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続々・十一才 ご挨拶にいく件12

「え。光ってねぇ?」

 ディットの言う通り、ロキシンは仄かに蒼く発光していた。徐々に光はおさまり、

「お、いひぃぃぃぃ〜……」

 両頬を紅葉のような小さな手で押さえ、うっとりとそう呟いた。その余韻を楽しむように瞳を閉じて、至福の雰囲気だ。

「細かく、なった」

 サラがポツリと呟く。

 その呟き通りロキシンの姿がより人のそれに近くなっている。色はまだ白い石像だが、表情の変化や造形がより緻密になった感じだ。

「ありがとうございます。とっても美味しかったです!」

「喜んで頂けて良かったです」

「本当にありがとうございます。私からも感謝を」

 長がロキシンと一緒に頭を下げた。

「この地で採れる鉱石では中々これ以上は核石を厚く出来ず、思案しておりましたが……」

 ロキシンの全体から、濃密な魔力の気配が漂っている。時間を置けばこの魔力は段々と核石に収束して鳴りをひそめるらしいが、吸収したての子供ではコントロールがまだまだとの事だ。それに、ロキシンは今まで一度でここまで核石を成長させる魔石を取り込んだ事はないのだとか。

「私や先代の子供時代はこの辺りも様々な石が採れ、各地との交換などでここ以外のものも手に入ったのですが」

 ずっと同じものを摂取しても成長効率は悪く、様々なものを取り込むことが成長に欠かせない種族であるにも関わらず、岩石喰いは移動が得意ではない。住処としている一帯なら問題ないが、長距離の移動には時間を要し、加えて雨天や強い風なども好まない。必然的に居場所と決めた地に長く留まるのである。ほぼ動かないと言って良い。

「本当に……感謝してもしきれません」

「いえ、長年の無沙汰のお詫びとこれからの共栄を願ったものと思って頂ければ。まあ、純粋にお祝いの品なのでそこまでお気になさらないで下さい」

「はい。わたくしどもも、これからの開拓に可能な限り尽力させて頂きます。よろしくお願いしますね」

「こちらこそ」

 再びシェルディナードと長が握手を交わす。

「差し当たりは領都に繋がる(サークル)を敷きますので、そちらを利用してお越し頂ければと思います。まだ何もないので、最初にお願いするのは作業なさる方の宿舎になるかと」

「なるほど。陣を敷いていただけるのは助かりますが、確かに陣は移動の度に魔力を消費しますから……作業期間はそちらに寝泊まりするのが最善ですね」

 岩石喰いの睡眠は魔力の回復時間と同意義だ。

 陣も通常ならば通貨の一つである、魔力を秘めた晶貨(しょうか)で賄うのだが、長いこと外部と交流の無かった事もあり、通貨自体の貯えもあまり無いのだろう。

「今段階では土地だけはいくらでもあるので」

「お気遣い痛み入ります。建材などはこちらからも運びましょう」

 一通りの話し合いを行い、シェルディナードが切り出す。

「ところで長。探している素材があるのですが」

「わたくしどもにお尋ねという事は、鉱石か魔石の類ですね。伺いましょう」

「話が早くて助かります。領都の結界を構築する術式を込めるのに適した容量と耐久性をもった石に御心当たりは無いでしょうか」

「領都……恐らく大規模結界の術式ですね。通常なら極金剛石(アダマンタイト)魔法銀(ミスリル)などを挙げますが、それではダメだからのお尋ねでしょう」

 そうすると。そう呟いて長は顎に軽く人差し指を添えて考え込む。

「一つ、心当たりがあります。ただわたくしどもでは入手が難しいですね。 ――ロキシン」

「はい! 長」

魔影晶(ファントマライト)の住処へご案内して下さい」

「はい! では、皆様こちらです〜!」

「心当たりまでロキシンがご案内いたします。いってらっしゃいませ」

 長の言葉とロキシンの手招きにシェルディナード達はひとまずその後に続く。

「こちらの洞窟が魔影晶の住処です。皆様にはお足許わるくなっているので、お気をつけ下さいませ」

 赤茶けた谷肌の一つに口を空けた洞窟。入り口はディットが少し屈んで入る高さだったが、中に入ってしまえば頭上には二階建てくらいの高さがあった。

 洞窟内はヒンヤリとして、所々に光苔や光る茸が自生しておりボンヤリと光っている。

「ロキシン、魔影晶ってどんな鉱石なのかな?」

「はい。魔影晶はですね、えっと、好き嫌いの激しい石で」

 ロキシンの言葉にディットが首を傾げる。

「好き嫌い?」

「ロキシンたち、岩石喰いは魔影晶にとって天敵に近い認識なので、近づくと逃げられてしまうのです」

 ますますわからない顔をするディット。

「逃げる?」

「ロキシン、逃げるってどうやるの?」

「えっと、手をのばすとですね、消えちゃうんです!」

 身振り手振りで一生懸命にロキシンは説明する。要約するとこうだ。

 魔影晶。魔術的な容量の大きな鉱石触媒。最大の特徴は意思を持つこと。

 その為、気に入らない者が近づけば姿を隠してしまうらしい。逆に気に入られればこれ以上ないほど協力的な鉱石、らしい。

「透明無色で七色プリズムの輝きがとってもキレイなのです。ロキシンは小さいから手も届かないし、見てるだけでも好きなので、よく見に来ます。最初はすぐ隠れられちゃったのですが、だんだん、見てるだけなら見せてくれるようになりました!」

「へえ。楽しみ」

「いや、坊。納得すんな。非常識だろどう聞いても」

「何言ってるのディット」

 一旦歩みを止め、シェルディナードはディットを振り返って笑顔で言う。

「非常識が集まれば常識になるんだよ」

「…………」


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