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0話・呪いスキルを手にした時

 才能。この概念を知った俺は自身を苦しめる枷になった。なぜなら……。


『才能とは生まれ持った能力だろ』

『才能次第で勝ち組と負け組が決まる』

『いや! 負け組でも頑張れば勝ち組になれる可能性がある』


 周りの言葉を聞いた俺は絶望し心が折れた。昔の俺は努力すれば報われると思っていた……しかし現実は。


『生まれた境遇や才能で人生が決まる』


 この世界は全てコレ。生まれた才能や境遇はこの事実に基づいている。この言葉や内容に気づくのは能力がない奴ら……低能力者と呼ばれる雑魚だ。


『使えないクズが気付く理論』


 低能力者がどんだけ努力を積んだとしても泡になる。周りの奴らは俺達を雑魚扱いして虐げている。しかも低能力者を虐げている奴らは自分に備わっている優れた能力を使っていたぶる事に優越感を感じている。


『お前ら雑魚は上位者であるオレ達のサンドバッグだぜ!』

『弱くて惨めなあなた達には生きる価値はないわ』

『使えない奴は存在しているだけで罪だよな』


 高スペック達はそれだけで許される。この世界には低能力者の居場所はない。


「コイツらを鍛えてやっているんだ」


 この言い訳はまかり通る。この世界に強者の特権は存在するのだ。弱者は搾取され、闇に落ちる他に道はないのだ

 

『雑魚は変わらない』


 改善の努力を怠った低能と見られようが努力は続けた。居残り、研究し鍛錬を続けた。だがすべて泡となって消えていく。成長ができないのだ。

結果、教官たちからはゴミのように見られ、有能共は離れていく。


「こんな使えない雑魚に指導する意味はない」


 こう言って最終的には教官達は俺達のできなさに呆れて見切りをつけて見限る。その結果、俺達は何も変わらず周りに虐められるしかない。


「雑魚は何も変わらない」


 俺の人生は最低のどん底に落ちたクソ以下と思うしかない。そうやって雑魚のまま生きていくしかない……ある時まで俺はそう思っていた。


〈マグノリア市・ツーリンド学園の修練場〉


 ツーリンド学園の修練場。この場所では授業の一環として生徒達が模擬戦や試合を行う場所。俺、ガスト・フォールレインは模擬戦で対戦相手の赤髪の男子生徒、ガゼル・ブロックスにボコボコにされていた。


「たったレベル5のゴミめ! レベル22のオレに勝てると思ったか!」

「ガハッ!」

  

 ガゼルの蹴りが俺の腹に深くめり込む。攻撃を受けた俺は地面を転がり腹を押さえて蹲る。


(なんで止めないんだよ)


 決着はついているのに審判の教官は模擬戦を止めない。


「そのまま続けろ」


 教官は冷たい言葉を発する。しかも地面に転がる芋虫を見ているみたいな視線を俺に向けている。


「チッ、雑魚が」

(!?)


 教官は俺の弱さに苛立っているのか舌打ちをして唾を地面に吐き捨てた。俺は頭が真っ白になり地面を見る。


「こんな無能が何故入学出来たんだ?」


 教官が吐き捨てた追撃の言葉。周りのクラスメイト達は教官の言葉を聞き嘲笑う。


「毎回思うがガストは無様だよな」

「あんな雑魚がよくツーリンド学園に入れたわね」

「アイツの実家が下級貴族だから裏口入学だろ」

「まぁ、それしかあり得ないよな」


 クラスメイトの見下す視線を受けた俺は涙が出そうになる。


(もう……)


 俺は何も言い返せないので黙って歯を食いしばるしかない。


(なんでだよ!)


 俺は無理矢理にでも立ち上がってコイツらにやり返したい。でもダメージが大きいのか体が動かない。


「お前な、よそ見している場合か!」

「グハッ! もうやめてくれ……」


 ウダウダと考えているとガゼルが蹲っている俺の頭を踏みつけ地面に押し付けた。俺はもうやめるようにガゼルに懇願するが、彼はやめるどころか踏む力を強める。


「こんな面白い事をやめるつもりはねーよ! それに雑魚のお前に発言権があると思うな」

「うぐっ」


 ツーリンド学園に入学して1ヶ月半。最初にこの学園に入学した頃はまだクラスメイト達に見下される程度で済んでいた。


(そこからだよな)


 俺が弱い事がわかったクラスメイト。彼らは模擬戦のたびに俺をボコボコにして嘲笑っている。


「ふん! 雑魚は雑魚のまま潰れちまえ」


 ガゼルの暴言の後、俺は頭に強い衝撃を受けて意識が遠くなっていく。ただ、意識を失う前に紫の光が薄らと見えた気がした。


『君は変われるよ』


 俺の意識が薄くなっていく中、聞いた事のない声が頭の中に響く。俺は聞いた事のない言葉に対して疑問符を浮かべながら言葉を返す。


「そんな事ができるわけないだろ」


 遠くなっていく意識の中、俺は聞こえた声を否定する。


 ーー


 次に目を開けた時、俺は修練所の端に転がされていた。


「ぐ、なんで俺はこんなに弱いんだ……」


 俺は自分なりに剣や魔法の鍛錬をしたり強くなれる方法を模索している。


(努力しても成長の見込みもない雑魚の俺か)


 俺の弱さを見た周りの奴らは頑張ってないとか努力してないと認識し俺を虐げる。なので俺の内心には高スペックの奴らに対して強い恨みや妬みが渦巻いている。

 

「アイツらも自分達が出来ない側になったら俺の気持ちを思い知るだろ」


 俺の事を雑魚だと思ってしいたげる奴らをドン底に落としたい。努力や頑張っても結果がなかったら無駄だと証明したい。


(奴らに地獄を見せてやる)


 自分の中で憎悪が大きくなる事を認識。俺は気持ちに振り回されそうになったので深呼吸。落ち着いた時にある事を思い出す。


「そういえばさっきの声はなんだ?」


 俺はさっきの聞いた声が気になったので自分に何か変化があると思った。


(何かあるかな?)


 俺は半透明の板みたいなステータス表を開き能力やスキルの確認。


「え!?」


 俺のステータス表には見たことのない新しいスキルが発現していた。


「呪いスキル「レベル・ステータスオール1付与」だと!?」


 呪いスキル、俺は自分のステータスに見た事のない能力が発現しているのに驚く。


(なんだよコレ)


 この能力の文字を見た時に俺の中で疑問符が浮かぶ。なので俺はこの呪いスキル『レベル・ステータスオール1付与』の能力確認を始める。


「ふむふむ、この呪いスキルは他人のレベル・ステータスをオールレベル1に変えられるのか」


 他にも奪った能力を他者に付与できる。だが欠点としてこの呪いスキルの発動条件は自分の肉眼で相手の姿を見ないといけない。


(自分には使えないのか)


 能力確認をしてがっかりする気持ちや虚しさを感じる。俺は落ち込む気持ちを覚えながら少し考える。


「制約はあるがこの呪いスキルは使えるか」


 呪いスキル『レベル・ステータスオール1付与』を受けた相手はステータスが固定になりどんだけ頑張っても成長しない。


(つまりは相手がどんだけ鍛錬しても意味がないのか)


 鍛錬しても意味がない。俺はステータス固定の事を見て内心で笑う。


「これで調子に乗る奴らを叩き潰せる」


 呪いスキルの事を考えていると自分の気持ちが軽くなった。俺は軽くなった感覚を受けて何故かと考え始める。

 

「うん? この感覚はなんだ?」


 今まで俺の記憶には苦しい思い出しかなく楽しい気持ちなんてほとんど感じた事がない。


(この気持ちは大切かもしれない)


 俺は楽しいと思う気持ちが大切だと思いながら立ち上がる。


「変わってやるよ!」


 俺は決意を固めて修練場の出入り口に向かう。

 

(呪いスキルを使いこなして親ガチャ成功者の高スペック共を潰してやる)

 

 呪いスキル『レベル・ステータスオール1付与』を使って俺の事を今まで散々馬鹿にして見下してきた奴らを叩き潰す。


(どう潰すかだな)


 特に成功者に対しての憎悪を募らせながら俺は修練場のドアを開いて外に出る。


ーー


〈ガスト・フォールレイン〉ステータス

・能力、レベル5(固定)

・魔力18

・筋力17

・耐久力15

・賢さ16

・精神力15

・素早さ20

〈スキル〉

・剣術レベル1、風魔法レベル1

・能力鑑定、レベル固定(レベル5)

〈呪い〉

・ステータスオール1付与(レベル1)〈本人のみ閲覧可能〉


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[良い点] はめられた枷の苦しみを伴うところからひじり出される感情の吐露が、あきらめきれない努力の数を量を、質では計れない痛みを表出させる。 たまらぬ悔しさに共感しました。 [気になる点] 変わること…
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