プロローグ
毎日更新頑張ります。
一応プロットは完成してるので完結は必ずします。
大体一ページ当たり1,500~2,000文字前後を想定しており、合計の文字数は350,000前後を考えています。
ということで始まり始まり。
閃光が煌めき、あたりに火花が散る。
曇天の中、夜も深い閑静で少し入り組んだを街中を、あごにびっしりとした髭を蓄えた一人の男が逃げていた。
背後から迫りくる光をなんとかいなすが、複数人の怒号と共に襲い掛かる光は何度も男の体をかすめる。
だが男は追っ手を慣れた手つきで器用に小ぶりな杖から放出される光で吹き飛ばし、痛みに顔を歪めながらも淡々と数を一つまた一つと減らしていった。
路地を曲がりまた曲がり、敵が自分を見失うまで何度もその方向を変える。
道中のゴミ箱や木箱、車や街灯などを浮かしては後ろに向かって吹き飛ばすことを繰り返す。
そしてちょうど一ブロック分追っ手との距離が離れたタイミングで男は杖を後ろではなく前に構えた。
そしてこう唱えた。
「『VOLARE MAXIM』」
男の体が時空の歪みと共に虚空へと音もなくどこかに吸い込まれる。
男は後ろに顔を向け敢えて嘲笑と共に唾を地面に吐いた。
背後から迫っていた追っ手たちもどうにかその時空の歪みに飛び込もうとするがギリギリ間に合わず、投げ出した体もそのまま地面へと落下する。
数人の吐息が白くなり、あがった呼吸をより際立たせていた。
「くそっ、どこに飛んだかわかるか。」
スーツ姿の男が近くにいる仲間にそう問いかけるとその仲間は静かに首を横に振った。
「あの野郎、見かけによらず凄まじいな。これほどとんだ先が皆目見当がつかないのは初めてだ……。」
「しかもこれは凡そマキシムだろう。多分国境は軽く超えられてるぞ。……まぁそれでも元々アイツの体力はかけらも残っていなかったと考えると相当虫の息、もしくは反動で死にかけだとは思うがな。」
男が時空の歪みに巻き込まれて消えた場所の近くで片膝をつきながら目を瞑り何かを感じ取っているスーツ姿の男の一人がそう答えた。
スーツ姿の男達の一人がおもむろに懐からタバコを取り出し、ジッポライターに火をともして顔を近づける。
タバコを咥えたままスーツ姿の男は深呼吸をした。
「ふぅー……、俺たち怒られっかな……。」
「しらん。まぁ、少なくとも飛んだ先の検討をある程度つけとけば大して言われんだろう。」
別の男がそう返答した。
タバコで息を吸う男は、そうだといいなと小さな声で呟き、雨の降る暗い灰色の空を星を見つめるかのように見上げた。
今日の雨はどうやら一段と冷たく、それはまるでこれからの【魔法界】の行く末を占っているようにタバコを咥えた男には思えて仕方がなかった。




