30話・第二ラウンド
俺がエリンの名前を叫んだ時、彼女はニッコリしていた。その訳が俺にはわからなかったがエリンはブレイド・ザ・ストロングの攻撃を回避した後に腰に装着されているロングソードを引き抜く。
「さあ、第二ラウンドだ!」
『ガガガ!』
相手のブレイド・ザ・ストロングは『リベイクモード』を発動しており能力が向上している。その攻撃は通常時よりも上がっており厄介な相手。なのにエリンは余裕を崩さずに反撃を始めた。
「おいおい……あの攻撃を捌きながら反撃できるのかよ」
「あの子、蒼天の刃に誘いたいわね」
「あ! アイツ、特異種にダメージを与えたぞ」
「でも腹を浅く切った程度だから浅いわ」
蒼天の刃のメンバーがエリンの動きを高評価している中、クラスメイトの一軍とリーナ先生は回復ポーションを飲んで傷を治していた。
「ぐっ、なんでオレ達があのクズに助けられるんだよ!」
「一生の恥ね」
「しかも澄ました顔でムカつくんだよ」
「本当にそうね!」
コチラに向かって悪口を言っているのはスクールカーストトップのエクス達。彼らは俺に助けられた事が気に食わないみたいで不愉快そうな面持ちをしていた。
(別にコイツらにどう思われようが関係ないけどな)
ハッキリ言えばコイツらは親ガチャに成功した高スペックだ。そんな成功者で第三者を見下す奴らにどう思われようが知らん。
そう思っているとエリンの方に動きがあった。
「今だ! アースゴードハンマー!」
『ガガァ!?』
ブレイド・ザ・ストロングの攻撃を右のサイトステップで回避したエリン。彼女は相手に向かって土魔法でも強力な分類に入るアースゴードハンマーを発動。この魔法は空中に5メートルくらいのハンマーを生成して敵に叩きつける事ができる。なのでエリンが生成した土の巨大ハンマーがブレイド・ザ・ストロングに直撃した。
『グオォォ!』
しかしブレイド・ザ・ストロングは手に持っている大剣の腹で土の巨大ハンマーを受け止めた。だがその時に腹ががら空きなのでエリンが高速で接近して敵の左足を金色のロングソードで切り裂いた。
『!? グガァ!』
左足を切り裂かれてバランスを崩したブレイド・ザ・ストロングはハンマーの重みに耐え切れずに地面に沈んだ。だがこれでも仕留め切れてないみたいで土のハンマーにヒビが入り破壊された。
「そうじゃないと面白くないぜ!」
『ガァ!』
左足を失ってもなお強力な攻撃を仕掛けるブレイド・ザ・ストロング。コイツの動きはまるで修羅に見える。でも攻撃がさっきよりも荒くなっているので、エリンは冷静に盾を使って防いでいる。
「そろそろ終わらせてやる」
相手の攻撃を見切り始めたエリンは的確に反撃を決める。そしてブレイド・ザ・ストロングが満身創痍になった時、エリンが手に持つ金色のロングソードが光り輝いた。
「これで終わりだ!」
エリンが光のようになってブレイド・ザ・ストロングに突進。相手はなんとか防ごうと大剣を動かしたが時すでに遅し。ブレイド・ザ・ストロングはX字に切り裂かれた。
『ガガガァァ!?』
体を綺麗に切り裂かれたブレイド・ザ・ストロングは紫色の煙に変化。地面に残ったのは大きな魔石と素材、そして黒色の宝箱だった。
俺はエリンが強敵……特異種に勝てた事に安堵していると隣にいたソウルさん達が恐る恐る口を開いた。
「あの動き、まさに英雄だな」
ふと周りを見ると蒼天の刃のメンバーや一軍のクラスメイト。後はリーナ先生がなんかよくわからない面持ちになっていたので俺は無視してエリンに近づく。
「おーい、お疲れさん!」
「あぁ、ありがとな!」
俺は軽症のエリンに対して回復ポーションを渡し、付近に落ちている魔石と素材を回収する。
(この黒い宝箱はどうするかだな)
流石に俺が開けるのは違うと思い黒い宝箱を見ていると立ち上がってエリンが一言。
「開けないのか?」
「いや、エリン。普通ならお前が開けるだろ」
「? お前さ、そんなのアタシの主なんだし気にしなくていいだろ」
エリンが俺の手を取り宝箱に添えてくれた。そのため開けない事ができなくなったので俺は宝箱を開ける。すると中には白銀のショートソードと黒色の鞘が入っていた。
「おお! めっちゃかっこいいな」
俺は白銀のショートソードを見た時、この剣が欲しいと強く感じる。だが倒したのはエリンなので彼女の方を向く。するとエリンはニッコリ笑って言葉を発した。
「アタシは宝零剣・アストレイがあるしこの銀色のショートソードはお前にやるぜ」
「!? いいのか?」
「もちろんだぜ!」
白銀のショートソードをもらえる事に喜んだ俺は早速剣に触れてみる。すると頭の中に声が流れた。
『竜装・シルフィリスの契約者はガスト・フォールレインになりました』
(契約者?)
よくわからない声を聞いていると使い方が頭の中に入ってきた。
(……雷魔法と結界魔法が使えるのか)
使い方的は高火力で速度もある雷魔法と鉄壁の防御力を誇る結界魔法。この二つの能力が使えるならかなりいい。そう思っていると後ろから怒鳴り声が聞こえてくる。
「おい、ガスト・フォールレイン! お前は何をやっているんだ?」
「何をやっているとは?」
「そのままの意味だ! お前は何もしてないのに黒い宝箱に入っていた白銀のショートソードを手に入れる事が出来るんだよ!」
いきなりのイチャモンをつけてきたリーナ先生の言葉にクラスメイト達も続く。
「そうだ! そうだ! お前は何もやってないだろ」
「使えないクズが手に入れられる代物ではないのよ」
「その剣はオレが使ってやるよ」
「確かに貴方よりもエクスの方が何倍も似合うわ」
(おいおい……)
毎度思うが俺はこの暴乱に対して言葉を失って何も言い返せない。なので黙って俯いていると隣に立つエリンがブチギレだ。
「貴方達? アタシの主人様に何を言っているんだ?」
「は? 貴女はあんな使えない無能の従者をしているのか?」
「使えない?」
「あぁ、アイツはレベル5の雑魚で勉強も楽にできない無能のクズ。そんな奴に貴女みたいな従者は合わない」
1年3組の代表としてリーナ先生が可哀想な目でエリンを見ていた。
「あんな使えない奴はさっさと殺して私達に寝返らない?」
「……」
「貴女にとってもいい提案だと思う」
もうここまできたらクズを通り越して清々しい。そう思えるようになった俺は呆れているとエリンの表情がかなりまずかった。その理由は彼女の面持ちが怒りを通り越して無表情になっている。
(おいおい!? やばい)
相手が悪いとは言え貴族。しかもリーナ・アサフル先生の実家は上位貴族で面倒な事になる。そう思ってエリンを止めようとするが彼女は腰のロングソードを引き抜こうとしていた。その時、ある人物が動いた。
「いい加減にしろ! お前ら貴族は助けてもらった恩とか感じないのか!」
「は? 感じているから彼女をクズから離れさせようとしているのよ!」
「なら金髪の彼女は何であんなに怒っているんだ?」
「今までの扱いが酷かったからあのクズに怒っているんじゃないの」
「そうか? もう限界だ」
ある人物、それはソウルさんだった。彼はリーナ先生に向かってブチギレてある物を取り出した。それは警察手帳だった。
「!? それって!」
「アロンライト王国・権力犯罪対策課・警視。ソウル・バーナだ。その手帳を見て何か思わないか?」
「私達が権力を使った犯罪をしていると言うの?」
「当たりだよ」
ソウルさんが警察手帳を見せた時、リーナ先生の面持ちが真っ青に変わった。俺は今が好機だと思いエリンに声をかける。
「おい、エリン。ここはソウルさんの顔を立ててあげてくれ」
「……納得はできないけどわかった」
なんとか問題が起きる前に対処できたので、心の中でホッとしながら相手の動きを見る。




