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続々・十一才 ご挨拶にいく件1




「さてと」

 ロビン達を迎え入れ、ちょっと張り切り過ぎて住民登録でうっかり死んだりもしたが、休息をしてまあまあ心穏やかな時間を過ごした。

「そろそろ次の段階に進まないとか」

「今度は何すんだよ。坊」

 自室の長椅子にお行儀なにそれ美味しいのと言わんばかりに寝そべっていたシェルディナードは、小言を言いつつも律儀に食事からおやつから用意して細々働いてくれるディットに目を向ける。

 造り付けた厨房から出てきたディットが纏う匂いに、今日のランチはミートソースパスタとあたりをつけて。

「ご近所さんへの挨拶でしょー、あと治水事業とかの本格化とー、簡単な囲い作るのとー、警告?」

「最後のだけ何で物騒なんだよ。どこにだ」

「物騒じゃないよ。俺の物を勝手に持ってかないでね、って普通のお話をするだけ。モチロン、相手は」

 スッとシェルディナードが床を指差す。

「下の階層にいる方々」

 シェルディナードの家が治めているのはこの階層の半分。大雑把だがそうとしか言いようがない。

 あと半分はお隣の領地である。そしてこちらとは家の格的にも同じくらいで仲もさほど悪くないのでとりあえず問題無いのだが。

「今まではあのく……父がほぼ放置してたから勝手に獲って行き放題だったんだよねー」

 せっかく保護したのに、そのままにしていたらロビン達を連れて行きかねない。

 せっせと苗を植えて育てている最中に引っこ抜かれたらたまったものではないのだ。

 やる奴らはあらかじめ言っておいてもやるのだ。

 警告もとい、手を出したらどんな末路を辿ることになるのかの予告は必要だろう。お互いの為に。

「ルーちゃん……」

「お。サラ、いらっしゃい」

 もうディットはサラが来たことに何も言わない。

 さくさくと長椅子前のローテーブル上にシェルディナード用の大盛りパスタとサラダ、サラ用のドールサイズパスタの皿そして同じくサラダ、それぞれ飲み物を置いていく。

「…………」

「どうした?」

「ん? サラ坊はミートソース嫌いだったか?」

 シェルディナードとディットの言葉に、サラはふるふると頭を振った。

「ルーちゃん。何か、手伝えること、ない?」

 酷く真っ直ぐな瞳で、サラがシェルディナードを見つめる。

 それに対しシェルディナードは口に頬張ったパスタをゴクリと呑み込むと、口を開いた。

「無いこともない。けど、サラどうした?」

「……ルーちゃん、無理、しそう、だから」

 心なしサラの瞳に疑いと心配の色が半々で滲んでいる気がしなくもない。

 信用とは失うのは一瞬でも回復には時間が掛かる。

(この間の、結構根に持ってるな……)

 当分、領地関係に関してはこんな目を向けられ続けそうだ。自業自得である。

 これは警告に行くのは時間を置こう。元々後回しの予定ではあったが、今一気に片付けようとしてやれば、サラが()()()()()可能性がある。

「大丈夫だよ。もうやらないから」

「……。それで、無いこともない、なら、どんな、こと?」

「お隣に挨拶に行くのに、手土産用意するの手伝って」

 シェルディナードの言葉を咀嚼(そしゃく)するようにサラは考え込み、やがてゆっくり頷いた。

「わかった。いつ?」

「んー。明日かな。今日はランチしたら孤児院いく」

「げ」

「ディット。センナ嬢に失礼だよ」

「へいへい。すみませんでした」

 そんな気の乗らないディットは放っておいて、ランチを食べ終えた後は予定通り孤児院へ。

「あら。シェルきゅん、いらっしゃい!」

「こんにちは。センナ嬢。突然ごめんね」

 孤児院の応接室でセンナに挨拶し、シェルディナードとディットはソファに腰掛ける。

「全然かわまないわ〜。可愛いシェルきゅんに会えるんだもの」

 サラには先に手土産用意の準備をお願いしている。

「これ、ディットが焼いたクッキー。皆で食べて」

「うふふ。ありがとう! みんな喜ぶわね」

 大量に焼かれたクッキーの入ったバスケットを渡すと、センナは嬉しそうに笑ってそれを抱きしめた。

「それで、今日はどんな御用かしら?」

「うん。センナ嬢に簡単な結界をお願いしたいんだ」

「結界? どのくらいのものかしら」

「とりあえずは孤児院を中心に半径五キロでお願いしたいんだけど、可能?」

「ええ。それくらいなら今やってしまうわね」

 バスケットを置いてセンナが立ち上がり、シェルディナード達もそれに続いて外に出る。

 玄関先で地面を踏んだセンナが、静かに目を閉じ。

「うぉ!?」

 ディットがそんな声を上げた。

 センナを中心にして、一気に魔力の波が四方八方に広がったからだ。

 微かに草と花の匂いがした。周囲の草原に魔力が波を立てて広がっていく。

「はい。終わったわ」

 パチリと再び瞳を開けて、センナが笑った。

「ありがとう! センナ嬢」

「え。あれで? 結界張ったのか?」

「そうよー。とりあえずぅ、シェルきゅんかお姉さんの許可がないと内側には入れないようにしたの」

 そう言いつつ、センナは少し顔を曇らせる。

「でも、それはあくまで地上向けの事よ? 空からや転移されたら、精々が報せと足止めくらいたけど……」

「充分だよ。ありがとう、センナ嬢」

「うふふ。お役に立てたなら嬉しいわん」


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