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【WEB版】エレメントエンゲージ ―精霊王の寵姫たち―【第1巻発売中/第6部まで完結】  作者: 雨宮ソウスケ
第4部

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第4話 父の行方は

 およそ二時間後。

 リタたちは別の部屋に案内されていた。

 樹上家屋(ツリーハウス)の一つ。

 謁見の間と呼ばれている場所だった。

 広くはあるが、樹皮で編まれた敷物ぐらいしかない簡素な部屋でもある。

 流石に武器の類は取り上げられたままだが、リタたちは拘束もなく客人としてこの部屋に通されていた。

 現在、この部屋にいるのは十人。

 下座に座るリタたち五人と、無事に合流したクロ。

 そして上座に座る金色の少年と、彼の後ろに控える三人の少女たちだ。

 右から兎人(ラビト)族、虎人(ティガ)族。そして腕を人化させているため確証はないが、翼のような髪質から鷹人(ホウク)族だと思われる少女が並んでいる。


「改めて名乗るぜ」


 あぐらをかいた金色の少年が言う。


「俺の名はホロ。この里の長をしている獣王ホロだ」


 一拍おいて、


「そんで後ろにいんのが、俺の愛する嫁さんたち。右から兎人(ラビト)族のササラ。虎人(ティガ)族のテティ。そんで鷹人(ホウク)族のアルサだ」


「「「―――え?」」」


 リタたちは少し驚いた。

 獣人族は一夫多妻が多い。

 早婚も多いので少年が既婚者でも不思議ではない。

 しかし、妻が全員他種族の獣人だというのは驚きだった。

 そんな中、


「獣王の第一妃・ササラです」


 ササラが深々と頭を下げた。


「……第二妃のテティだ」


 テティと紹介された虎人(ティガ)族の少女が腕を組んで名乗る。

 そして、


「第三妃のアルサでございます」


 鷹人ホウク族の少女が挨拶をした。


「まあ、色々あってさ。俺らは今、他種族との垣根を壊そうとしてんだよ」


 金色の少年――ホロは朗らかな笑みを見せて言う。

 リタたちはまだ少し困惑していたが、


「初めまして」


 リタが代表して声を発した。


「あたしたちは冒険者のD級パーティー・星照らす光(ライジングサン)です。あたしはリーダーのリタ=ブルックスと言います」


「……へえ」


 リタの名乗りにホロは双眸を細めた。

 その後ろで、ササラとテティが少し目を見開いていた。

 アルサだけはキョトンとしている。

 そうして、メンバー全員が名乗りを上げてから、


「なるほど。あんたがリタさんか。けど、そっちのホウプスさんは何なんだ?」


 ホロはそう告げて、ジュリの方に視線を向けた。

 ジュリは「え?」と目を瞬かせる。


「私ですか? 何か気になることでも?」


 ジュリがそう尋ねると、


「いやなに。リタさんの方はマーキングとは違うが、似た匂いがすんのは分かるんだが、あんたからもほんの少しだけ匂いがしたからな。不思議に思ってたんだが、まあ、それは今から話を聞けばいいだけか」


 ホロは独白まじりにそう答えてから、


「ともあれ、あんたらの目的は事前にクロから聞いているよ」


 そう告げる。リタたちの視線がクロに集まった。

 クロは少し緊張しながらも、


「ぼ、ぼくから伝えられることは伝えました」


 そう答えた。リタは「ありがとう。クロちゃん」と微笑んでお礼を言った。

 ホロはふっと笑って話を続ける。


「そんで、あんたらは俺の姉貴のアロと、黒仮面に会いに来たんだよな?」


「え? お姉さん?」


 いきなり初めて聞く情報に、リタたちは目を丸くした。

 一方、ホロは気にせずに、


「おう。アロは俺の姉貴だ。そんで黒仮面だが……」


 そこであごに手をやり、ニヤリと笑った。


「大当たりだよ。黒仮面――義兄貴(アニキ)の名前はライド=ブルックスだ」


「「「―――っ!」」」


 リタたちは息を呑んだ。

 特にリタとジュリはかなり浮足立った。

 思わず軽く腰を上げていた。

 今にもホロに詰め寄りそうである。


「おいおい。二人とも。王さまの前だぞ」


 ライラが慌てて忠告する。


「そうだよ。落ち着いて。ジュリちゃん。リタちゃん」


 と、カリンも制止の声を掛ける。

 リタとジュリは「「グヌヌ……」」と二人揃って呻いた。

 すると、


「獣王陛下」


 ジョセフが両手をついて頭を垂れる。


「お尋ねしてよろしいでしょうか?」


「ああ。構わねえよ」


 ホロが答える。

 ジョセフは「は」と頷き、


「ここにおられる我が主君は、ライド=ブルックス氏のご息女であります。行方不明の父君を探してこの地に訪れました。氏はこの地におられるのでしょうか?」


 興奮気味のリタに代わってそう尋ねた。

 実に分かりやすい問いかけだ。

 クロも含めて、リタたちの視線はホロに集まる。と、


「う~ん……」


 ホロはボリボリと頭をかいた。

 そして、


「実はさ。ライドの義兄貴(アニキ)はもうこの里にはいねえんだよ。俺らを奴隷商から助けてくれた後、しばらくここに滞在してから旅立っちまった」


 そう告げた。


「ええェ……」「そんなぁ」


 と、リタとジュリは露骨にがっかりした顔を見せる。

 ホロは――ちなみにササラとテティも――申し訳なさそうな表情をした。


「すまねえな。リタさんが義兄貴(アニキ)の娘さんだってことがマジなのは分かるよ」


 う~んと唸りつつ、両腕を組む。


「まあ、あんたの話はあの人たち(・・・・・)からも聞いていたし、リタさんからは親子特有の深い愛情の匂いもしてるしな。まあ、どうしてかホウプスさんの方からも義兄貴(アニキ)の匂いが微かにしてんのが謎なんだが」


「あ。そういうこと。それなら」


 ジュリが手を軽く上げた。


「私は先生――ライドさんの弟子なの。半年ぐらい前まで修行を受けてたわ」


「ああ。なるほどな。そういうことか」


 ポンと手を打ってホロは納得する。


「その時の匂いがギリギリ残ってんのか」


 そう呟いた時、


「あ、あの!」


 リタが勢いよく身を乗り出した。

 かなりそわそわとして、


「それで父はどこに向かったんですか! どの街ですか! どこの国ですか! あっ、そうだ! アロさんって人ならそれを知っているんですか!」


 再び詰め寄りそうな勢いでそう尋ねた。

 まあ、返答次第では間違いなく詰め寄ることだろう。


「ああ~もう。このファザコン娘は」


 やむを得ずライラが立ち上がって、リタを両腕で羽交い絞めにした。

 膝立ちのままリタが「グヌヌ!」と呻いていると、


「いや。姉貴も行き先は知らねえよ。つうか姉貴もこの里にはもういねえしな」


 手をパタパタと振って、ホロはそう返した。

 その台詞に全員がホロに注目する。


「え? アロさま、今は里におられないのですか?」


 と、クロが呟く。これはクロも初耳だった。

 ホロは「ああ」と頷いた。


「姉貴も旅立ったんだ。義兄貴(アニキ)の後を追ってな」


 そこで優しい眼差しを見せる。


「姉貴はさ。元々ライドの義兄貴(アニキ)に付いていきたかったんだけど、俺の護衛のために里に残ってくれたんだ。けど、それもようやく目途がたったからな」


 小さく息を吐いて、


「だから、俺はどうにもくすぶってた姉貴の背中を押したんだ。義兄貴(アニキ)に会いたくて仕方がねえ姉貴の背中をさ」


「「「……………」」」


 リタたちは沈黙する。

 特に、リタとジュリは何とも言えない顔をしていた。

 今の話だけでアロという女性の想いを察することが出来た。

 二人としては心中穏やかではいられない。


(ムムム。やっぱり)


(先生ってやっぱりモテるんだ)


 リタとジュリが内心で唸る。

 ただ、ここまではある意味で予想していた内容でもあった。


「だからさ」


 予想外だったのはその後のことだ。

 ホロが告げたこの台詞であった。


義兄貴(アニキ)を追ってきたあの二人(・・・・)と一緒に旅立つことを勧めたんだよ」









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