14日目:先手必勝・大躍進の始まり②
村に侵入した二人がやることは言わずもがな、この村の若い女以外の村人の殲滅。凡そ人口100数人の殆どを殺すことになる。そのためにはスピードよりも闇に身を隠す忍びのように、目を覚ませず確実に獲物をしとめることが必要になって来る。いくら人間よりも高い戦闘能力を持つ加藤純一やグーガであろうとも、百人の人間たちに囲まれれば生きて帰る事はできないのだから。
東門から村に侵入した二人はまず近くにあった民家にターゲットを絞ったようだ。先陣は加藤よりも戦闘・隠密両方に優れているグーガが、その後ろを加藤が援護役を務める。家と外を区切る扉代わりの雑多な垂れ衣を払うと、速やかに室内の角でイビキをかきながら寝ている家の主人の男を仕留めた。
グーガの大きな左手で口を覆い塞ぎ、喉を短剣で切り裂いていく。口と喉から吹き出した血液が寝床である藁の敷布団を汚していく。それを一瞥し横を見れば、加藤は夫が今しがた殺されたのを怯えるような目で見つめる女の口を押さえつけていた。
「tt⁉」
口を押さえつけられているため声にならない悲鳴を上げる女に対し、加藤は女の首を絞めた腕に力を入れていく。女の歪んだ視界に赤く染まった藁から滴る夫の血が写るなか、女が意識を手放したのはそれから数秒後のことであった。
一つの民家を制圧するのに1分もかからない。それでも計り知れない神経をすり減らすことになるのだが、太陽が地平線から顔を出す頃には、二人は全ての村の民家を制圧した後であった。途中で微かに聞こえる村内の物音に怪しんだのか、既に起きていた村人が近づいて来たりもしたが、それも足音に察知した加藤によって問題なく対処することが出来た。
早朝の涼しいそよ風が村の広場を包み込むなか、加藤とグーガは性奴隷として手足を縄で縛り捕獲した村の女たちを広場に集めていく。
「yapa!takumate!optyu⁉omyuu⁉」
「nagumau!!maseuduku…komemiuwa!!」
「sinautku…sinautku……yapadaxaa!!」
掴まった女たちの意味の分からない悲鳴や懇願の声が聞こえる中、「これで全員か」と加藤は淡々と呟いて額から流れる汗を腕で拭いでいく。そしてもう呼んでも良いかと加藤は大きく息を吸うと、周囲に木霊するように高く口笛を吹いた。
それから数分が経った後だろうか、女たちの監視についていたグーガを除いて門の前で待っていた加藤の前に、麦畑からひょっこりと5人のゴブリンが顔を出した。
「父上、ちゃんと女も持ってきました」
麦畑から出て自分の前に膝を附いた息子たちに加藤は満面の笑みを浮かべながら軽く頷く。どうやら生まれてから周到に教育した甲斐があったようだ。
「おう、お前らよくやったぞ!こっちも計画通りいったからよ!」
その父の言葉に息子たちは歓声を上げた。やはり自分たちの父は凄いと、息子たちは父が自分たちを遥かに超える知恵と力を持っていることを確信したようだ。
「村の中央に平場があっから、その女2人もそこに運んでくれ」
「分かりました」
長男のバルの返事を合図にゴブリン兄弟たちは女を二人ずつで担いで村の中に入って行く。
それを見届けた加藤は軽く村の周囲を見渡すと、特に問題が無い事を確認し自分も村の広場に戻って行った。