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琥珀の翼  作者: やばくない奴
運命の導き
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思い描いた未来

 コハクたちの過ごしてきた日々は、数多の宇宙のうちの一つで起きた出来事にすぎない。翼人の生まれなかった時空では、約七十億人の人間が地球という惑星で生活している。特に、先進国である日本では、多くの人々が安寧と享楽に満ちた生活を保証されていると言っても過言ではない。


 そんな日本にある――――とある高校では、三人の少女が校内を練り歩いていた。

「オレたちと絵を描こうぜ!」

「美術部はサイコーだよ!」

「ワタシたちなら……描ける」

 当然、この世界の住民である彼女たちには翼はない。彼女たちはウイングレスであり、この宇宙で言うところの「人間」だ。


 この学校の美術部は今、深刻な人員不足に悩んでいる。部活動を盛り上げるべく、少女たちは必死になって部員を募っているのだ。


 それからしばらくして、一人の少女が美術部に興味を持った。その少女が美術部の部室を訪れたのは、翌日のことであった。

「ここが、美術部? 本当の本当に、絵を描くんだね」

 少女は辺りを見回し、壁に飾られた風景画やデッサンなどに見入っている。彼女の黒く長い頭髪は美しく、その顔立ちも美人であると言って差支えはない。そんな彼女を歓迎するのは、美術部の部長だ。

「美術部へ……ようこそ。お茶でも……飲んで。ここに……座って」

 部長はすぐに緑茶を淹れ、それを黒髪の少女に手渡した。少女はすぐに着席し、緑茶を呑み始める。二人の部員は各々の鞄からスケッチブックを取り出し、それを少女の目の前に突き付ける。

「これはオレがこないだ描いた鳩だ。つっても、その辺にいるような奴じゃなくて白い鳩だけどな」

「これはウチが描いた風景画。近くの展望台から眺める夜景はサイコーなんだよ!」

 新入部員となりうる人材を逃したくないのか、二人は少し興奮気味だ。部長はため息をつき、彼女たちを諌めようとする。

「先ずは……自己紹介が先」

 その言葉に、二人の部員は我に返る。彼女たちはすぐにスケッチブックを仕舞い、部長の自己紹介を待つ。さっそく、部長は名を名乗る。

「ワタシは……明星綴(みょうじょうつづり)。美術部の……部長」

 残る二人も綴に続く。

「オレは白羽琥珀(しらはこはく)。よろしくな」

「ウチは片切刹那(かたぎりせつな)。刹那って呼んで良いよ」

 文化部でありながら、何やら賑やかそうな部活である。黒髪の少女は緊張しつつも、なんとか愛想笑いを保っている。

「ボ……ボクは、黒羽瑪瑙(くろはめのう)。えっと、自己紹介をしようにも、自分が何者なのかわからないけど……でも、絵を描くのは好き!」

 これで自己紹介は終わりだ。瑪瑙の目の前に、掌が差し出された。彼女が顔を上げると、そこには琥珀の顔があった。

「そっか。見つかると良いな……自分ってヤツが」

 琥珀はそう言いつつ、優しさに満ちた微笑みを浮かべた。瑪瑙はその笑顔をどこか懐かしく感じつつも、目の前の部員と握手を交わす。この時、彼女は安らぎのような感情を覚えていたが、まだ完全に不安を拭えたわけではない。

「皆、綺麗な絵を描くんだね。ボクなんかが美術部に入っても……」

 そう彼女が言いかけた時である。


「本当の本当に、大丈夫だ」


 琥珀は、まるで彼女の続けようとしていた言葉を予測していたかのようにそう言った。瑪瑙は緊張感から解放され、頬を綻ばせる。

「ボク、この部活に入る!」

 この日、美術部には新たな部員が加わった。


 部室に一人の男が現れた。

「お、美術部の部員が増えるのか。そいつはグッドニュースだな」

 彼はスーツのよく似合う中年男性だ。少なくとも、彼が学生ではないことは一目でわかる。刹那は彼の方へと駆け寄り、嬉しそうに報告をする。

「これからサイコーの日々を送れそうだね、先生!」

「ああ。俺たちはずっと、新入部員が来るのを待ち望んでいたからな」

 窓から見える夕日は、彼らを温もりと光に包み込んでいた。窓枠に止まっていた小鳥は一目散に飛び去った。

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