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【WEB版】エレメントエンゲージ ―精霊王の寵姫たち―【第1巻発売中/第6部まで完結】  作者: 雨宮ソウスケ
第2部

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第10話 爆撃のジュリエッタ

「……てめえ」


 軽戦士の男が歯を軋ませた。


「爆撃のジュリエッタか! 竜殺し(ドラスレ)パーティー、勇者アレスの仲間かよ!」


「……今は違うわ」


 ジュリは少し眉をひそめて答える。


「私はパーティーを抜けたの。今はソロよ」


「ふん。勇者に捨てられたのか?」


 重戦士の男が大剣を肩に担いで鼻で笑う。

 それから、まじまじとジュリの体を凝視して、


「まあ、顔はともかくその貧相な体ではな。抱き飽きるのも仕方がないか」


「……ぶっ殺すわよ。お前」


 ジュリが氷より冷たい眼差しを向けた。


「そもそも私とアレスはそんな関係じゃないわ」


 言って、竜骨の杖を男たちに向ける。


「それよりあなたたちはもうおしまいよ。ギルドを舐めすぎね」


 一拍おいて、


「あなたたちの行動はギルドも目を付けていた。今このダンジョンには私以外にもC級の冒険者たちが多くいるわ。あなたたちを拘束するためにね」


「――なんだと!」


 魔法剣士が声を荒らげる。


「くそ! どうする!」


 仲間たちの顔を見る。


「どうするもこうするもねえ」


 軽戦士の男が答える。


「まずはこいつを殺す。そんでそこらに寝てる奴を人質にして強行突破だ」


「そろそろこの国での活動も潮時だったからな」


 重戦士が大剣を構える。

 三人の男は、ジュリを囲んでそれぞれ身構える。


 一方、横たわるリタは脂汗を流しつつもその状況を見据えていた。

 三対一。しかも接近戦に不利な精霊魔法師だ。

 恐らく男たちの力量はD級ぐらいだ。

 いくら格上のC級冒険者であっても、自分も加勢した方がいい。

 リタがそう考えていると、


「無理しなくてもいいわよ」


 ジュリがリタに言う。


「すぐに片付くから」


「言ってくれるじゃねえか! 勇者に捨てられた情婦が!」


 魔法剣士が駆け出した!

 同時に別方向から軽戦士も跳躍してくる!


(危ない!)


 リタは目を見開くが、


「馬鹿ね」


 ジュリはどこか妖艶に笑った。


地爆陣(フレム=ベルドラ)


 そう唱えて竜骨の杖で地面を打った。

 直後、大地から噴火のように爆炎が噴き上がった。

 それらは一瞬で二人の男を呑み込んだ。

 絶叫も上げる間もなく、二人は黒焦げになって倒れ伏せた。

 即死はしていないが、全身をビクビクと動かしていた。


「お、お前ら!」


 重戦士が息を呑んだ。


「私が呑気に話し込んでいるとでも思ったの?」


 一方、ジュリは最後の犯罪者に告げる。


「三対一なのよ。当然、設置型魔法の仕込みぐらいしておくわ。ああ、それと」


 一拍おいて、唇に人差し指を当てる。


「あなたたちは生死問わずデッド・オア・アライブよ。来るのなら覚悟することね」


「――くそが!」


 重戦士は兜を地面に叩きつけた。

 鬼人族の特徴である浅黒い肌と角が露になる。

 さらに男は大剣をジュリに向かって投げつけた!

 流石にジュリも驚いてかわすが、その隙に男は間合いを詰める。

 途中で魔法剣士の長剣を拾い、ジュリに対して斬撃を繰り出した。

 何度も何度も斬撃が襲う。

 ジュリは巧みに竜骨の杖を操って斬撃を凌いでいた。

 武器を軽くし、手数を増やして精霊魔法師のジュリを追い込むつもりのようだ。


(――まずい!)


 この状況に、リタは唇を強く噛んだ。

 流石にこれはあまりに不利だ。

 しかも相手は鬼人族。その体力は人族とは比べ物にならない。

 リタは魔法での加勢を考える。

 が、その時。


「舐められたものね」


 ジュリの竜骨の杖の捌きが一気に速くなる。


「のろまな剣技。先生の足元にも及ばないわ」


 言って、驚くべきことに鬼人族の男の長剣を弾き飛ばしたのだ。

 これにはリタも男自身も唖然とした。


「先生からは接近戦も習っていたのよ。このまま杖で打ちのめしてやってもいいけど、まあ、私は精霊魔法師だしね」


 言って、ジュリは竜骨の杖を手離した。

 そして両手に拳を作って、


焔羅拳(フレム=ダダンロウズ)


 そう唱えた。直後、両の拳が炎に包まれる。

 奇しくも、リタがガルボスを仕留めた魔法だった。


(……あれ?)


 しかし、微妙に違うことにリタは気付いた。

 よく似ているが、別物の魔法のような気がしたのだ。


「これは言わば常時展開型の火焔拳(フレム=ダダン)よ。私の魔力が尽きるか、私自身が終わらせない限り消えない。そして発動は簡略した呪文で済むわ」


 ジュリは微笑む。

 そうして、


火焔拳(ダダン)!」


 その小さな右拳を重装甲の大男に叩きつけた!

 前面に小爆発が起きて装甲が弾け飛ぶが、それだけでは鬼人族の男は倒せない。


火焔拳(ダダン)!」


 続けてジュリは左の拳を叩きつける。これも爆発を起こして装甲を打ち砕いた。

 ――が、これも致命傷には至らない。


「この小娘がッ!」


 男は自身の耐久力にモノを言わせてジュリを捕らえようとするが、


火焔拳(ダダン)!」


 今度はアッパーが打ち出される!

 これも爆発を起こした。男は大きく仰け反った。

 そして――。


火焔拳(ダダン)! 火焔拳(ダダン)! 火焔拳(ダダン)! 火焔拳(ダダン)ッ!」


 胴体を射抜く神速の四連撃。どれも爆発を起こした。

 黒煙と共に粉々に砕け散っていく装甲。横から見ているリタは呆気にとられていた。


 ジュリの猛攻はまだ終わらない。

 ふううっと呼気と共に左手を前に、右拳を腰だめに構え直して、


火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)ッ!」


 もはや精霊魔法師とは思えない動きで爆拳を打ち続けた。

 時には背後にまで回り込んで繰り出していく。

 ジュリの加速が止まらない。


火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)火焔拳(ダダン)ッッ!」


 洞窟内に爆発音だけが続いた。

 振動で地面が少し揺れている気さえする。

 リタはただただ蒼白な顔で「あわわ」と慄いていた。

 そうして、


「……ふう」


 満足したように背を向ける。

 拳の炎が消えて、ジュリは赤い髪を払う。

 男はまだ立っていたが、全身が火傷だらけですでに気を失っていた。


「誰が貧相な体よ。私はまだ成長期なだけ。ララが早熟なだけよ。それに私だってこれからあの人に大きくしてもらうんだから」


 ジュリは少し赤らんだ顔でそう呟いてから、


「とにかく地獄で後悔しなさい」


 と、言い捨てる。

 男が倒れたのはその直後だった。




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― 新着の感想 ―
[良い点] ジュリの奇妙な冒険はじまた
[良い点] 火焔拳のシーン、映像だと滅茶苦茶格好良い予感。 アニメ化はよ…!(早い) [気になる点] ついに出会ってしまった弟子と義娘。 次回、自分と同い年くらいの娘がいる男を狙うやべー弟子vs.自分…
[一言] ごめん だだんだだん言ってるの笑える
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