表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/38

続々・十一才 ご挨拶にいく件13

「到着しました。ここが魔影晶の住処。ロキシンたちの間では通称、星の入り江です!」

「わぁ、壮観」

「すごい、ね」

「マジでか……」

 洞窟の奥、一段と開け頭上が高くなった場所。ランプが等間隔で水際に置かれた、地底湖の砂浜が広がるその天井。

 無数の星が煌めく光景がそこにあった。

「あの光ってるの、全部その魔影晶?」

「はい!」

 星のように煌めきを放つのは件の鉱石。

「凄いね。でも、どうしようか」

「流石にこの高さは肩車とかじゃ届かねぇぞ」

「この高さみて、そもそも肩車、とか、その発想……ディット」

「おい、サラ坊何だその顔。バカなの? って言うのと哀れみ混ぜんな!」

 微かに通り抜ける風が地底湖の水面を揺らす。

 浜に置かれたランプと天井の星々の輝きが笑うようにさざ波に光って消えていく。苔の匂いが木々の匂いに似て、まるで森の中の湖畔で夜空を見上げているような錯覚さえある。

「ん? あそこ、ランプ消えてる」

「わ。大変、つけ直さないと」

「近くの壁に光ってるの、あれも魔影晶?」

「え? あ。本当ですね。そうだと思います」

 シェルディナードでも手の届く箇所にあるそれをもっと近くで見ようと水際に近寄っていくのを見て、ロキシンが慌てて叫ぶ。

「待って下さい! いま近づいちゃダメでっ」

「!」

「坊!」

「ルーちゃん!」

 何か小さく水音がしたと思った時には、ぐるん、と。シェルディナードの視界は回り、気泡と冷たい水の中。無音と水中の視界。

 褐色の四肢に絡みつくピンクのネオンめいたロープのようなもの。

(あ。麻痺毒だコレ)

 冷たいと感じたはずの肌から感覚が無くなった。

 指も足も動かない。

(これはヤバいかも)

 咄嗟に止めた息もそんなに長くは保たないだろう。そうなったら喉へ雪崩込むだろう水。奪われる呼吸。

 それは恐らくこの触手の主とご対面するより先に溺死という結末をもたらすだろう。

 本当の死ではない。

 生き返るから、正直少し苦しいかも知れないけど別に良いかなと思う。

 けれど。

「坊っ」

 ザバッと聞こえたのは腰に両腕を回して引っ張り上げられ、顔が水から出たから。

 新鮮な空気を求めて呼吸を再開すれば少しむせた。

「大丈夫か!? 生きてるよな!?」

「ルーちゃん! ルーちゃん!?」

 身体全体でシェルディナードを岸へと引き戻そうと踏ん張るディットと、隠し持っていたナイフで触手を切り払おうとするサラ。その二人の声に。

「大丈夫、生きてる。ありがと。でも麻痺して手足動かない。助けて」

「やってる!」

 だよねー、とは流石に怒られそうなので言わない。

「このっ、なんで、きれな、い」

「おい、サラ坊、二人は無理だからな!? 捕まるなよ!?」

「うるさい、だまって。気が、散る」

 ネオンピンクの触手とシェルディナードを綱引きするディット達。

 全身全霊でシェルディナードを持って行かれないように踏ん張るディットだが、徐々に再び水際へ引き込まれつつある。

「だっー! 砂、うぜぇ!!」

「みなさん! 光り! 何か明かりを!」

 ロキシンが松明を手に駆け寄ろうとしながらそう叫ぶ。

 サラが片手を上げ、手のひらに光球を生み出すと触手がピタリと動きを止め硬直した。

「ディット!」

「わあってる!」

 その隙に片腕はシェルディナードにしっかり巻きつけたまま、腰に隠し持っていたナイフを抜いてディットが触手を切りつける。

 先ほどが嘘のようにプチプチと容易く切れる触手にそのまま全力で岸へと退避した。

 ディットと珍しくサラも息を荒げている。

 それでもまだディットはシェルディナードを離さない。

「みなさん大丈夫ですか!?」

 ロキシンがようやくディット達の側にたどり着く。

「大丈夫」

「じゃねーよ」

「じゃないよ」

 ですよね、とロキシンがオロオロする。

「えっと、えっと、待って下さいね。確か洞窟巾着(ケイブアネモス)の麻痺毒には、ここに自生してる苔と水を混ぜて……」

 すぐ解毒剤作りますから! とロキシンが調合して小さな石の器に入れそれをシェルディナードの口許に近づける。

「ゆっくり飲んで下さい」

 舌の上にまだ形のある苔の味と感触がするものの、それを飲み下す。

 効果はすぐに現れ、じわじわと末端の感覚と冷えた感覚が戻ってくる。

「さむ」

 シェルディナードの言葉にサラが半眼で指を鳴らすと、一瞬でシェルディナードとディットの靴や服が乾く。肌も程よく。

「あれ、なに」

 不機嫌オーラ全開でサラがシェルディナードに抱き着きながらロキシンに問う。

「あれは洞窟巾着と言って、地底湖の奥に本体がある軟体生物です。触手に麻痺毒を出す微細な針があって、刺されると動けなくなり水中に引きずり込まれて捕食されます。光りが苦手なのでこうして浜にはランプを置いて光りの届く範囲までしか入らないようにしてるんです」

「…………光りを湖底まで届ければ、やれるってこと?」

「あ、あ、あのっ、い、一応、水質を浄化してくれるし、分泌液が鉱石の成長に良くて」

「サラ、今回は俺の不注意て悪かったから。ゴメンな? 次から気をつけるから今回は勘弁」

「……わかった」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ