6話・クラネの森林
俺達は宿屋から出て都市の中を歩く。
「あ、ガスト! あれ食べたい」
「さっき朝ごはんを食べたばかりだろ」
「別にいいだろ」
「……仕方ないか」
エリンが発見したホットドッグ屋に寄って2つ購入。俺達はホットドッグを片手に食べ歩く。
(今日どこに向かうかの説明だな)
俺はホットドッグに夢中になっているエリン。彼女の方を見ながら口を開く。
「今日はゴブリンがいるクラネ森林の奥に向かおうと思う」
「うん? お前の能力ならもっと強いところの方が効率は良くないか?」
「いや、今は確認が先だ」
「確認? アタシの能力か」
「そうだ」
確かに強い魔物が生息するエリアで能力を奪いまくる方が効率的だ。
(だけど先にやる事がある)
呪いスキルの影響で何かの手違いが起きる可能性がある。
(先にやることはエリンに付与した能力の確認だよな)
エリンに付与した能力の確認。俺はそれが先だと思いゴブリンが生息するクラネ森林を選択。
(それに死にたく無いしな)
最低でもムカつく高スペック達。コイツらに復讐するまでは死にたくない。
(絶対に高スペックは潰す)
俺は高スペック達への事を考えつつ安全策を立てて進める事を決める。
「お前はクラネの森林で大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫だぜ。それにアタシは暴れられるところが有れば大丈夫だぜ」
「それならいいか」
エリンは自分が暴れられたらそれでいいみたいた、俺は彼女の発言に少し引きながら一緒に都市の門の方を見る。
(大丈夫か?)
俺はエリンと共に門を潜り、外に出てゴブリンが生息しているクラネの森林に向かう。
「なあガスト、この辺に生息している雑魚は倒さなくてもいいのか?」
「うん? あぁ、この辺の雑魚は経験値やスキルが美味しくないし放置する」
「了解」
マグノリア市近辺に生息しているのはレベル1〜3の雑魚魔物。
(コイツらを倒しても稼ぎにくいしな)
雑魚からレベルやスキルを吸収しても旨味が少ない。俺は周りにいるホーンラビットとかを無視。エリンは少し残念そうな表情をしながら口を開いた。
「そういえばゴブリンが生息しているクラネの森林はどれくらいかかるんだ?」
「うーん、都市から1時間の距離だな」
「げっ! 結構遠いな」
クラネの森林まで1時間かかる聞いてエリンはゲンナリした表情に変わる。
(そうだよな)
エリンの姿を見た俺は内心で一緒ことを思い頷く。
「クラネの森林は都市から距離はあるし不人気な所だからな」
「うん? なんで人気がないんだ?」
「それはもっと旨みがあるところが近くにあるからだよ」
戦闘職の人達は自分達が稼ぎやすい所に向かうのがセオリー。
(だけどな)
マグノリア市のそばには大きな迷宮が存在しており学生やフリーの戦闘職の人達はそちらに集まる。
「それって迷宮か?」
「そうだ」
その結果、彼らは都市の外のエリアは行かずに稼げる迷宮の方に行く。
(そのおかげで俺は上手く動けるけどな)
俺は彼らの興味が薄い場所を狙って動く事ができるのでありがたいと思う。
(それに経験値稼ぎやお金稼ぎが楽だ)
昨日は俺1人で向かったので不安が大きいところもある。だけど今回はレベル26のエリンが一緒なので安心感が強い。
「エリン、戦闘は委ねるぞ」
「それは分かっている! って、お前は戦わないのか?」
「うん? 俺にはマイナススキル〈レベル固定〉の影響で経験値が入ってこないから無駄」
「……それは聞いて悪かったな」
「いや大丈夫だ」
俺が自分のマイナススキルの事を口にした時、エリンが落ち込む表情を浮かべた。
(別にお前には関係ないだろ)
マイナススキルの影響は俺自身が受けるだけ。それを自分のように悲しむエリンに大してイラつく。
(なんだろうな)
俺が影響を受けているこの感情が自己嫌悪や八つ当たり系なのは自分でもわかる。
(抑え込むしかない)
俺はなんとか抑え込む。だが我慢するのも限界になりそうなので何か発散できる手段を考え始める。
(あ、ゴブリンのレベルを下げたら俺も倒せるな)
俺が昨日やっていたゴブリンのレベルを下げて殺す。それを繰り返せばストレス発散になる事を思いつく。
「エリン、やっぱり俺も戦うわ」
「? お前、なんでいきなり思いが変わったんだ?」
「そんなの八つ当たりがしたくなったからに決まってるだろ」
「あーなるほど」
俺は自身にいろんなストレスを抱えて鬱憤が溜まっている事。何かやらせない気持ちがありそれをぶつけたい。
(昨日みたいに叩き潰してやる)
俺はクラネの森林に到着したらゴブリン達をボコボコにして叩き潰す事を決める。
(クラネの森林にいる魔物にはストレス発散の相手になってもらう)
昨日もやったゴブリンを叩き潰す事。俺はその事を考えながらエリンと共にクラネの森林に到着。
「ここがゴブリンが生息しているクラネ森林か」
「あぁ、この辺は浅いから油断さえしなければ倒せるぞ」
(お前はな)
前までゴブリンを倒せなかった俺が言えるセリフじゃ無い。俺はこの事を考えて吐息が出そうになるが我慢して周りを確認。
(うーん、入ったばかりだし見つからないな)
昨日は入ってすぐに見つかったが今日は見つからないのでエリンと共に奥に進み観察。
(この辺にいそうだ)
俺達は周りを警戒していると前と同じく『ギャアギャア』とゴブリンの鳴き声が聞こえた。
「おっ、ゴブリンを見つけたぞ」
「やっといたか」
エリンは〈気配察知〉のスキル持ちで俺よりも早くゴブリンを見つけた。俺はエリンと共にゴブリンがいる方に向かう。
(見つけた)
見つけたゴブリンは1匹だった。俺は他に敵がいない事を確認してからエリンに指示を出す。
「最初はゴブリンのステータスを下げないからそのまま戦ってくれ」
「? なんでゴブリンのステータスを下げないんだ」
「それは戦ってみたらわかる」
エリンの問いに返答した俺はズボンの上から彼女の尻を平手で叩く。
「ひうっ、ガストは尻を叩くのが好きなのか?」
「いいからいけ!」
「ひゃ! わ、わかった」
もう一回思いっきりエリンの尻を叩く。だけど彼女の方がステータスが高いのであまり痛みを感じてないみたいだ。
(感触がいいな)
俺は後でエリンの尻を徹底的に叩いてやろうと思う。
(てかあの尻は叩きたくなるだろ)
ゴブリンに向かって戦闘を仕掛けようとするエリンの尻を俺はガン見。
(後で叩こう)
彼女の安産型の尻をスパンキングすればストレス発散になりそうだ。俺はエリンをエロい目で見ながら考える。
「でも今はゴブリンの方が優先だよな」
俺はエリンの尻が気になるが今はなんとか堪える。
「いくぜ!」
(戦闘開始か)
相手をロックオンしたエリンが腰のショートソードを引き抜きゴブリンに斬りかかる。
「上手く不意打ちが決まりそうだ」
相手のゴブリンはエリン気づき手に持っている武器で彼女の攻撃を防ごうとする。
「遅いぜ!れ
エリンはゴブリンの行動が予測出来ていたみたいで相手の左腕を切り裂いた。
『ギャギャア!?』
左腕を切り裂かれたゴブリンは地面に倒れてもがき苦しんだ。
「トドメだ」
(アッサリすぎるだろ」
エリンは無表情でゴブリンの首元に刃を突き立て相手を絶命させる。
「終わったな」
絶命したゴブリンが紫色の煙に変化。地面に魔石と素材が残ったので俺はエリンの方に近づく。
「どうだった?」
俺は地面に落ちている魔石と素材を拾った後、エリンの方に向くと彼女は硬直していた。
(そうなるか)
俺はため息を一つ吐きエリンの尻を引っ叩く。
「もどってこい!」
「ひゃん! え、アタシは?」
「お前はゴブリンと戦っていたんだよ」
「あ、そうだよな」
なんかよくわからない表情を浮かべているエリン。
(今の状況が理解できてないのか?)
『お前はゴブリンを倒した』と俺がエリンに伝える。彼女は俺に尻を叩かれた後に涙を流し始めた。
「傭兵団で落ちこぼれのアタシがこんな簡単にゴブリンを倒せるなんて……」
(傭兵団?)
エリンの言葉に俺は疑問符を浮かべる。たが敢えてここは指摘はせずに話を進める。
「ひとまずゴブリンは倒せる事がわかっただろ」
「あぁ、アタシも自分の動きが良くなったのはわかるぜ」
「そりゃあ良かった」
エリンは自分がゴブリンを倒せた事に驚きがあるみたいだ。
(その気持ちはわかる)
ただ、今は他にやる事があるので彼女の気持ちを理解しながら言葉を返す。
「今はゴブリンを探すぞ」
「あ、待ってくれ!」
今は俺達の能力確認とお金を稼がないと後がない。
(強引で悪いがエリンには付き合ってもらう)
俺はそう思いエリンと共にクラネの森林の奥に向かって歩いていく。
「やる事は多いか……」
さっきまで俺はエリンの尻に夢中になっていたが今は復讐心の方が強い。
「どうやって進むかだな」
「うん? 真っ直ぐ進めばよくないか?」
「まぁ、そうだな」
俺はエリンと会話しながら今はゴブリンを大量討伐する事を心に決めて前に進む