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5話・エリートへの恨み

 俺の身の丈の話。学園に来る前の自分の事や一番大事な『ムカつく高スペック達への恨み』を口にする。


「俺は昔から無能で何もできなかった雑魚だ」

「うーん、その辺はさっきまでのアタシに近いな」

「そうだな。まぁ、それで周りから『お前はできない無能』だと言われ続けたんだよ」


 家族や周りの奴ら。コイツらは自分が上手く行っている事を当たり前だと思い無能な俺を見下している。


(最悪だ)


 最初は俺も抵抗はしたが相手は数の暴力や腐れ正義を振りかざす。俺はその行為を何回も受けてきたので誰も信じられずに一人で生きていた。


「こんな最悪な人生を送ってきたから俺もお前に親近感を覚えたんだよ」

「それでアタシを助けたのか」

「結果的にはそうなったな」


 さっきエリンが自分に近いと親近感を感じたように俺も彼女に同じ事を思った。その事をエリンに伝えると彼女は真剣な面持ちに変化。


「アタシは運が良かったぜ」

「俺もだ」


 この時、エリンは何かに気づいたみたいで目を見開きながら微笑んだ。


「アタシとお前は似た物同士だな」

「共通点が多いのから当たり前だろ」

「だな」


 下級貴族出身で学園にはなんとか入学出来たが無能なのでクラスメイト達から虐めにあっている俺。


(俺とエリンは似たもの同士)


 貧困層でマイナススキルがあり生きるのもギリギリだったエリン。こんな落ちこぼれの俺達が出会ったのは運命に感じる。


「最悪で最高だな」

「ん? なんか言ったか?」

「いや」

 

 俺はエリンとの出会いが必然なのかと思い喜ぶ。


(だが……)


 喜んでばかりではいられないので真面目な話を続ける。


「さっきの話に戻るが俺はムカつく高スペック達や虐げてきた奴らに地獄を見せたい」

「なあガスト。ソイツらに恨みがあるのは分かるがどうやって地獄を見せるんだ?」

「そんなの俺の呪いスキル『レベル・ステータスオール1付与』を使うんだよ」

「あーなるほど!」


 俺の呪いスキル『レベル・ステータスオール1付与』をムカつく高スペック達に使う。


「そうなると高スペック共は地獄を見るようになる」

「それで弱くなった奴らを叩き潰すのか」

「そうだ!」


 俺はエリンの言葉にうなずく。


(コレで奴らは何もできなくなって落ちこぼれるだろ)


 俺はムカつく高スペック達。こいつらに対してどうするかを考える。


(俺の気持ちを思い知れ)


 『無能』の烙印。この最悪な気持ちを嫌というほど感じさせてやる。


(何もできない事で周りにも見放される気持ちを思い知れ!)


 使えない奴はどこまで行っても使えない。鍛錬や努力、どんなに頑張っても報われずに見下されて潰される。そのどうしようもないゴミの味を教えてやる。


「まとめると無能の気持ちを思い知れ、だな」

「その気持ちはアタシもわかるぜ!」

「だろ! 才能がある奴らが悠々自適に生きている事がムカつく!」

「そんなの誰だってムカつくぜ!」


 エリンは俺の内情を知って共感を示してくれた。俺はその事に嬉しく思う。


(味方が増えた!)


 俺は内心で喜んでいるとエリンが口を開く。


「後は才能やいいところに生まれて幸福に生きている奴らをドン底に落として嘲笑ってやるぜ!」

「他には『お前らもやってきただろ!』とブーメランを返して虐げてやる」

「そうだ! アタシ達の苦しみを思い知れ!」


 俺達は『才能がある成功者』に対して嘲笑いながら話し合いを進める。


(楽しい!)


 この話し合いで盛り上がっていると夜ご飯の時間になる。俺とエリンはお腹が空いたので一旦話をやめて身支度を整えて部屋から出る。


「しかしまぁ、アタシも上手く助かったもんだな」

「そうか?」

「しっかり飯が食えて寝床があるとか最高だろ」


 今まで冷たい貧困層のスラムで生きてきたエリン。彼女は今の現状が最高に見えるみたいで喜んでいた。


(なるほどな)


 俺は彼女の喜びがいまいちわからない。それは俺が当たり前と思っている事が幸福だったと言う証拠だ。

 

「それにお前さんがいいやつなのも当たりの一つだぜ」

「……今からムカつく高スペック達に対して復讐をする奴に言うセリフか?」

「普通なら言わないがアタシなら言うぞ」


 俺達は軽口を叩きつつ食堂に到着。そばの席に座って俺とエリンは店員さんに御飯を頼む。


(なんかな)


 エリンの話を聞いていると自分自身がまだ恵まれていた事。コレをを感じて微妙な気持ちになる。


(足を知るか)


 今ある幸せを当たり前じゃない。そう思う事が大切だと思いながらエリンと話す。


「夜ご飯は楽しみだな」

「あぁ」


 俺はエリンと楽しく会話を進める。彼女もいい表情になりながら言葉を返してくれる。


「お待たせしました」

  

 エリンと会話している時、店員さんが料理が乗ったトレイを俺達がいるテーブルに置いた。


(メインはイノシシ肉のステーキ。他にはサラダにスープ、大きめの堅焼きパンか)


 俺はメニュー内容を見た後、まずは堅焼きパンを手に取り強引にちぎる。


(意外と柔らかいな)


 思ったよりも簡単にパンがちぎれたので幸運と思いながらスープにつけて口に運ぶ。


「おお! このパンは柔らかいし食べやすいな」

「そうだな」


 エリンは柔らかめの堅焼きパンが気に入ったみたいでバクバク食べていた。


(コイツ、食べるのが早いな)


 俺はエリンの驚いた表情を横目に堅焼きパンを口に運ぶ。次に俺はイノシシ肉のステーキをナイフで一口サイズに切りフォークを使って食べる。


(値段が1000Eでも悪くないな)


 最初は少し値段が高いと思ったが、今はこの値段が適正価格だと思い始めた。


「エリン……って食べる事に集中しているのか」


 俺はエリンに話しかけようとしたが彼女は食べる事に集中していた。


(仕方ないから)


 俺はエリンの事を気にしながら食事を進め。俺達は何も残さずに綺麗に食べ終わる。


「ふう、満足しただぜ」

「俺もだ」


 久しぶりに誰かと食べた食事が楽しいかった。俺はエリンと夕食を共にして気持ちよく思えた。


「さてと部屋に戻るぞ」

「了解したぜ」


 俺とエリンは座っていた席から立ち上がり、部屋に戻って自分のベッドに潜り込む。


(あー眠い)


 ここで何かを話したかったが疲労が押し寄せてきたので目を閉じたくなった。


「他にも色々話したかったが眠気が限界だ」

「アタシはもう少しゆとりがあるし起きとくぜ」

「了解」


 俺はエリンに返事を返した後、布団を被り直して目を瞑る。


(眠たいな)


 ここで俺の意識は遠くへ飛んでいった。


 ーー


 そして次の日。俺は何か温かい物に抱きつかれていると感じ意識が覚醒。


「!?」


 俺がなんの感触が気になって目を開くとそこにはグースカ寝ているエリンの顔があった。


(おいおい!)


 彼女は俺に力強く抱きついているみたいで振り解けない。


「ちょ、え」


 俺はなんとか彼女を起こそうとするが気持ちよさそうに寝ているので起こす気か失せてしまう。


(どうするか)


 エリンを起こす事ができない。俺は仕方ないと思い彼女抱きつかれるしかないと思う。


「ハァ」

 

 エリンとは昨日出会ったばっかりで関係性が薄い。そう思っていたがタイプが似ている事や境遇が近い事が合致している。


「上手くいきすぎているな」


 俺はここで上手く行きすぎているとも思えてしまいマイナスな事を考えてしまう。


(罠の場合も考えないとな)


 今まで第三者を信じて裏切られた事も多い。その体験があるので俺は保険をかけて動こう。


(最悪な事は思っておかないとな)


 俺は心の中でそう誓うと同時に異なる感情が湧き上がる。それは俺自身がこの状況を気持ちいいと感じている事だ。


(なんだろうな)


 俺ここで俺はもう一度深い眠りにつきそうになる。だがよくよく考えてみると色々おかしい事に感づく。


(てか、なんでコイツ俺に抱きついているんだ?)


 なんか俺の心に土足で踏み込んできているみたいに感じてしまう。


(だけどコレがいいのか)


 彼女の行動に対して俺自身の拒絶反応が少ないのも謎に感じる。


「なんだろ」


 俺にはエリンにここまでされる理由が思いつかない。昨日も抱擁されたし上手く誘導されている感じもない。


(いいのか悪いのかわからない)


 俺みたいな馬鹿が色んな事を考えてもグルグルするだけで何も近づかない。


(馬鹿は馬鹿なのか)


 俺は昔から馬鹿だ。この事は昔からわかっているはずなのに無意識に考えてしまう。


「ハァ……」


 しみじみ俺が何もできない無能でしゃべる事の下手くそさが浮き彫りになる。


(自分にムカつく)


 俺は自己嫌悪が強くなり歯をギリギリ。その時に目の前で寝ていたエリンがいきなり目を開けた。


「うーん、よく寝た」

「……主人に抱きつきながら最初に言うセリフか?」

「当然言うセリフだぜ」

「おい」


 嫌味で言った言葉に素で返されて俺は呆れて何も言い返せなくなった。


(マイペースだな)


 俺はエリンに言い返しても意味がなさそう。彼女の表情を見て察したので違う言葉を返す。


「なんかよくわからないが離れてくれ」

「嫌だ!」

「そうか……ってなんで!?」

「そんなのガストがいい抱き枕になるからだろ」

「人を勝手に抱き枕にするな」


 しかも意外と胸が大きいエリン。その影響でエロい事が思い浮かびヤバい方面にもっていきそうになる。


(コイツ!?)


 俺はこのエロい感情を無理矢理我慢しているのでドンドン狂っていく。


(コイツ煽っているのか?)


 俺の何が目当てかはわからないがコイツの計略には乗りたくない。


(一回懲らしめてやるか?)


 俺はそう思っているとふとやばい事をを思い出す。それは……。


「どうしよう」

「うん? 何かあったのか?」

「あぁ、お金がない」

「……ええ!?」


 俺がふと『お金がない』とつぶやくとエリンが飛び上がるように起き上がった。


(今だ!)


 俺は自由になったのでベッドから飛び起きてエリンから離れる。


「助かった……」

「んで、お金がないとはどゆこと?」

「残りが2000Eしか無いからだよ」

「あーそゆことか」


 なんか誤解したみたいでエリンは警戒を解いた。


(ふう)


 俺はエリンに大して少しややこしい事をした。だがタイミング的にはちょうどいいので俺は一言。


「支度をするぞ」

「了解だぜ!」


 俺達は身支度を整え朝食を食べる為に食堂に向かう。


(悪くないな)


 俺達は朝食を食べた後にチェックアウト。宿屋から出て日曜日の日の光を浴びながら魔物狩りへ向かう。


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