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続々・十一才 ご挨拶にいく件11

「この真珠を食せば、さらに強い個体を生み出す事が出来るでしょう」

「岩石喰いは鉱石や魔石を自身の核石に取り込むのでしたね」

「ええ。取り込む種類は多ければ多いほど質も良く、新たな核石……他種族でいうと、子を作りやすくなります」

 岩石喰い(ロックイーター)は核石を基に岩石や土で身体を構築している。そこに他生物のような生殖器はない。

 ではどうするのか。

 答えは別個体(パートナー)の核石と自分の核石を半分ずつ使って、新たな核石、子を作る。

 自身の核石を半分わけ与えるので、当然新たな核石を作れば力が半減する。なのでそれまでに自分の核石をなるべく育てておく必要があるのだ。

「丁度、何組かそろそろという者たちがおりますから、彼らに優先して与えましょう」

 ちなみに子は自身のものでなくても、種族全体の宝というのが岩石喰い大体の認識である。

 子の誕生は種族全体の祝い事だ。

「そういえば、資料には当時、長の新たな核石が予定されていると」

「嗚呼。それは先代の長と私の、新たな核石の事ですね」

 少しだけ長の雰囲気に寂しそうな色が混ざったが、すぐに笑顔に変わる。

「当時でも永きを生きていた先代は土へと還りましたが、私達の新たな核石は無事に誕生しました。せっかくですし、ご挨拶させましょう」

「大変光栄です」

 子は種族全体の宝。その子を会ったばかりの相手に紹介するというのは、大変好意的であることを表している。

 得体の知れない、信用出来ない相手に会わせる事はまずない。

 少しの間をおいて、シェルディナード達の腰丈程の小さな子供がやって来た。

「ロキシン、ただいま、まかりこしました。いらっしゃいませ、来訪者さま」

「こちらが我が子、ロキシンと申します」

「はじめまして。シェルディナードと申します。次代の核石にお会いできて光栄です。よろしくお願いいたします」

「こちらこそ、よろしくお願いします!」

 ローブを纏った全体的に白い子供の石像、という感じでロキシンが笑顔で見上げてくる。

「それにしても、我が子の事も記されていたのですね」

「はい。当時の領主はお祝いの品も用意しようとしていた様なのですが……」

 その資料は手記であり、当時の当主はわりと真っ当だったようで付き合いのある領民兼種族の喜ばしい事を積極的に祝おうとする者だったらしい。

 だが。

「それから間もなく、急な代替わりとなったようで」

「……なるほど。それで、でしたか」

 長の顔に、悲しみと同時に理解の色が浮かぶ。

 積極的に交流を持っていたのに、パッタリと途絶えた親交。忘れるほどの長い時の音沙汰なし。

「長く移動する事は出来ずとも、私達からも……便りの一つもお送りするべきでした」

「いえ。ほとんど事故に近かったようです。半不死の身と言えど、私達の種族でも絶対はないのですから」

 聖句箱というものに己の魂を封じ込め、それが破壊されない限り死なない。そういう種族ではあるものの、とどのつまりは聖句箱が壊れれば何もなくても死ぬ。

 当時のその当主は聖句箱としていたものが純粋に寿命を迎え壊れた事により亡くなったらしい。最早天命である。大往生とも言えるだろう。

「ただ本当に珍しい理由であったので、当時は随分とせわしなかったようです。その際に当主との約束事などが不明になったのかと」

 とは言え、資料は残っていたのだから引き継げただろうに。次の代は現在の領主と似たような者、つまり自分の研究などにしか興味の無い輩だったのがよろしくなかった。

 それらのツケが今まさにシェルディナード達に回っているわけで。あとどれだけ同じような事で頭を下げて回らないといけないのか。考えるだけでも頭が痛い。

「そうですか……。遅くなってしまいましたが、お悔やみを申し上げます。当時の領主様にはとてもお世話になりました」

 救いはその領主が珍しく社交的で興味が外に向いていた事だろう。手記を見てもどこの種族とも比較的良好な関係であったことがうかがえた。

 勿論、手記なので筆者視点であることは注意が必要なわけだが。

「ありがとうございます。それで、こちらも遅くなってしまいましたが、お祝いのお品を持参致しました」

 そう言ってシェルディナードは絹のリボンが結ばれた指輪ケースほどの箱を取り出す。少し屈み、ロキシンへとその箱を差し出すと、受け取ったロキシンは長とシェルディナードを交互に見やった。

「せっかくの贈り物です。開けてごらんなさい」

「はい。――わあ!」

 蒼銀真珠が一つ。箱の中で柔らかな光りを放っている。

「これは……。よろしいのですか?」

「はい。子供の誕生はそれだけの価値と意味がありますから」

 ロキシンの瞳は長と似た配色だが瞳孔は灰色に水色が混ざっている。それが蒼銀真珠を見つめてキラキラ光っており、血色などないはずなのに興奮で頬が上気しているかのようにすら見えた。

「長……その、これ」

「ええ。お上がりなさい」

「いただきます!」

 チラチラと長を見上げ、許しが出た瞬間、ロキシンは笑顔で蒼銀真珠を口へと運んで頬張る。

「ん~~!」

 コロコロと小さな音がして、口の中で転がしているのがわかった。そして、ゴクッと。

 ビクッと一瞬ロキシンが震え、やがて全身の力が抜けたようだ。

 そして。


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