神々の目覚め
アストラムの拠点の跡地に、二体の巨大な化け物が現れた。一方は青白い光を放つ美しい竜、もう一方は赤黒い魔力に象られた力強さを感じさせる竜だ。二体の竜の姿を前に、ハザマは言う。
「ついに、アデルラピスとザラシュタインのおでましだ」
曰く、たった今現れた二体の化け物こそが、コハクたちの中に眠っていた神々そのものである。ザラシュタインは周囲のあらゆる地形を破壊し、アデルラピスはそれを修復していく。両者の間では、凄まじい戦いが繰り広げられている。常人であれば、この戦いに割り込むことなど先ず不可能であろう。
しかしハザマはそうではない。
「さぁてと! 後はコイツらを片付けるだけだ!」
どういう風の吹きまわしか、彼は自ら蘇らせた神々を倒そうと考えているようだ。彼はすぐに飛び立ち、神々の聖戦に乱入する。彼の体には相変わらず傷が入らない。神々の攻撃を一身に浴びようとも、彼はそれをものともしていない。そればかりか、二体の神は彼の放つ魔力に押されているような状態だ。
そんな中、彼の目の前に一体の使い魔が舞い降りてきた。
「どういうつもりだい? 話が違うじゃないか!」
オニキスだ。世界の破壊を目的としていた彼は、ハザマの行動を止めに来たらしい。そんな彼を無視しつつ、ハザマは神々への攻撃を続けていく。この男が何を考えているのか、それは定かではない。ただ、それがオニキスの意志に反していることだけは間違いないだろう。オニキスは説得を始める。
「ユーはこの世界を憎んでいたはずだ! 人類を憎んでいたはずだ! そんなユーが、何故ザラシュタインを倒そうとしているのさ!」
彼が困惑するのも無理はない。彼はずっと、ハザマを己の味方だと信じて行動してきたのだ。そんなハザマが今や、理解の及ばない行動をしている。これは決して看過できることではない。
ハザマは本性をあらわにする。
「ああ、憎いさ! ただ殺すだけでは、事足りぬほどにな!」
彼はそう言い放ち、オニキスとの間合いを一気に詰めた。ハザマは魔力の剣を生み出し、それを一心不乱に振り回す。どういうわけか、彼の行動が制限されることはない。
オニキスは、一瞬にして細切れとなった。
ハザマの勢いはとどまることを知らない。彼は再び魔法を使い、今度は二体の神々の動きを封じる。二体の力を束ねてもなお、この男を止めることは叶わないらしい。
「数多の痛みをもって償え! 運命を呪い、世界の狂気に踊らされ、骨の髄まで憎しみに染まるが良い!」
彼の猛攻撃により、二体の神々は次第に疲弊していく。
「死こそが最大の安寧であることを思い知れ! 二度と平和が訪れることのない世界で、愚かな理想を思い描くが良い! 人が希望を抱いた分だけ、それに見合った絶望が降り撒かれるだけだ!」
もはや神々に勝算はない。ハザマは左手にも魔力の剣を作り出した。彼は二本の剣を構え、それぞれの先端を眼前の化け物たちに突き刺した。神々は苦し悶え、ハザマの体内へと取り込まれていく。
「世界が混沌をもたらしたのではない。人が混沌をもたらしたのだ! 絶え間なく紡がれてきた歴史の中で、無数の悪意が交わり続けてきた! もはや誰にも、この狂気を正すことは出来ない!」
彼の周囲に、魔法陣が展開される。
全宇宙の、ありとあらゆる天体の有するエネルギーが、一斉に地球へと吸い込まれていく。
否、地球がエネルギーを奪っているわけではない。全てはハザマの体内に吸収されている様子だ。そればかりか、地球そのものの有するエネルギーもまた、彼の肉体に捕食されている。無数の光の粒子を浴びつつ、ハザマは笑う。地球上に存在していたあらゆる植物は、急激に枯れ果てる。
この日をもって、世界は大きく変わることとなる。




