜けて遺跡の前に着いたところで、大尉と部下達が追いついてくる。

 大尉はガントに「『新人種』を独り占めするつもりか」と尋ねる。その言葉からも、彼にとってレンティアは道具でしかないのだと伝わってくる。そしてガントはそれに怒る。

 ガントは「おまえのくだらない事情に子供を巻き込むな!」と叫ぶ。大尉はレンティアこそ世界を統べるに相応しい存在だと返すが、ガントは「こいつは子供だ」と一刀両断。

 両者相容れず、ガントが乗るフォルトBと三機のガンエグゼスの戦闘が始まる。


 性能差は歴然としているが、ガントは戦場を十年生き抜いた操縦技術と兵士の勘によって性能の格差を埋めて、大尉達に食いついていく。

 そのさなか、モニターの片隅に映し出されたのはどこかの作業場の光景。ガントはレンティアに「十年前、俺が働いていた宇宙コロニーの作業場だ」と教える。


 映像の中で、元々人型重機の乗り手兼技師であったガントは同僚や同僚の子供達と楽しそうに日々を過ごしていた。ガントは独身だったが、子供好きでもあった。

 彼にとって何よりも大切だった日常は、しかし勃発した戦争によって奪われた。ガントが働いていたコロニーは彼が他のコロニーに出張中に破壊されてしまった。

 だが、ガントはそこで統一連合軍ではなく戦争そのものに強い忌避感を感じた。


 戦争を一日でも早く終わらせて、平和な日常を取り戻す。

 それが戦う理由だったはずなのに、十年を超える戦いの中で、いつしか忘れてしまった。

 ラトルナ村を助けたときに感じた怒りも、村が蹂躙される様を見て自分の過去を思い出したからだった。やっぱり俺もバカな大人の一人なんだと、ガントは自嘲する。


 そして彼はレンティアに再び謝る。おまえを戦わせたのは俺達だ。守るべき子供を戦争の道具にするという愚行。それを止められなかったバカな大人達の責任だ、と。

 そして彼はレンティアに告げる。マーナがそうであったように、自分はおまえを道具にしない。子供のおまえを、大人の俺が守ってみせる。おまえを日常に戻してみせる。


 戦いは激しさを極め、ガントは二機を活動不能に追い込むも、フォルトBもダメージを受けて限界が近づく。大尉は無傷であり、戦況は明らかにガント不利。

 フォルトBは蓄積したダメージからいよいよ動きが鈍る。もはや腕前だけでは性能差を覆しきれなくなってくるが、そのときレンティアが大尉の動きを先読みする。


 ガントは「おまえは戦わないでいい」と言うが、レンティアはそれを拒んで「これは私の戦いでもあるから!」と返す。西暦世界で同じ人間とは戦いたくないと思い続けながらも戦わされ続けてきたレンティアが、初めて自分の意志で人と戦うことを決意した。


 レンティアの先読みとガントの操縦技術によって、フォルトBはついに大尉のガンエグゼスを追い詰めることに成功する。だが、これまでの連戦でフォルトBの機体負荷も限界を迎えつつある。そんな中で、大尉はガントに対しコックピットを開けて命乞いをする。

 ガントは最後に大尉に「遺跡のドラゴンを殺したのもおまえか」と尋ねるが、大尉は何のことか理解できていない。そのとき、遺跡の入り口が盛大に爆ぜる。

 そこから現れたのは黒いマグナクルス。


 その形状にガントは見覚えがあった。それは『白翼の騎士』ガンレイヴだった。

 だが、白かった機体色は黒に染まっており、パイロットであるレンティアはこちらにいる。状況が呑み込めないガントへ、黒いガンレイヴが襲いかかってくる。

 間一髪回避したガントの目の前で、大尉のガンエグゼスに取りついたガンレイヴの胸部のコックピットハッチが開く。だがそこには誰も乗っていなかった。


 ますます混乱するガント。ガンレイヴのコックピットから伸びる触手らしきケーブルが大尉に絡みついて、そのまま彼を自らのコックピットの中へと取り込んでいく。

 信じがたい光景を見ておののくガントに、顔を青ざめさせたレンティアが「ドラゴンを殺したのはあいつよ。『呪物化』したガンレイヴだったのよ」と真実を告げる。

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