酒場の娘
三作目。初の連載作品です。
酒場の娘、フレアの物語。
どうぞよろしくお願い致します。
※あらすじとほぼ同じ内容です。
ヒールが煉瓦を軽快に鳴らすときが好き。
特に理由がなくても、前に進んでるって感じられるから。
✯✯✯
私はいわゆる一般国民というやつで、平々凡々な家庭に産まれ、そこそこの生活を送っている。
国を統べる王様とか、ロマンチックな恋をするお姫様に憧れないと言ったら嘘になるけれど、それでも和やかで幸せな日々に結構満足しているのだ。
家が飲食店……まぁ酒場か、ということに、恵まれたご近所付き合いが相まって、かわいいかわいいと言われて育ってきた。それが嬉しくて、影で軽い運動をしたり、夜は出来るだけ早く寝るように心がけたりして、ずっとみんなに愛される努力をしているのは私だけの秘密。みんな完璧でかわいい私を望んでいるだろうから。
「フレアちゃ〜ん、こっちも酒瓶追加で〜!」
いけない、ぼーっとしていたわ。
「はーい!少々お待ちくださいませ!」
――いやぁ、今日もフレアちゃんは元気だねえ。
――細やかな気づかいができるうえ華やかな子よね、ほんと。
お褒めの言葉を仕事のお供にしながら、私は笑う。それが私だと、フレア=アーリスだと思ってもらえるように。
どうかこのまま、誰にも私の完璧がまやかしだと気づかれませんように。そう願いながら、才能なんかじゃなくて努力なんだけどなと心の中で呟いてしまうのはなんでだろう。
それでも。
私は、完璧な酒場の看板娘である自分が好きだから頑張れる。そうあることが、私のすべて。そうでなければ、フレアじゃないって思えてしまうほどに。
さあ、酒場が賑わう夜が始まる。酒樽の用意をしなくては。
今日も私は、酒場の娘としての生活を満喫している。
更新頻度は低めになってしまうかもしれませんが、気長に付き合って頂けると嬉しいです。
よろしくお願いします。